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「ひよっこ」でも注目、合唱ブーム到来!? コンサートにシニア層が殺到し、”合唱アイドル”に熱い視線

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
「『日本名曲アルバム』放送100回記念コンサート」

NHK連続テレビ小説「ひよっこ」の中で、主人公・谷田部みね子(有村架純)らが所属する、乙女寮コーラス部の合唱シーンが度々出てくるが、今これを楽しみにしている視聴者が増えているという。番組内で歌われるのは、「手のひらに太陽を」「恋はやさし野辺の花よ」「夏の思い出」「見上げてごらん夜の星を」他、童謡や唱歌、昭和の名曲など様々だが、シニア世代の視聴者にとっては懐かしく、若い世代には新鮮に聴こえているのかもしれない。

BS-TBS『日本名曲アルバム』が人気

実は今合唱ブームだという。2013年からオンエアがスタートした、BS-TBSの歌番組『日本名曲アルバム』が好調で、この番組のコンサートに今シニア層の男性・女性が殺到している。

『日本名曲アルバム』は、“世代を超えて、歌い継ぎたい曲がある”をコンセプトに、童話や唱歌、グループサウンズから歌謡曲、フォークソング、ニューミュージック、演歌に至るまでの昭和の名曲達、そして洋楽のポップスを、ゲスト歌手と人気コーラスグループ、大学生のコーラスグループが披露する。そしてこの番組に出演しているコーラスグループが顔を揃えるコンサートが、1000人規模のホールで定期的に行われているが、常に満杯という盛況ぶりだ。BSは視聴者の年齢層が比較的高いと言われているが、それはこのコンサートに集まるお客さんをみればよくわかる。

シニア層がコンサートに殺到。終演後は、”推しメン”との触れ合いを楽しむ、まさにアイドルのイベント

フェリス・フラウンエンコーア
フェリス・フラウンエンコーア

5月21日に神奈川県・川崎市にある昭和音楽大学「テアトロ ジーリオ ショウワ」で行われた、『日本名曲アルバム・スペシャルコンサート2017』には、シニア世代とおぼしき男女が、開演が待ちきれないとばかりに、開場時間前から続々と集まってきていた。50~70代の夫婦が中心だろうか。この日は同大学合唱団や、「フェリス・フラウンエンコーア」「杜の音シンガーズ」「Ensemble OASIS」「harmonia ensemble」「Chor stella」「Jスコラーズ」「Amici 桐の花」という、番組でも人気の女性、混成コーラスグループが出演。童謡、唱歌、歌謡曲、フォークソング、演歌など34曲を、休憩をはさみ3時間に渡り披露した。聴きなれた、また誰もが一度は耳にした事がある曲を、斬新なコーラスアレンジで歌い、その圧倒的に美しいコーラスワークは、優しくも迫力を感じさせてくれて、誰もがその歌の世界に引き込まれていた。

コーラスグループは20代を中心にした若い人達で構成されていて、昭和の名曲を若い世代が歌う新鮮さがいい。楽曲は当然コーラス用にアレンジされているが、どの曲も表現力と歌唱力で奏でられる合唱 =歌の力 で、当時聴いていた人達の共感を呼んでいる。聴きなれたメロディと言葉が、美しいコーラスアレンジを纏って、より感動的に伝わり、歌、そのダイナミックスさと繊細さが耳と心に残る。

終演後のお楽しみ、ロビーでの”イベント”
終演後のお楽しみ、ロビーでの”イベント”

実は、このコンサートのお客さんの楽しみは、歌ともうひとつある。それは終演後、出演者がロビーに出てきて一緒に写真を撮ったり、話をしたり握手ができる“お見送りイベント”だ。さながらアイドルのイベント会場と化し、ものすごい熱気で、誰も帰ろうとしない。さながら、ではなく出演者はみんなアイドル的存在だ。これがこの番組、コンサートの大きな特長だ。

どのグループも美男美女揃いで、女性出演者は色鮮やかなドレスを着て、男性出演者はタキシードで決め、ルックスの良さと知性、歌の実力を併せ持つ、上品な大人のアイドルという感じだ。男性ファン、女性ファンが目を輝かせながら、“推しメン”との触れ合いを楽しんでいる。この日は共演こそなかったが、番組で大人気の美人双子ソプラノデュオ「山田姉妹」は、2月にメジャーデビューを果たし、話題を集めている。

コンサート、DVD、高まる合唱人気

DVD『日本名曲アルバム』(各¥5,000)
DVD『日本名曲アルバム』(各¥5,000)

さらにファンの声を受け、ついには番組のDVDが3月29日に発売され、順調に数字を伸ばしている。番組と同名のこの作品は、童謡や唱歌を集めた「心の抒情歌集」、「昭和の名曲集」、そして「青春のフォークソング・GS集」の3部作になっていて、番組内で披露された楽曲が収録されている。それぞれ2枚組で、作曲年代順にまとめられており、日本の音楽史、歌謡史を辿る事もできる。またこの日コンサートに出演していなかったグループのパフォーマンスも楽しむことができ、それぞれのグループのカラーを比較するのも思白い。もちろんどの曲も極上のハーモニーを堪能できる。

年を重ねると、昔は足を運んでいたはずのコンサートに行くのも面倒になり、また、何を観に行っていいかわからない、夢中になるものがない、という人も多くなる。しかしこのコンサートにはシニア層が笑顔で集まってくる。いくつになっても何かに夢中になる、誰かを、何かを追いかけるというその気持ちが大切で、心と体のビタミンになる。そんな中で、今コーラスがシニア層を中心に大きな注目を集めていて、この流れは「ひよっこ」での人気の影響もあり、幅広い世代にも波及しそうだ。

OTONANO『日本名曲アルバム』特設ページ

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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