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GLAY ニューアルバムが4年半ぶりに1位を獲得 未来を見据えた物語の新しい章が始まる

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

「次の時代のロックの扉を開けるアルバム」(プロデユーサー・亀田誠治)

TAKURO
TAKURO

「次の時代のロックの扉を開けるアルバム」――これはGLAYの約2年半ぶり、14枚目のオリジナルアルバム『SUMMERDELICS』を、メンバーと共に作り上げたプロデューサー・亀田誠治の言葉だ。数多くのJ-POPアーティストと、数々のヒット曲を作り上げている名プロデューサーをして、そう言わしめるほどの、強烈な説得力を纏う一枚になっている。GLAYと亀田誠治の関係は、2013年のシングル「DARK RIVER」から始まった。一流の音楽家同士の邂逅。音楽を心から愛する者同士、とにかくいい作品を世の中に出していきたいという情熱、プロとしての仕事の仕方に、お互いが共感、共鳴するまでにそう時間はかからなかった。亀田は「とにかくメンバーそれぞれの人柄が素晴らしく、こんなにお互いに尊敬し合っているバンドはいない。そこに惚れました」と、GLAYとの出会いを語ってくれた。そして同時に「4人のためなら自分の持っているもの全て、経験、スキル、ネットワークを使って、彼らの音楽を次の世代、時代に残していきたい」とリスペクトしたという。そうして作り上げたのが「DARK RIVER」であり、翌2014年のデビュー20周年の年にリリースした50枚目の記念シングル「BLEEZE 〜G4・III〜」、そしてオリジナルアルバム『MUSIC LIFE』だ。20年というキャリアだからこそ奏でる事ができる音楽、そしてこれから先のGLAYというバンドの可能性を大いに期待させてくれる、壮大かつフレッシュな音楽が詰まった傑作が完成した。

メンバーそれぞれのソングライターとしての才能に、改めて驚かされる一枚

TERU
TERU

その後もこの強力タッグは、シングル「百花繚乱/疾走れ!ミライ」、2015年、シングル「HEROES/微熱(A)girlサマー/つづれ織り〜so far and yet so close〜」と続き、2016年1月にリリースした「G4・IV」はシングルとしては約8年ぶりとなる、オリコンシングルランキングの1位を獲得するという好アクションを記録。続くシングル「[DEATHTOPIA]」には、両A面曲である「デストピア」・「超音速デスティニー」と共にHISASHIが手がけた初のアニメタイアップソング(テレビアニメ「クロムクロ」) が収録され、配信サイトのダウンロードランキングで、軒並み1位を獲得。最新曲は「Red Bull Air Race Chiba 2017」のテーマソングにもなっている配信シングル「XYZ(エックスワイジー)」で、疾走感とスリリングさが命を懸け夢を追い続けるパイロット達の戦いを盛り上げる。

このように、TAKUROという絶対的なメロディメーカーの存在が、GLAYというブランドの大きな柱であり、象徴でもあったが、近年はメンバーそれぞれがソングライターとしての才能を発揮し、それがシングル曲になることも珍しくない。それはやはりシングルという名の、限りなくミニアルバムに近い内容の濃さを誇る「G4」シリーズの存在が大きい。今回のインタビューで「それぞれの胸の奥にある熱量をしっかりシェアして、ぶつけ合って、恥ずかしい部分も曝け出したもの」(TAKURO)と表現した「G4」シリーズという、個性をより伸ばそうという実験の場であり、それぞれの才能を改めて確認する場、そこで生まれた結果をお披露目する場ともいえる。

「HISASHIのニッチな世界、ダークの世界をGLAYとして世の中に出していく必要があった」(TAKURO)

HISASHI
HISASHI

全14曲中シングル曲が5曲、リミックスが2曲、7曲が新曲という構成だ。GLAYの4人の飽くなき探求心を象徴する一曲として、そしてこのアルバムのトピックスになる曲として、大きくクローズアップされるのが、HISASHIが手がけた「シン・ゾンビ」だ。HISASHIの溢れる興味、探求心が熱量となってこのデジタルロックに表れている。TAKUROは「2014年の「EXPO」以降、メンバーにはGLAYのリード曲になるものを書いて欲しいと言ってきて、同時にHISASHIが持っているGLAYの中ではある意味王道にはなり得ない側面、例えば非常にニッチな世界やダークな世界を、今度はGLAYとしてきちんとフォーカスして世の中に伝えていくというこの二本の柱で動いてきた」と語っている。そういう意味でも「G4」の“効果測定”をする舞台でもあり、GLAYがモンスターバンドである所以を再確認する場でもある。

「40代の、キャリアを積んだミュージシャンが、本気で音楽を楽しんでいる姿をアルバムを通して伝えたい」(TAKURO)

JIRO
JIRO

JIROが書くシンプルかつ豊かなロックナンバーは、ロッククラシックのような芳醇さを感じ、他の3人が書く作品が湛える“歌謡曲”のエッセンスを一切感じさせず、だからこそアルバムの中で輝いている。「余計な事は気にせず、彼の心と直結した曲が書けるようになった」とTAKUROがいうTERUが作る曲は、風景が見えてきて、声を抱きしめたくなるような温もりを感じさせてくれる。ソロツアーを終えたTAKUROは、改めて生音の素晴らしさに気づき、そのタッチや歪んだ音が醸し出す空気感などにこだわり、70年代の古き良きロックにハマっている時期でもあり、それを2017年に置き換えたらどうなるのか、というようなアプローチの、遊び心を感じる作品を作り上げている。そう、40代の、キャリアを積んだミュージシャン達の遊び心が溢れている一枚。本気で楽しんでいる。ただしその根底にあるのは、一人ひとりが音楽と真剣に向き合って、それぞれの心の底から湧き上がってくる、ものすごい熱量の音楽をぶつけ合い、嘘偽りない音楽を紡いでいるというブレないその姿勢だ。

変わるものと変わないものを、絶妙な塩梅で世の中に提示。「“しなやかな成熟”を目指した」(TAKURO)

『SUMMERDELICS』
『SUMMERDELICS』

GLAYは、バンドとしての転換期を迎えた今、変わらないものと変わっていくものを絶妙な塩梅で、ファンそして世の中に提示した。それについては「しなやかな成熟」という表現をTAKUROは使ったが、永遠の夏のまぶしさを追い続ける、強い絆で結ばれたGLAYというバンドは、「しなやかな成熟」に向かう途中で、「次代のロックの扉を開ける一枚」を作りあげた。そんな事を感じずにはいられないアルバム、それが『SUMMERDELICS』だ。GLAYの物語は続く、そして新しい章が始まった。

このアルバムを引っさげ、9月23日から全23公演23万人を動員する大型アリーナツアー、『GLAY ARENA TOUR 2017 “SUMMERDELICS”』を開催し、4人はその想いを直接ファンに届けに行く。

GLAYオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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