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Lenny code fiction、今が”覚醒”の時 「余計なものを捨てる勇気を持てた事が成長」 

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
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「東京ドームとか大きいところでライヴをやりたい。僕たちが見たい世界に行くためには、メジャーを通らなければ行けない。そのためにメジャーデビューした」――約一年前、デビューにあたってメンバーにインタビューした時に、そう語ってくれた注目のバンド・Lenny code fiction(レニー・コード・フィクション/以下レニー)。2年目を迎え、今年は「サマーソニック2017」や「ROCK IN JAPAN2017」などの大型夏フェスを始め、数々のフェスに出演し、“鍛えられ”、実力を磨いてきた。そしてその力を見せつけるために、9月からバンド史上最大規模の全国ツアー「Lenny code fiction LIVE TOUR 2017 “AWAKENING”」をスタートさせた。ワンマン、対バンを織り交ぜ、12月24日東京・恵比寿リキッドルームまで、秋冬の日本を疾走する。そして恵比寿リキッドルーム公演では、注目バンドがブレイクする瞬間を観る事ができるはずだ。全国ツアーの初日を終えたばかりの4人に、ライヴバンドとしてさらなる進化を遂げるために何が必要なのか、そして“覚醒”と名付けられたツアーに賭ける思いを聞いた。平均年齢23歳の新鋭バンドが見据えるその先にあるものとは?

「たった一年かもしれないが、去年はまだ若かったと思えるくらい成長できたと思う」

――まずはメジャーデビューして丸1年が経ちました。改めて振り返ってみてどんな一年でしたか?

ソラ(G)
ソラ(G)
KANDAI(Dr)
KANDAI(Dr)

ソラ 改めて音源、映像を聴き直したり、観直したりしたのですが、すごく下手だったなって。そんな中でフェスやイベントにたくさん出させていただいて、たった一年かもしれませんが、まだ若かったなと思えるくらい成長できていると感じています。このスピード、この意識で続けていく事ができれば、もっともっと先が楽しくなると期待しています。

KANDAI レコーディングや色々なペースも含めて、やっと色々な事がわかってきたというのが実感です。今年は夏フェスにもいっぱい出させいただいて、大型フェスも初めてだったのですが、その空気感とか暑さ対策とか、今まで経験した事がないライヴのやり方のようなものも学ぶ事ができました。それを、始まった全国ツアーでいかに昇華させていけるか、12月24日のファイナルまでどう進んでいくかが大切だと思っています。

片桐 デビューしてから、知らないことがあまりにも多すぎて、でも色々な事を知って、経験する事が大事だと思っていたので、一年経ってやらなくていい事がわかったのが成長だと思っていて。とにかくやってみて、自分には合わないもの、自分がライヴで表現できない部分とか、苦手な事を見つけられたことが収穫でした。得意な部分を見つけるのは簡単だと思いますが、苦手な事を苦手なままで、その方向性じゃないって自分で決めるのは、すごく難しい事だと思います。ずっと好奇心で生きてきて、デビューの時に、自分達の中で大事にしていたものをかき集める作業をして、一年経って、必要ないものを見極める事ができるようになったというのは、それはバンドとして成長できた部分だと思います。色々な方向にいくのも大切だと思いますが、それがブレにつながったり、方向性が定まらないという事にもつながってくる。だから捨てる勇気を、最近は持つ事ができるようになって、それが気持ち的な成長につながってなっています。

レニーはこれまでその作品が、数々の大型アニメのタイアップにも恵まれ、外から見ると順調に成長を続けている、そう感じていたが、本人達の心の中にはモヤがかかり、視界不良だったようだ。レニーとその音楽にはこれまで、スタイリッシュ、ハイブリッドという色々な事を想像させる言葉が聴き手に示されてきたが、それが逆に片桐から“自由”を奪っていたのかもしれない。片桐の書く意志の強い言葉と、それを伝えるための親しみのあるメロディを、ストレートでワイルドな演奏に乗せ、荒々しいパフォーマンスで伝える――それが片桐が、レニーが描く理想のライヴであり、自分達が目指す音楽だったはずなのに、何かに縛られ、カッコつけすぎていたと、昨年の1stツアー「Non-fiction」で気付いた。

「色々な事に左右される事なく、自分達がカッコイイと思ったものを貫き通す覚悟を決めた」

片桐航(Vo/G)
片桐航(Vo/G)
kazu(B)
kazu(B)

片桐 色々な試みをした、挑戦的なツアーでもあったので、その挑戦がどっちに転ぶかで、見えてきたことがあって。その時メンバーから出てきたのが、やっぱり素の自分を出せたMCと、考えすぎていた言葉を使ったMCの回があって、それこそノンフィクションの、そのままのMCが良かったって言ってくれて。そこから色々と考え始めました。

kazu デビューした時に一番感じたのが、色々な人と関わる事が増えていって、その人によってカッコイイと思うものって違うんだなと改めて思いました。ある人にはレニーのここがいい、ある人にはここをこうした方がいいと、正解がないんだなということを感じて。その時にやっぱり一つひとつの意見に振り回されていると、結局自分達がブレてしまうという事を痛感した一年でした。そんな中で、自分達がカッコいいと思ったものを貫き通すという事を、メンバーの中で再確認しました。それがないと結局ライヴもよくならないし、正直、夏フェスでもそれは感じました。それを超えての今回の“AWKENING”ツアーで、初日は、個人的にはメンバーが飾らないというか、内面から出てくるもの全てぶつける事ができたと思っていて。すごく楽しかったし、完璧とは言えませんが、ここから始まるんだという気持ちになれました。

ソラ やっぱりありのままの航がカッコイイというのが、他の3人の共通意見だったので、それを初日で観る事ができて、「やっぱりこれだよね、航は」という手応えを感じました。

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「ボーカルだけではなく、プレイヤー全員が目立つバンドでありたい」と以前のインタビューで語っていたが、“AWAKENING”ツアー初日、9月29日SHIBUYA WWW X公演では、プレイでも音でも全員が“前に”出ていた。演奏のうまさはもちろん、レニーの全てを伝えたいという気持ちが、片桐だけではなく、バンド全員から出ていた。片桐の歌に寄り添いながら、逆に歌に負けていられないという“意気込み”を音に感じた。

kazu 個人プレイの集合体ではあるのですが、前回のツアーの時に、もうちょっとまとまりを見せた方がいいんじゃないか、ボーカルを立たせて、僕らはもうちょっと引いた方がいいんじゃないか、という話し合いもあって。それを試していた時期もありましたが、やっぱりその時って何か違うなって全員が感じて。楽しくなかったんです。それで今回のツアーをやるにあたっては、やっぱり初期衝動が一番じゃないかと。ありのままのボーカルがいて、他のメンバーは、超えてはいけない一線だけを自覚して、後は何をやってもいい、自分のやりたいことをやって楽しんでいる方がいいんじゃないかという事になりました。

30年間ロックを鳴らし続けている、ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトは「ロックに定義はないけど、初期衝動、楽しいという気持ちをいつまでも忘れないでいられるか」だとインタビューで語ってくれたが、レニーもそこに気づいた。

だから今回のツアーに“AWAKENING”というタイトルを付け、それはファンに向けたメッセージであると共に、自分達に向けた強いメッセージでもある。

「ツアーファイナルの12月24日恵比寿リキッドルームは今年の集大成」

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kazu このタイトルは夏フェス前に決めて、その時はその時で覚醒した!という思いがみんなあって、でも夏フェスの時に、まだまだだと痛感して。なのでこのツアーで、俺たちは覚醒していくんだという思いに、今は振り切れています。その片鱗は初日で見せる事ができたかなと思っています。

片桐 覚醒しに行くツアーだと思って臨んでいます。覚醒という感覚をつかみむに行く現場、という感じです。

KANDAI やる事はわかっている、それをきちんとやって覚醒しに行くというイメージです。ツアーファイナルが恵比寿リキッドルームというのは、実は今年の頭に言われていたので、それに向けて動いた今年の集大成的な意味合いがあります。

ソラ 色々な事を確かめに行くツアーで、そして覚醒するという意味として捉えています。対バンもできるし、楽しみです。

片桐 このツアーをやりながら、2か月後(インタビューは10月頭)のファイナルの時は、自分が何をしているかわからないというか(笑)、一つひとつの行動で、多分色々変わってくると思うし、もしかしたら髪の毛の色も変わっているかもしれないし(笑)。どういう自分で2か月後を過ごしているのか、全く予想できないのでその時に照準を合わせた事をやらないと意味がないと思っています。

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片桐は端正な顔で、話し方も以前と比べると穏やかになり、いい意味で余裕を感じるが、実は激情型の性格で、感情の起伏が激しく、一日単位で大きく変わるという。それは自分でも認めていて、メンバーも「行き過ぎたら止めますが、基本は放置しています」(kazu)と認めている。しかし、片桐はソングライターでもあり、ボーカリストであり、その感情を言葉とメロディ、そして歌にぶつけ、熱狂を作り出す。抑えきれない熱さこそが、生々しいライヴを作りだすのだ。そういう意味では、小さくまとまって欲しくない、いい子でいて欲しくないと思っているのは、他ならぬメンバーなのだ。

片桐 (この性格を)直したほうがいいよって言われるなら、頑張ろうかなと思ったんですけど、それなら大丈夫です(笑)

kazu 僕はバンドのこれからとか、先の事をどうしても考えてしまうタイプで、でも航には“今”だけを考えてくれればそれでいいと思っていて。それがLenny code fictionなので。

来るべき12月24日はバンドとしての記念日になるかもしれない。それはブレイクしたと、メンバー全員と、そこにいる全ての人が納得し、見届ける日になる期待を感じるからだ――レニーがキャリアを重ねていく中で、のちに“伝説のライヴ”と呼ばれるのだ。

Lenny code fictionオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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