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“ひねり”と“こだわり”から生まれる、ましのみ流ポップス 「とにかく聴き手が気になるものを作る」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「もっと批判されるもの=注目されるものを作らなければいけない」

今年2月、アルバム『ぺっとぼとリテラシー』でデビューしたシンガー・ソングライターましのみ。この自由奔放にジャンルを行き来するアルバムは、彼女が自分に興味をもってもらうために、タイトル、歌詞、メロディ、アレンジ、全てにフックになるための仕掛けを潜ませ、結果、注目を集める作品になった。その時のインタビューで彼女は「一年後の自分がどうなっているのかわからない」と言い、セルフプロデュースの意識の高さを感じさせてくれた。デビューから半年経ち、初めてのシングル「どうせ夏ならバテてみない?」を8月1日にリリース。3曲とも夏を意識した楽曲で、彼女らしい“まっすぐではない”切り口で楽しませてくれる。メジャーデビューから半年が経った、注目の現役女子大生シンガー・ソングライターに現在の“心持ち”を聞かせてもらった。

「いい反応も悪い反応も、私の存在に気づいていくれているということなので、感謝したい」

――メジャーデビューしてアルバムを出し、ライヴを重ね、初のシングルを発売と、激しく動いてきた半年だったと思いますが、デビュー前に思い描いていた、デビューしてからの自分の姿とは違う部分が多いですか?それとも想定内?

ましのみ デビュー前と、めちゃくちゃ何かが変わったという印象がなくて。大学3年生の時よりは音楽に比重を置けるようになったけど、それはメジャーデビューしたからではなくて、4年生になったからで。デビューアルバムを出したので、その曲をライヴでできるようになったから、ライヴが変わったとかはあります。

――アルバムを出して、ライヴが増えて、お客さんの顔を見る機会も増えてきましたが、SNSも含めて、その反応は気になりますか?

ましのみ いい反応も悪い反応も、反応してくれているということは、私の存在に気づいてくれているということなので、それに対してはありがとうという気持ちが強くて。今の段階では、例えばめちゃくちゃ批判されていたら、「わかってないなあ」って思います(笑)。でもそれくらいにしておいた方が自分が楽というか、元々メンタルが弱いので(笑)。

――YouTubeやSNSのコメントを見ると、ましのみさんの世界観に共感している、面白がっている人が多いですよね。

ましのみ そうなんですよね、だからまだまだだと思っていて。もっと批判とかされるようにならないとって思います。シンガー・ソングライターというジャンルにあまり興味がない若い人たちにも届けるためには、メジャーデビューするしかないと思っていたので、もっともっと届けていきたい。

――女性ファンが共感できる歌詞が多いですが、ライヴは男性ファンも多いですよね。

ましのみ そうなんです。元々男性ファンの方が多くて、初めは女性はほとんどいませんでした。色々な人に聴いてほしいと言いつつ、同世代の女の子に響くような、救いになればいいなと思って曲を作っていて。でもそれだけじゃなくて、音楽的に面白くありたいとか、それに共感できない層、そこに興味がない層の人でも、単純に外から見て面白くて、言葉の使い方、サウンドやメロディ、とにかく気になるものを作ることができれば、聴いてもらえると信じています。

「夏というテーマを設定して曲を作り始めると、自分の中から掘り出されるものがあって楽しかった」

――さて、初めてのシングルとなる「どうせ夏ならバテてみない?」をリリースしましたが、アルバムデビューということもありますが、ましのみさんのような若い世代にとって、シングルはどういう捉え方なんでしょうか?

1stシングル「どうせ夏ならバテてみない?」(8月1日発売)
1stシングル「どうせ夏ならバテてみない?」(8月1日発売)

ましのみ 私は最初はまずシングルという気持ちでした。アルバムでは、ましのみというアーティストがどういう曲を書くか、どういうアーティストなのかというのを見せたいなと思って取り組みました。でもシングルでは、夏というひとつのテーマを設定してやったのでやりやすかったです。普段の自分の生活の側から見つけたものではなく、夏というテーマがあって、私の中から掘り出されるものがあって、それがすごく楽しかった。夏といえばまず思い浮かんだのが、ワクワクできる曲がいいなって。ワクワクできる要素って、例えば夕焼けの帰り道かな、海かな、お祭りかな、とか。私はインドア派なので、部屋の中でもワクワクできるし、色々なバリエーションの曲を書きました。

――表題曲のタイトルもましのみさんらしいというか…。

ましのみ テーマは、女の子が彼氏に、もっと構ってよって思っている、よくあるテーマですが、それをちょっとドラマティックに書くと、書いていても面白いし、共感しやすいと思いました。夏だし、思い切ったものを作りたかった。

――MUSIC VIDEOは、イメージではなく、歌詞の内容をまっすぐなぞった感じですね。

ましのみ そうなんですよ、今までMV作ってきて歌詞を辿るというのは避けていました。でも、元々その歌を作る段階で、歌詞を聴いてほしいから色々な工夫してきて。今回も前よりも、もっと女の子に共感してほしい、ポジティブになってほしいという思いをわかりやすく反映させたかった。

「歌っているときの表情を大事にしたいタイプなので、演技が上手くなれば、ライヴももっとよくなると思う」

――これまで今までのMVもそうですけど、やっぱり演技が好きなんですね。

ましのみ そんなことないです(笑)。。でも自分で書いた歌詞を自分で演じるのは、上手い下手は置いておいて、イメージとのズレはないと思う。歌詞を作っているときに、実際に思い浮かべている男の子と女の子像があるので、例えば表情のズレはないと思います。私は新しいことをやるのが好きだから、演技するのも楽しいです。あと、演技が上手いというのは、いいことだなと思いました。相手役の方が演技が上手くて、表情で展開がわかるのはすごいなと思いました。私は歌っているときの表情を大事にしたいタイプなので、演技がうまくなれば、ライヴももっと良くなると思います。

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――曲によってアレンジャーが違います。

ましのみ 色々な方とやって、色々な可能性を試してみようと。私がピアノを弾くので、カッコ良いピアノが軸にあって、チープになりすぎないエレクトロなサウンドを、面白い音を使ってやってくださるアレンジャーさんがよくて。その面白い音を入れるタイミング、使い方が面白い、今まで聴いたことがないということが、聴き手にはフックになるものなので、そういう音が欲しくて。

――9月8日には、ワンマンライヴ『ぺっとぼとリテラシー ほとばしるバテで夏を締めくくりまショータイム Vol.2」(@代官山UNIT)が開催されます。

ましのみ 他のイベントに出させていただく時は、私を知らないお客さんもたくさんいる中で、もっと広げたいとか、新曲を浸透させたいとか、みなさんと楽しくやりたいという思いが強いです。でもワンマンライヴは、私のことを知ってくれて、チケットを買って、来てくださる方のために、私が表現したいことをどれだけみなさんに目に見える形、聴こえる形で届けられるかの勝負になりますから、いっそう楽しみです。

ましのみ オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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