”ラヴソング”というジャンルを歌い続けて30年。ヴォーカリスト・鈴木雅之の魅力とは?

ソロデビュー30周年を迎えた鈴木雅之。ソウルフルで色気のあるボーカルは唯一無二

自他ともに認める”ラヴソングの王様”

マーチンことヴォーカリスト・鈴木雅之がソロデビュー30周年を迎えた。’80年にシャネルズでデビューし、ラッツ&スターに改名して「め組のひと」「Tシャツに口紅」など多くのヒット曲を残し、’86年「ガラス越しに消えた夏」でソロデビュー。あれから30年、鈴木が歌ってきたのはJ-POPでもロックでもない「ラヴソング」というジャンルだ。ラヴソングを歌い続けて30年、今や“ラヴソングの王様”と自他ともに認めるシンガーだ。

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「ラブソングという名のカクテルで酔いしれて下さい」――鈴木がディナーショーなどでこう言って歌い始めるラヴソングはとことん甘く切なく、そして哀しく、誰もが聴き入ってしまい、男も女もうっとりしてしまう。鈴木のライヴを観た事がある人ならばわかると思うが、基本は全てがカッコイイ。が、自身でも「カッコイイです」と言って笑わせたり、MCではとにかくお客さんを楽しませるが、一旦歌い始めると、それまでのゆるい空気は影を潜め、ひたすら歌でその世界に引き込む。そのメリハリが鈴木、そして鈴木のライヴの最大の魅力だと思う。面白くてカッコイイ男はやはりモテるのだ。

圧倒的な歌の上手さと表現力。ベースにあるソウルミュージックが歌に滲み出て、極上のラヴソングになる

圧倒的な歌の上手さと、その表現力はキャリアを重ねるごとにさらに磨きがかかっている。多種多様の歌を見事に表現できるそのヴォーカル力は、存在感を放ちつつも、いつも瑞々しさを感じさてくれるから不思議だ。その優しく温かい、でも太いしっかりとした芯がある声には、自身のベースとなり内包されているソウルミュージックが自然と溶け出し、それがラブソングを極上のラブソングにしている。

小田和正、山下達郎、槇原敬之、さだまさし、斎藤和義etc…コラボレーションにこだわり続け、化学反応を楽しむ

多種多様の歌を見事に表現でき、瑞々しささえ感じるのは、ソロデビュー曲「ガラス越しに消えた夏」を大澤誉志幸が提供したのを始めとして、これまでラッツ&スター時代には大瀧詠一、ソロになってからは小田和正、山下達郎、ポール・ヤング、槇原敬之、さだまさし、斉藤和義など数多くの日本の音楽シーンを牽引するアーティストとコラボレーションを重ねてきたからだろう。それも、他のアーティストがヴォーカリスト鈴木雅之に魅力を感じ、創作意欲に駆られるからに他ならない。鈴木は、アーティストを夢中にさせるアーティストでもある。コラボレーションについて鈴木は先日出演したテレビ番組の中でこんなことを言っていた。「コラボ―レションって夢があると思う。シンガー・ソングライターの方が書いた曲を自分色に染めあげる楽しみがあって、それが“化学反応”を起こしているのだと思う。30年間それに挑戦し続けている」と、一流のアーティストとの“化学反応”を自らも楽しんでいるようだが、当然、提供される作品はどの曲も難しい。実際に歌ってみればわかるが、鈴木の歌はそう簡単には歌いこなせない。アーティスト(シンガー・ソングライター)が鈴木を思い描いて書いてくるであろう作品を、その期待以上のものに仕上げ、打ち返していく。だから様々なアーティストが鈴木に歌って欲しいと思い、自ずとイイ曲が集まってくる。

ソロデビュー30周年記念第1弾シングルは、玉置浩二が手がけた「泣きたいよ」

玉置浩二
玉置浩二
「泣きたいよ」(5月25日発売)
「泣きたいよ」(5月25日発売)

そして今回もイイ曲が、素晴らしいアーティストから鈴木の元から届いた。ソロデビュー30周年記念第一弾シングル「泣きたいよ」は、日本を代表するシンガーであり、ソングライターのひとりである玉置浩二が書き下ろした楽曲。以前、鈴木のアルバムに玉置が作曲した作品を提供してはいるが、作詞・作曲したのは今回が初めてだ。「泣きたいよ」はNHKドラマ『コントレール~罪と恋~』の主題歌になっており、大石静脚本の切ない大人の恋を描いた内容で、これに相応しい情熱的で深い想いを湛えたミドルバラードだ。この曲について鈴木は「60代を迎える今年、心にしみる歌に出会えました。あなたには「泣きたい」と思えるほど愛しい人が側にいますか?玉置君とのコラボ―レーションは、愛が一杯詰まったラヴソングです」と、ソロデビュー30周年と自身が還暦を迎えるという節目の年に出会えた、このラヴソングのことを語っている。曲を提供した玉置は「ふと目が覚めた……話しかけるようにメロディーを口ずさんだ。♪泣きたいよ…日が昇りマーチンさんが♪泣きたいよ…と魂を吹き込んでくれる姿が見えた!」と、酸いも甘いも経験した二人だからこそわかりあえるキーワードを歌にした。まさに「大人の男の世界」だ。玉置の曲の世界観と、鈴木の歌の世界観の両方を最大限に生かしつつも、鈴木の表現力が起こす化学反応を、さらに感動的に聴き手に届けるアレンジを施したのは、名手・島田昌典。音楽プロデューサー・島田のアレンジが歌とメロディを引き立てている。ストリンングスのアレンジも素晴らしく、楽曲に光と影を与え、その輪郭を際立たせている。

玉置の代表曲のひとつ、名曲「メロディー」もカバー

カップリングも聴き逃せない。玉置の代表曲である名曲「メロディー」('96年)をカバーしている。シンプルだが強烈に心に響くメロディと歌詞は、玉置のライヴでは涙を流しながら聴いている人も多い。こんなに支持されている名曲なのに、高度な技術と表現力が求められるからか、これまでカバーしたアーティストは数組しかいない。それだけ難しいのだ。鈴木は見事に鈴木流のラヴソングとして創り上げている。シンプルな曲だからこそ、鈴木がこれまで積み上げ、磨き上げてきたものすべてが味のある表現力となって伝わってくる。名演だ。そしてここでも島田のアレンジが、鈴木の歌をさらに印象的なものにしている。

このシングルに先立って5月4日には、松任谷由実が鈴木に提供した「Melancholia(メランコリア)」が配信リリースされている。この組み合わせも初めてだ。実はシャネルズがまだアマチュアの頃、松任谷のバックバンドを務めたことがあり、今回37年の時を超えコラボレーションが実現した。

30年間ラブソングを歌い続けてきて、今年60歳を迎えるシンガーは円熟味を増し、ラヴソングはさらに深みと艶が加わり、なんともいえない味、肌触りを心と耳で感じることができ、優しく包んでくれる。9月からは30周年記念全国ツアーがスタートする。ぜひこの機会に“ラヴソングの王様”のラヴソングを聴いて、デビュー36年、ソロになって30年の円熟の域にさしかかってきたシンガーにしか出せない、歌の力、極上のエンターテイメントを体験して欲しい。

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<Profile>

1956年東京生まれ。'80年にシャネルズとしてシングル「ランナウェイ」でメジャーデビューし、いきなりミリオンヒットを記録。'83年グループ名をラッツ&スターに改め「め組のひと」「Tシャツに口紅」など多くのヒット曲を残した。'86年に「ガラス越しに消えた夏」でソロヴォーカリストとしてデビュー。「Guilty」「別れの街」「もう涙はいらない」「恋人」など数多くのヒット曲を送り出す。ベストアルバム『Martini(マティーニ)』は(I)(II)それぞれミリオンヒットを記録。'11年にはキャリア初となるカヴァーアルバム『DISCOVER JAPAN』を発表し、「第53回日本レコード大賞」優秀アルバム賞を受賞。更に'14年には『DISCOVER JAPAN II』をリリース。'15年にはシャネルズでデビューして35周年を迎えた。『ALL TIME BEST~Martini Dictionary~』はオリコンアルバムランキングの1位を獲得した。'16年、ソロデビュー30周年を迎えた。鈴木雅之オフィシャルサイト