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“ベツカノ”が話題、wacciの音楽の魅力を、音楽P島田昌典が分析「アルバムの中の写真のような音楽」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

昨年8月に配信シングルとしてリリースされ、SNS上で話題の“ベツカノ”。ダウンロード数も急伸し、ロングヒットに

昨年8月に配信リリースしたシングル「別の人の彼女になったよ」が、話題を集めているwacci。MUSIC VIDEOはYouTubeで公開されて以降、再生回数は570万回(フル/ショートver合計/6月25日現在)を超え、SNS上では“ベツカノ”として、その歌詞に対しての男女の賛否両論の意見が飛び交い“盛り上がっている”。

「失恋ソングを女性目線で書いて、女性から『わかる!』と思ってもらえる、女性のリアルを書きたかった」(橋口)

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昨年11月に発売された、この曲が収録されているアルバム『群青リフレイン』についてメンバーにインタビューした時、「別の人~」の作詞・曲を手がけた橋口洋平(Vo&G)は、「女性目線で歌詞を書く時に絶対言われるのが、男性がそう思われたいだけじゃないかということです。これは失恋ソングを女性目線で書く上では仕方がないことだと思うので、これを越える、女性からわかる!って思ってもらえるくらいの、女性のリアルを書きたいと思いました。難しかったですけど、僕の周りにも参考になる人がいたので、いざ書いてみると、刺さらない人には全然刺さらなくて、刺さる人には完全に刺さる感じです、みたいで(笑)。SNS上でも賛否両論、色々な意見がありました(笑)。でも、女の人は恋愛は上書き保存っていうけど、みんな絶対忘れられない人がいるんですよね。それを周りにはなかったことにしつつ、自分の中では抱えていると思うので、これは歌になるなって。最近ではこの曲をカバーして、SNSにあげてくれている女性シンガーが結構いて嬉しいですね。なぜかかわいい子ばかりなんですよね (笑)。ただこの曲、ライヴでは置き場所に困る歌なんです。これをメインにしたらダメだし、サラッと歌いたい。これをメインでもっていくと、多分泣けない人は泣けないので(笑)」と語ってくれた。

wacci史上初の女性目線での歌詞ということで、配信当初からファンはもちろん、アーティストや有名人からも、賛否両論ありながらも支持を拡げていった。またYouTubeのコメント欄に投稿された、ある女子高生からのコメントがTwitterで話題になり、ダウンロード数も急伸し、ロングヒットなっている。

島田昌典
島田昌典

そんな、幅広い世代から支持されているwacciの音楽の魅力を、話題のウェディングソング「結」(2019年)、そして「Ah!Oh!」(2017年)、「君なんだよ」(2016年)などを手がけ、デビュー当時からアレンジャーとしてwacciの音楽に関わっている音楽プロデューサー・島田昌典氏に、改めて語ってもらった。

「『別の人の彼女になったよ』は、3人の登場人物の三角形が、一曲の中で渦巻いている情景が見えて、聴き手をドキドキさせる」(島田)

話題の「別の人の~」について聞くと、「まずタイトルがずるい(笑)。アンサーソングが聴きたくなる曲ですよね。3人の登場人物の三角形が、一曲の中で渦巻いている情景が見えて、聴き手をドキドキさせます」と分析してくれた。

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wacciと、その音楽との出会いの第一印象を聞くと、「最初に彼らの音楽を聴いたときは、今時のダンスミュージックでもないし、かといってレイドバックしたフォークソングでもないし、いい意味で90年代のJ-POPを踏襲している音楽だなというのが、第一印象でした。メンバー一人ひとりがプレイヤーとしても優秀ですし、当時から注目していました。でもテクニックを主張するのではなく、あくまでも橋口君の歌をサポートしながらも、その中で自分の味をしっかり出しているところが素晴らしいです」(島田)。

「半径3m以内で起こっていることを切り取っているので、共感できる人が多く、詞の深いところまで入っていける」(島田)

メインソングライターの橋口が作るデモが、当然“wacciの素”になるので、そこからwacciの音楽へと広がっていく。最新アルバム『群青リフレイン』では、メンバーそれぞれの血となり肉となっている音楽を、曲に纏わせ、1st、2ndで自分達の「これまで」と「これから」の世界観をしっかりと伝えた上で、『群青~』で、「これから」の部分を伝えてくれる仕上がりになっている。

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「橋口君の歌詞は、誰にでもある日常感の切り取り方、情景描写が見事としか言いようがない。何か嫌なことがあっても、大丈夫だよ、少し立ち止まってみようよと、寄り添ってくれる言葉とメロディなんです。それが、聴いているうちにジワジワと心と体に沁みてくるというか。半径3m以内で起こっていることを切り取っているので、共感できる人が多く、詞の深いところまで入っていけるのではないでしょうか。だから一曲一曲がアルバムの中にある写真のような存在になって、アルバムを開けて写真を観た瞬間に、その時の情景がパッと浮かんでくる感覚を、wacciの歌にも感じることができるのだと思います。彼らの佇まいもロックスター、ポップスターとはまた違うキャラクターなので、より親近感が沸くのだと思います」(島田)。

事務所の先輩、“ポップスター”いきものがかりが、大きな愛を歌い老若男女、多くの人に感動を与えるように、wacciは、聴く人全ての「暮らし」の中にある、小さな恋の物語を歌い、多くの人から共感を得ている。wacciの音楽を聴くといつも、日常ほどドラマティックなものはないということを、教えてくれる。

2年連続で、47都道府県ツアーを開催

左から、村中慧慈(G)、小野裕基(B)、橋口洋平(Vo,G)、因幡始(Key)、横山祐介(D)
左から、村中慧慈(G)、小野裕基(B)、橋口洋平(Vo,G)、因幡始(Key)、横山祐介(D)

wacciは2018年~2019年にかけて自身初の47都道府県ツアーを行い、4月に完走したばかりばかりだが、早速10月から、2年連続2度目となる47都道府県ツアーを行うことを発表した。今回は3パターンの編成で行い、第一弾はアコースティック編成、第二弾はライブハウスでのバンド編成、そして第三弾はバンド初のホールツアーとなる。wacciの歌を待ってる全国のファンの元へ、思いを届ける。

wacci オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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