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“上方落語の爆笑王”桂雀々、初の全国ツアーに挑む「上方落語の良さを伝え、全力で笑わせにいきます」 

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BSフジ
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“上方落語の爆笑王”の異名をとる、人気落語家・桂雀々が、3月21日の東京・浅草公会堂を皮切りに、『桂雀々 初めての全国ツアー にっぽん、まるごと笑わせまっせ!2019』](全国8か所)を行う。全国ツアーを行える落語家は多くはない。雀々の現在の人気と勢いを感じさせてくれる。初の全国ツアーに臨む心境、どんな内容になるのか、インタビューした。

若手の頃、師匠・桂枝雀の全国のツアーに前座として同行。「いつか自分でもやりたいと思っていた。夢が叶った」

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桂雀々の高座は、派手なオーバーアクションと、マシンガントークで常に爆笑の渦だ。今も多くの人からリスペクトされている、師匠である桂枝雀の破天荒な芸風と、笑いの理論から導き出される笑いのパワーをしっかりと受け継いでいる。以前のインタビューで雀々は「師匠の桂枝雀が、昔全国ツアーをやって、僕も前座として、北海道から九州まで一緒に巡りました。当時は上方落語を東北や新潟でやるのは珍しくて、上方落語がどこまで通用するのか、わかりませんでしたが、どの会場も満席で、爆笑に次ぐ爆笑で、それを目の当たりにして、いつか自分でもやってみたいと思っていました。理想の形、夢の形ですね」と語っていた。やはり“上方落語の爆笑王”と呼ばれ、大人気だった師匠が辿ってきた落語の道を、深く、深化させながら追いかけていく。いよいよ夢が叶うことになるが、それだけに気合十分の様子で、ツアーの内容について語ってくれた。

「初めて行くところは、わかりやすい鉄板ネタを持っていったり、その土地や季節を考えた噺で、とにかく笑い転げてもらってお客さんに「笑いすぎておなかいっぱい、もうやめてっ」と思ってもらえるように頑張りたい(笑)。また観たいと思ってもらわなければ、行った意味がないので、全力で笑わせにいきます」。

全国ツアー初日は浅草公会堂。「上方落語の良さを味わってもらいたい。師匠が42年前に作った創作落語「戻り井戸」を久々に披露したい」

初日は3月21日の浅草公会堂。庶民の笑いを育んだ江戸の町に、上方爆笑話で風穴を開ける。

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「いきなりアウェーです(笑)。三席やろうと思っていて、師匠・桂枝雀が42年前に創った新作落語「戻り井戸」を、久々に披露したいと思っています。それと上方落語ならではの醍醐味であるハメモノ(三味線や太鼓や鉦などの鳴りもの)を入れようと思っています。是非、江戸で上方落語の良さを味わってもらいたい。上方落語をどう見せるか、雀々落語をどう伝えるか、大箱だからこその見せ方で、狂喜乱舞させたい(笑)」。

今年、没後20年となる桂枝雀が、42年前に創り上げた新作落語の最初の作品が「戻り井戸」だ。ストーリーは、《なぜか井戸の中にいた男が助けられ、家に運ばれ酒を振る舞われるうちに、すっかり酔っ払ってしまう。最初は遠慮がちに呑んでいるが、だんだん酔っぱらって、悪口を言い始め、悪態をつき…》――さて、その後どうなるか、が見どころだ。落語の笑いの要素を全て含んでいると言われている噺だ。大阪はもとより、東京でもほとんど聴くことのできない稀有な噺を、しぐさやデフォルメ口調、言葉遣い、枝雀のDNAを最も受け継いでいる雀々が、雀々落語として蘇らせる。師匠の笑い、芸を、後世に伝えるというのも、弟子の役割のひとつでもある。雀々の落語は、枝雀が言う「あるようなでないような、ないようなあるような」という落語の本質、「夢の世界」に、よりリアルさをまとわせ、時代や場所の設定が特定されない“空間”を作り上げ、老若男女がひきこまれてしまう。

「来年還暦、60歳からが勝負。まだまだ修行中」

雀々は来年還暦を迎える。師匠・桂枝雀は59歳でこの世を去った。そんな時間の流れ、タイミングも、雀々を全国ツアーへと向かわせた。

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「来年還暦を迎えますが、今回の全国ツアーは、その後を見据えた第一歩と捉えています。60歳からが勝負で、そこから15年、75歳までどこまでやれるかと。師匠も、「歳とって売れても、オモロイで」と言っていました。なのでまだまだ修行中ということ。66歳で芸歴50周年になります。そのころまでには、少し落ち着きたいですよね(笑)。声の問題もあると思うので、66歳くらいまでとにかく突っ走って、75歳までその余波で頑張って(笑)、80歳を、長生きすれば丸儲けという感じで迎えたい(笑)。師匠はもちろん、現在活躍している大先輩のように、高座に出てきただけ、その空気だけで面白いと思ってもらえるようになりたい。そして、落語の中に出てくる登場人物そのものと思ってもらえる落語家を目指したい」。

桂雀々が放つ上方落語が、全国の人々を笑いの渦に巻き込み、幸せな時間、空間を作ってくれそうだ。

BSフジ『桂雀々初めての全国ツアー にっぽん、まるごと笑わせまっせ!2019』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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