看護師との二刀流を貫くシンガー・ソングライター瀬川あやか 音楽でも医療現場でも人の心に寄り添う

「いつか必ず医療のために歌を役立てたい」

『センチメンタル』(3月21日発売/初回限定盤)
『センチメンタル』(3月21日発売/初回限定盤)

今年6月にメジャーデビュー2周年を迎えるシンガー・ソングライター瀬川あやかは、変わらず現役看護師として、医療の現場で人々に寄り添っている。3月21日に発売した2ndアルバム『センチメンタル』は“恋愛処方箋”というキャッチコピーが付けられ、10曲の等身大の恋愛ソングは、やはり聴き手の心に寄り添っている。アーティスト活動が忙しくなる中での二刀流は、彼女の気持ちにどんな変化をもたらせているのか、また、2ndアルバムに込めた思いを、看護師としての仕事を終えて取材現場に駆け付けてくれた瀬川に聞いた。

「看護師の方は、自分なりのやり方、自分らしさが見えてきたので、周りを見る余裕がでてきた。でも音楽は……」

――ちょうど一年前に、1stアルバム『SegaWanderful』をリリースしたタイミングでインタビューさせていただきましたが、二刀流はまだ続けているんですか?

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瀬川 はい!今日もさっきまで病院で働いていました。でもだんだんと看護の方も自分なりのやり方、自分らしさが見えてきたので、いい意味でやりやすくなってきたし、周りを見る余裕が少しだけ出てきました。

――2016年6月にメジャーデビューをして、昨年1stアルバム出し、ツアーもやり、色々経験を積んできていますが、何か心境の変化はありましたか?

瀬川 デビューしてからしばらくは、当たり前ですが初めての事ばかりで、それに自分の能力が追い付いていないと感じて、自分の作品のなのに、気持ちと体が後追いになっていました。ライヴひとつとっても、間違える事しか想像できなかったり、投げ出したくなる事も度々ありました。今でも正直自信がない部分もあります。でも全力で作った1stアルバムを出した時に、すぐに次はこういうの作りたい、こういう曲を入れたいと、自分の思いをだんだん口に出せるようになってきて。いい意味で、自分の作品にもっとわがままになってもいいんだという、安心感のようなものが生まれてきました。

――活動を続けていると当然考える事は多くなるけど、あまり考えすぎないようにしようと。

瀬川 ライヴに来てくれる人って、みんな私が上手に歌ったり弾いているところを観たいのか?って思って。そうじゃないよね、その先だよねって。田中さんが、デビュー前にライヴに来て下さった時に、「今日来ているお客さんの、その後ろにいる、来れなかった人にも向けて歌う気持ちでライヴをやってね」って、おっしゃって下さった事をすごく覚えていて。ライヴをやっている時は、一人ひとりの目を見ながら、その瞬間を大事にしなければいけないってわかってはいたけど、その人がライヴで感じた事を持ち帰ったその先までを見て、会場の外まで気持ちを飛ばさなければいけないと思う、その熱量も大事だなと思いました。そこに気づけた事が自分にとって大きな変化だったので、伝え方も変わってきていると思うし、やっと行動に移せるようになりました。ライヴへの向き合い方も変わったし、声の表情も変ってきたと思うので、まずはそれを信じてあげて、みんなに伝わっているといいなと思います。

「もう自分には書けないかもしれない」という時期を乗り越え、引き寄せた『センチメンタル』というキーワード

――1stアルバムを作って、すぐにこういうのを作りたいって思ってできあがったのが今回の『センチメンタル』という事ですが、どういう思いで制作に臨んだのでしょうか?

瀬川 一枚目はデビュー前に書いた曲ばかりだったので、二枚目は新しい曲を多くしたいと思いました。でもある時「もう私には書けないかもしれない」と思った事があって。自分が書く曲、ライヴも含めて、自分の音楽が本当に気に入らなくなって。単純に自信がなくなってしまって。

「もがいたからこそ生まれたものもあったし、全部が無駄ではなかったと思えるようになった」

――それは、看護師もやりながらという、この忙しい状況がもたらすものという風には思わなかったのでしょうか?

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瀬川 それはないです。逆に忙しさにかこつけて、練習を怠ってたんじゃないかって考えて、全部がダメだダメだってなっていって。そうすると全部が悪い方向に進んでしまい、でも周りにはいつも感謝しているので、恩返ししなきゃって思いながら曲を書いていると、どんどん追い込まれていって。でも悩んでいる時こそその原因って見えないじゃないですか。孤独だと思う中でも、ファンの方やスタッフさんが支えてくれているので、それを信じようと思えるようになって、変わってきたのかもしれない。

――悪い事ではないと思いますが、自分で何もかも真正面から受け止めて、背負いこみ過ぎって言われないですか?

瀬川 そうなんですよね。何事ももっとうまくできればいいんですけど、でもそうやってもがいたからこそ生まれたものもあったし、全部が無駄ではなかったはずです。ダメだなあ、情けないなあと思っても、そこは伸びしろだと思って頑張れるし、そういうポジティブな面もあるからこそかけた曲もあります。

「もっともっとエネルギーを使って、人と向き合わなければいけない」

――アーティストとしてそういう状況に陥った時も、もうひとつの仕事はしっかりやらなければいけなくて、そういう時は逆に気持ちの切り替えになるからいいのか、それとも、さらに色々と背負ってしまって追い込まれるのか、どちらでしたか?

瀬川 デビュータイミングは、看護師としても新人だったので、こっちをやりたいのに行かなきゃとか、こっちをやりたいのにあれをやらなきゃって、「のに」とか「しなきゃ」って思う事が多くて。今もそういう時はあるけど、目の前の人に真剣に向き合うのって、こんなにエネルギーが必要なんだと思えるくらい向き合おうって、思うようになりました。

「"センチメンタル"は悲しい意味だけではない。感受性豊かに色々な事を受け留め、それを等身大の歌にしていく」

――さすが“ポジティブの秘訣がネガティブ”と謳う瀬川さんです。その気持ちから生まれた、“センチメンタル”というキーワードについて教えて下さい。

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瀬川 最初にこの言葉が出てきて、でも感傷という意味ではなく、アルバムの中の「you & me」という曲の一行目に、<いつかはあなたもいなくなるのかな? 嫌だな>というフレーズがあって、これが私の性格を一番わかりやすく表しているなって思っていて(笑)。嫌な部分でもあるのですが、でも、そう思うからこそ大切にできる事ってあるじゃないですか。相手にもそう思ってもらえる努力をするべきだし、相手がそう思っているのなら、そこに気づける自分でいたいと思いました。みんなわかっている事だと思いますが、かけがけのない事も永遠じゃないという事を、改めて考えるきかっけになればいいなと思って。センチメンタルの意味は調べると“感じやすいさま”という事なんですが、感受性豊かに色々と受け取っていく事はすごく大切です。だから悲しい意味だけの“センチメンタル”ではないです。

――なるほど。でも全編切ないですよね。

瀬川 そうなんですよ(笑)。明るい曲なのに全力で悲しい事を歌っていたりするので、私を表している言葉かなって思います。私は実体験を元に曲を書いていて、もちろんデフォルメしたりする部分もありますけど、等身大の曲を書いているつもりなので、自分らしい恋愛観を歌おうと思うと、“センチメンタル”という言葉以外考えられなかった。

「瀬川あやかの中にもっと瀬川あやかがいるはず。でもなかなか意思疎通が取れなくて」

――今回のアルバムは、完成前と完成後とでは、違う感情が芽生えてきましたか?

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瀬川 これは毎回なんですけど、私は自分の作品をすごく愛でるんです(笑)。本当に愛おしくて仕方ない。でも、今回はできあがったものを聴きながら近所を走っていると、色々な感じ方ができました。聴いている人も色々な気持ち、環境で聴いてくれていると思うので、こういう感じに聴こえるんだって思うと、もっと泥くさかったり、人間くさかったり、私にしかわからないシチュエーションでもいいから、リアルなワードや場面があってもいいのかなって思いました。それまでもスタッフからそういう事を言われて、なんとなくはわかっていたけど、自分で噛み砕いてそう思えたのは、このアルバムができあがって聴いた時です。瀬川あやかの中にもっと瀬川あやかがいると思うので、それをみつけていきたい。

――それはたくさん存在して、自分でもわかっているんですよね。

瀬川 そうなんですけど、なかなか意思疎通が取れないです(笑)。

――どんな刺激を与えると出てきてくれるんでしょう?

瀬川 たぶん出てきている方だと思いますが、見つけてあげる方の瀬川あやかが、自分の中を見る目を養わなければいけないと思う。

「いつか医療の現場に音楽を還元させたい」

――先ほどアルバムが完成してから、また発見できた事があったとおっしゃっていましたが、4月から始まるツアーでも、またこのアルバムの感じ方が違ってくるでしょうね。

瀬川 全然変わってくると思いますし、変えていきたいです。ツアーは去年は3か所、今年は5か所で、行った事がない土地にも行けるので単純に嬉しいのですが、ただ見せるのではなく、伝えに行くので、みなさんにたくさん色々なものを持って帰って欲しいと思います。

――3年目に入りますが、これからこういう自分でありたいという理想の形はありますか?

『センチメンタル』(3月21日発売/通常盤)
『センチメンタル』(3月21日発売/通常盤)

瀬川 私は北海道出身で、北海道の人がすごく背中を押してくれているので、イメージは、瀬川あやかが、北海道から大きな口を開けて日本列島にかぶりついているイメージで、たくさんの人を虜にできるビッグな人になりたい。それから、いつか医療の現場に音楽を還元してきたい。音楽療法とかそんなに大それたものではなくて、自分で企画してチャリティで、音楽を患者さんに聞かせたい。以前、小児・AYA世代(15歳~29歳)のがん啓発ライヴに出させてもらって歌っている時に、いつもとは違う“熱”を感じて、その時にやっぱり医療のために歌を役立てたいと思いました。

瀬川あやかオフィシャルサイト