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流れ星 6年連続全国ツアー開催 小学生からお年寄りまでが楽しめる“ド真ん中”ライヴの魅力

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
左から、ちゅうえい、瀧上伸一郎(写真提供/BSフジ)

最大規模を毎年更新。恒例夏の単独ライブツアー、今年も開催

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小学生からお年寄りまで幅広いファンから支持を得ているお笑いコンビ・流れ星は、2014年から全国単独ライブツアーを行っているが、今年も6年連続のツアーが決定した。『流れ星 単独ライブツアー 星幻想(スターファンタジー)』は、自身最大規模のツアーになり、7月13日の千葉・行徳を皮切りに、9月23日の東京・浅草公会堂まで17か所を周る。毎年、この規模で全国公演を行うことができるお笑い芸人は、数少ない。そんな勢いに乗る流れ星のちゅうえいと、瀧上伸一郎の二人に、ライヴへの意気込み、流れ星が目指しているところを聞いた。

『THE MANZAI』の“たけし賞”を2年連続獲得。「今年も瀧上君が“たけし賞”を獲るネタを作ってくれるはず」(ちゅうえい)

――まず、過去最大規模だった去年のツアーを完走、成功させ、さらに規模が大きくなった今年のツアーを控えて、思うところを聞かせてください。

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ちゅうえい 去年のツアーが終わったと思ったら、またツアー。あっという間で、ちゃんと一年経ってますよね?(笑)。去年のライヴでやったネタのひとつが、年末の『THE MANZAI』(フジテレビ系)で“たけし賞”をいただけたので、だから今年も、瀧上君が“たけし賞”獲るネタを作ってくれるんじゃないですか?

瀧上 たけしさん笑わすの、得意なんですよ(笑)。本当に毎年思いますが、一年間単独ライヴでほぼ動いてる感覚です。そのネタを作ったり、ツアーを回って、たけし賞獲っての繰り返しです(笑)。

「ツアー用のネタは、その前に地方営業で試して、様子を見る」(瀧上)

――毎年ツアーのネタを考える時は、前年の反省や、やり足りなかったことを踏まえて、ネタ作りに入るんですか?

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瀧上 こういうことができたから、次はこれ以上のことやろうというのが基本ですね。作ったネタを、単独ライブツアーの前に地方営業とかで、軽くさわりだけ試してみることが多いです。前例がない“パターン”とかをやろうとするので、果たしてこれは本当にウケるパターンなのかと。そうすると大概スベるんです。そこがやっぱり難しいところで。基本お客さんとみんなで盛り上がったりする、他のお笑い芸人がやっていないことないことをやろうとすると、試すところがないというか。こうやるとウケる、こうやらないとスベるという実体験がないから、だから軽く現場で試します。その中でウケるやつをつまんで、育っていきそうな種子を選りすぐって、それを育ててネタにしていくという感じです。

ちゅうえい スベる時もあるって言ったじゃないですか。想像している以上にスベるんですよ、1回目の時って。30分のステージで、大体最初の5分くらい絶対にウケる、落語でいうところのマクラみたいなものがあって、その後に新ネタのさわりを試すんです。それでスベると、あの流れ星がこんなスベる?みたいな、地獄のような空気になるんですよ(笑)。そこから残りの20分くらいで、ギリギリ挽回できるくらいのスベり具合です(笑)。

瀧上 ただそれはやっておいてよかったと思いますよ。

ちゅうえい お客さんも初めてだから、驚くというか、どうしていいのかわからない状態だから。で、俺らも初めてだから、どうしたらいいかわからない状態になるという。

瀧上 でも勉強にはなるよね。こういうことやるとスベるんだっていうね(笑)。

ちゅうえい だから芸人さん達は、思いついてもこういうネタをやってこなかったんだ、という理由がわかるし。

――流れ星さんのキャリアをもってしても、あまりにもスベる瞬間に出会うと、やっぱり焦るのものなんですか?

瀧上 これが、なんかもう笑っちゃいますよね(笑)。

ちゅうえい 昔だったら、ウケなきゃウケなきゃって言って、焦っていたと思います。なので今は、お客さんと一緒に驚いちゃってますね(笑)。

瀧上 なんでお前が驚いてんだよ。

ちゅうえい なんだこれはって。なんだろうねってお客さんみんなと言いながら(笑)。

瀧上 だから僕は「お前アドリブで変なことやってんじゃねーよ」って言って、大体コイツのせいにします(笑)。

ちゅうえい 最悪です。

瀧上 本当は完全に仕込んできたネタなんですけど(笑)。

ちゅうえい もう驚いて、え?何が何が?っていう状態で(笑)。

瀧上 でもそれ言うと大体ウケるし(笑)。

――ステージって生きものですよね。

瀧上 本当そうだと思います。今になって思うのが、同じことをやってもハタチの時にやってたことと、40歳になって同じことやっても、40歳になった方が面白くなるんだなって、本当に思います。言っていることの説得力が違うんだろうなって。

――歌もそうですよね。

瀧上 20年選手がデビュー曲を歌うと、なんか説得力あるし。

ちゅうえい 深みが出てくるみたいな。

有名漫画家のアドバイスで、ツアーのネタから、瀧上の闇を放出するネタを削除

――この単独ライブツアーは、アミューズメントパークみたいにしたいというのが、一貫したテーマですが、去年のアミューズメント度の満足度はいかがでしたか?

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瀧上 そうですね、僕的には満足でした。でも一か所僕のストレス発散の場というものを作ってまして、僕の闇を放出するみたいなネタを、1本入れていました。2年前からやっていて、ちゅうえいに対して溜まってる不満、“じゃない方”の不満、1年かけて溜まったそういう闇を僕が放出するみたいなネタで。僕もそれ言うとスッキリするし、コアなお客さんも楽しんでくれるので、恒例みたいな感じでやっていたですが、ファミリー層というか、ちゅうえいを観にライブに来た人には、ちょっと刺激が強いかなと思ったので、今回からやめます(笑)。それは別のところでやることにしました(笑)。

――単独トークライブですね。

瀧上 事務所非公認なんです(笑)。闇じゃなく直です。僕の闇はその闇トークライブで発散します。実は僕達のライヴに毎年『ワンピース』の作者の、尾田栄一郎先生が来てくださるのですが、ある日先生からLINEをいただきまして「こんなこと言うと瀧上さんに嫌われてしまうかもしれませんが、一ファンとしての意見として聞いてください。ライブ、大変面白かったのですが、ただ瀧上さんが闇を放出するネタ、あれは流れ星のライヴではやらない方がいいと思います」というアドバイスをいただきました。本当にありがたいなと思って。老若男女から愛される『ワンピース』の作者の方の意見ですよ。僕らも誰からも愛されるお笑いの王道を走らなければいけないと思ったので、速攻でやめました。僕がやろうとしていたのは、息抜きという部分も含めているので、トークライブで残しつつ、本公演は王道でいこうと。尾田先生と僕とでは何から何まで圧倒的に違いますが(笑)。

――幅広い層のお客さんを呼べるのが、流れ星の強さです。

瀧上 去年も「じいちゃんばあちゃんなんてライヴに来ねえだろ」ってツッコんだら、たくさん来てくださっていたので、変な空気になったり(笑)。

ちゅうえい 毎年ライブを広島でやらせていただいていますが、今年プロモーションで行った時、ライブを観て下さっていたテレビ番組のスタッフさんが、広島はお爺ちゃんお婆ちゃんがライブとか観に来ることはあまりないのに、流れ星のライブにはたくさん来ていたと言ってくださって。しかも子供たちが笑っていることで、お年寄りにもそれが伝わって笑っているから、すごくいい空気で、流れ星、なんでもっと売れないんですかって言われて(笑)。それは俺らが知りたいです(笑)。

「ドリフのような、芯を食った、ド真ん中を行くコントをやるコンビニなりたい」(瀧上)

「俺はアンパンマンがライバルだと思ってた」(ちゅうえい)

――なかなか小学生からお年寄りまでが同じものを観て、一緒に笑っている空間ってないですよね。それこそドリフとかですよね。

瀧上 本当に『8時だよ!全員集合』みたいな番組、今ないじゃないですか。みんなドリフみたいなことをやらないし。だから結局ドリフってすごいってなって、教科書みたいな感じで残り続けているというか。ドリフのコントをアレンジして、その延長線上でみんな色々やっていますけど、僕らはドリフみたいな、芯を食った、ド真ん中を行くコントをやるコンビになりたいです。逆にライバルは少ないと思います。

ちゅうえい 俺らドリフ目指してんのか。俺はアンパンマンがライバルだと思ってた(笑)。

瀧上 それも間違ってない。結局言いたいことは同じで、真正面勝負というか。

ちゅうえい スピード、ストレート、パワー勝負ですね。

瀧上 ちょっと何言ってるかわからないですけど。王道だよ、王道。新しいアニメじゃなくて、ちゃんとド真ん中のアニメ。スタジオジブリとか。そこは狙っていきたいです。

「ダウンタウンさんに憧れたけど、自分達はシュールさよりも、王道のお笑いを目指そうと、途中で方向転換した」(瀧上)

――瀧上さんがネタを作る時は、やはりお茶の間ということをまず考えるのでしょうか?

瀧上 僕が本当にやりたかったことというか、育ってきた環境でいうと、ダウンタウンさんを見て育ったので、ダウンタウンさんってやっぱりシュールな存在だったんですよ。それこそドリフの後に出てきた、ドリフをひっくり返すような、裏の笑いでした。それが面白いなと思って育った世代なんです。だから僕らも最初、そこを目指してやろうとしていて、でもちゅうえいっていうキャラクターもわかりやすいですし、やっぱりド真ん中で行こうと、途中で方向転換しました。シュールさを求めるよりも、自分達に合った王道のお笑いを目指そうと。だからひねり出さないとなかなか出てこないですし、さっき言ったようにスベることも多いんですよね。ベタってやり尽くされている部分もあると思うので、でもそれを現代風のベタとして置き換えると、全然ウケなかったりするんです。そこがすごく難しくて、現代版のベタをまた作り直さなければいけなくて、昔のベタをやってもウケないです。ちょうどいい塩梅のベタをやらないと、老若男女にヒットしないというか。

――やはり、ちゅうえいさんの存在が強いですよね。いい意味でやらかしてくれるというか。

瀧上 ネタ的に40点でも、ちゅうえいの顔芸とか入れると65点くらいにはなるので、このネタを採用しようかどうかって、すごく迷う時があります。こいつ的には59点くらいで満足しちゃうタイプなので(笑)。僕的には80点を超えるくらいじゃないと、ネタとしては採用したくないので。

ちゅうえい 全然赤丸ですよ、赤丸。

瀧上 こいつは59点だと思ってないんですよ。59点も90点だと思っちゃうんですよ。ウケてたじゃん今の、超面白いよ!って。

「ファン目線と職業目線を常にひっくり返して、客観視し合ってやらなければいけない」(瀧上)

――今回は過去最大規模で、毎年更新し続けていかなければいけないというプレッシャーはありますか?

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瀧上 あります。あと、慣れもあります。いい意味でいうと自分達の中では夏の風物詩になっていますが、たまには変わったことをやってみたいと思うこともあります。で、そう思うと大概みんな変わったことをやっちゃう。でもドリフってやらなかったですよ。そこがすごいところ。ずっとあのまんまなんです。これはすごく難しいことで、こいつもそうだったんですけど、ガンダムっていう一発ギャグが自分の中で飽きちゃって、本当に適当にやってるんですよね。ただ本人は気づいていなくて。

ちゅうえい 僕らの先輩の、おさるさんに言われたことなんですけど、「ちゅうえい、それはあかんぞ。お前が飽きたかもしれんけど、言うほど世間は飽きてないから、全力でそのギャグはやり続けろ。俺はそうしないで失敗した」って。説得力がすごくて(笑)。

瀧上 同じネタを全力で、過去と全く同じ熱量でやると古いって言われたり、アレンジを利かしてやると、違うって言われたり、そこは賛否両論だと思うんですけど、でもやり続けた方が強いです。いい意味でマンネリというか、ちゃんと自分達で残しつつ、新しい部分をどんどん付け加えていく作業が必要なんだと思います。前からあるものをちょっと変えようっていうよりは、どんどん付け足していくっていう作業なんだと思います。そうやって色々なパターンを増やしていきたい。ファン目線と自分達の職業目線とを、常にひっくり返して客観視し合ってやらないといけないんです。

――今回、新しい試みとしてお得な「学生券」「親子券」を用意しているんですよね。

瀧上 流れ星は、学生ファンが離れ始めていると(笑)。みんな大きくなっていくにつれ、他に興味が出てきて、流れ星から離れていくと。だから学生を呼び込もうということです。親子券(大人+学生)も¥6,000だからお得です。

「なんだかんだで地元(岐阜県・下呂市、高山市)が一番やりにくい(笑)」(ちゅうえい)

――これでツアーは6年連続になりますが、お客さんの笑いの捉え方、感じ方は、土地土地によって違うのでしょうか?

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ちゅうえい ウケ方が全然違います。広島とか北海道は、フリをちゃんと聞いてくれるので、芸人にとってはやりやすい、気持ちいい街だと思います。ただ、本当によくわからないのは、俺らの地元です。岐阜の下呂市と、瀧上の出身地の高山市。今回久しぶりにやるんですけど、なんで久しぶりにやるかって言ったら、前に下呂でやった時、チケットの売れ行きが一番悪かったんですよ(笑)。今回も9月1日に高山市文化会館でやりますけど、出足鈍いんでしょ?

瀧上 今の段階ではね。

ちゅうえい なんなら最初に売れてほしいけどね。岐阜の県民性で、声を出さないで笑うんです。笑顔なんです。なんだかんだで地元が一番やりにくいです(笑)。

瀧上 ボタンひとつで笑い声が増幅される装置がほしいです。それを椅子に付けて欲しい(笑)。

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音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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