滋賀・琵琶湖の湖畔に2日間で10万人動員

9月19日、20日、T.M.Revolution西川貴教主催の『イナズマロック フェス 2015』(IRF)が、今年も西川の地元・滋賀県草津市の烏丸半島芝生広場で行われた。琵琶湖の湖畔にステージが組まれるこのフェスは、数あるフェスの中でもそのロケーションの素晴らしさは出演アーティストも絶賛するほどだ。

7回目となる今年は、19日UVERworld、NMB48、倖田來未、T.M.Revolution、Fear、and Loathing in Las Vegas、ももいろクローバーZ、藍井エイル、20日[Alexandros]、UVERworld、AKB48、キュウソネコカミ、超特急、T.M.Revolution、BACK-ONという豪華なラインナップで、10万人(2日間合計/フリーエリア入場者数含む)を動員するという西日本最大級のフェスになっている。

ももいろクローバーZ
ももいろクローバーZ
高橋みなみ(AKB48)とT.M.Revolution西川貴教
高橋みなみ(AKB48)とT.M.Revolution西川貴教

ちなみにラインナップを見ると、“ロックフェス”ではないのでは?”という声があるのも事実だが、それを言い始めるとキリがない。他の“ロックフェス”にもそういう部分はある。この声に対して西川は「ロックというカテゴリーは色々な捉え方ができると思う。その中で“信念”を持って活動している方々に参加してもらっている。どちらかというと日陰になっていた滋賀県という土地を、皆さんが来て頂ける土地に変えていく。そういうマインド的な部分を表している言葉が“ロック”だと思っている」と語っている。2009年第1回目のIRFの公式HPに当時の滋賀県知事・嘉田由紀子氏が「皆さんといっしょにイベントを作りあげることで、滋賀の地にイナズマを起こし、元気の風を吹かせましょう」というメッセージを寄せている。その想いはブレていないということだ。IRFの趣旨に賛同し、出演するアーティストは年々豪華な顔ぶれになっているが、そのブッキングに関しては西川との関係性や、西川の熱意が大いに関係しているのは間違いない。

西川の郷土愛が全ての始まり。徹底した地域振興と琵琶湖の美化が目的

「イナズマロック フェス」が他のフェスと違うところは、徹底して地域振興を目的にしているところ。さらに琵琶湖の環境保全活動への寄付(マザーレイク滋賀応援寄付)が大きな目的のひとつになっていて、民間と行政が連携した継続的な地域振興の一大イベントになっている。もちろん”○○から日本を元気に!”を標榜しているフェスは、大小含めて日本各地で行われているが、IRFは規模と動員とそして西川貴教の郷土愛の深さとで、他とはひと味違うフェスになっている。

「琵琶湖の水を守ろう」というテーマを掲げ2009年に始まったこのフェス。そのきっかけは、この前年「滋賀ふるさと観光大使」に就任した西川が、2007年に前出の当時の滋賀県知事・嘉田由紀子氏と行った対談だった。ここで西川が滋賀に対する熱い思いを知事に語り、当時はなかった観光大使という制度をまず作り、そして「イナズマロック フェス」につながっていった。ちなみにイナズマというのは、滋賀の「滋」という文字の一部がイナズマを表しているように見えるというところから来ている。

今は日本全国で様々な夏フェスが行われ、それぞれの地域の経済効果への貢献度は高い。「フジロックフェス」(新潟県・苗場スキー場)の経済効果は一説によると3日間で30億円ともいわれ、そういう意味では今や新潟県には欠かせない一大イベントになっている。フェスの経済効果はお客さんだけがもたらすのではない。何日も前から現地に入って、会場作りやステージの設営他に携わる何百人ものスタッフの宿泊代、飲食代もかなりの金額になる。そんな状況から、自治体などによる夏フェスの招致も盛んになっている。フェスのまとめ記事などを参考にしてもらうとわかるが、季節、屋内外を問わず一年中かなりの数のフェスが行われている。

地域とライヴイベントを最大限に融合させることに成功

「イナズマロック フェス」は、この類いのイベントとしては珍しく、会場の半分以上が無料エリアとなっており、地元の人も気軽に来場できるような仕組になっている。無料エリアにもステージが組まれており、ブレイク直前のアーティストによるライヴステージと、ご当地キャラクター、お笑い芸人によるパフォーマンスが楽しめるステージと、ターゲットが異なる2つのステージが見どころになっている。またフードコートやオフィシャルグッズ販売、子供が遊べるキッズエリアなど、これらすべてが無料エリアとして展開されているのも「イナズマロック フェス」の特筆すべき点だろう。この無料エリアに、「おいで~な滋賀エリア」を設けて滋賀をアピールする企画をフェスに組み込み、PR・経済効果ともに地域活性化につなげ、地域とライヴイベントを最大限に融合させることに成功している。

そこにはもちろん行政側の積極さや企画・発想力の高さが必要になってくるが、やはりアーティストサイドの熱意、積極的な姿勢が大きなポイントになるのは当然だ。毎年キャリア教育の一環として地元の小学生に会場設営の様子を見学させたり、西川本人が7月1日の「びわ湖の日」に湖上の清掃作業に参加したり、また、IRFの公式キャラクターのタボくんが県内の長浜農業高校や湖南農業高校の生徒と一緒に田植え、稲刈りを行うなど、とにかく地元との取組に積極的だ。ちなみにこの時に収穫されたお米は、フェス会場で販売されているカレーに使われている他、全国規模で開催される米の品評会でも優秀な成績を収めており、近江米新ブランドの認知にも貢献している。

また、毎年イベントの収益金の一部を滋賀県と、草津市の両自治体へ寄付を続けている。前述の琵琶湖の水の浄化を目的とした運動=マザーレイク基金にも、IRF出演者により行われたチャリティーオークションの売上げが寄付され、同基金への寄付金は過去6年間で約1600万円にもなり、琵琶湖の環境保全や環境学習等に活用されている。

三日月滋賀県知事と西川貴教
三日月滋賀県知事と西川貴教

このように地元とその周辺への経済効果のみならず、いかに地元のこと、良さを他県の人たちに知ってもらうか、同時に地元の人達に自分たちが住んでいるところの素晴らしさを再認識してもらうことこそが、フェスをやる意義、意味だ。滋賀県もこれまではどちらかというと何か発信していこうという発信力、意識が、県民も自治体も弱かったのが、IRFをきっかけに大きく変わってきたという。スポーツイベント他の誘致に積極的になってきて、映画やドラマなどの撮影用スタジオやオープンセットの誘致などにも積極的に乗り出しているという。これもIRFの経済効果ならぬ意識改革効果といっていいだろう。フェスをきっかけに地域住民、行政の発想力や発信力が磨かれ、それがIRFにもフィードバックされ、様々な仕掛けやアイディアが盛り込まれ、磨かれていき、動員を増やすことにもつながっている。地域とアーティストの素晴らしい関係を具現化しているIRF。7回目を終え、記念すべき10回目へ向け視界良好だ。

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