林業で見えた。外国人労働者の受け入れは、日本人の定着率の低さをカバーするため?

主な仕事は草刈りなど(写真はイメージです)

 大阪で開かれた森林の仕事ガイダンスに顔を出してきた。これは「緑の雇用事業」と呼ばれる林業関係の就職案内イベントである。全国森林組合連合会(全森連)の主催で、毎年東京や大阪などで開いているものだ。

 今年は、若干参加者が少ないようで、手持ち無沙汰の各道府県のブースも多かった。労働人口の減少が問題となっているが、林業界は常に人手不足が深刻である。なにしろ全国の林業従事者は、今や4万5000人程度なのだ。大企業1社分しか働き手はいないことになる。

大阪で開かれた森林の仕事ガイダンス。
大阪で開かれた森林の仕事ガイダンス。

 そこで期待されているのが、外国人である。国はいよいよ外国人の実質的な移民を受け入れられるように出入国管理・難民認定法を改正した。技能研修と言いつつ、どの分野に外国人労働者を受け入れるのかさえ決まっていない奇妙な法律改正であるが、林業界も受け入れを願っている一つだろう。

 ただ、林業現場にはすでに少なくない外国人が働いている。

 その実態を調べた調査が2010年に森林総合研究所関西支所で行われていた。それは日系ブラジル人延べ12人を受け入れていた兵庫県の某森林組合を対象としたものだ(2010年は5人)。ちょっと古いが、現実が見えてくる。

 それによると、彼らの仕事は、育林(下草刈りなど)と切り捨て間伐だった。伐採した木を搬出する利用間伐は、技術を要するのでさせていなかった。また休日でも仕事をすることが多いうえ、保険は労災以外は入っていない。これらは労働側の希望によるという。なお日本人との交流はほとんどなく、休みには近隣のブラジル人がいる地域に出かけて彼らと楽しむ。日本に定住する意志はないそうだ。

 また愛媛県の森林組合連合会も、2017年度に「林業担い手外国人受入れモデル事業」を始めて、ベトナム人研修生を入れている。2800万円程度の予算が付けられて、2018年にベトナム人を5人受け入れた。ここでもベトナム人の仕事は、さほど技術を必要としない下刈りや切り捨て間伐のような作業のようだ。林業で外国人を受け入れられる期間が1年間なので、高度な技術は1年間の期間では教えられないというわけである。今後、期間の延長を働きかけるらしい。

 林業現場の外国人の現状を見ると、日本が受け入れたいと思っているとされる外国人労働者のイメージと合うようだ。技術はあまり必要ない単純労働、休日もよく働く、日本人と交流しない、定住しない……。

 

 しかし不思議だ。日本の林業技術は世界的に見て低水準なのである。森づくりから始まり、木材の伐採や搬出も、低効率高コストが指摘されている。だからヨーロッパから林業指導者(フォレスター)を呼んだり、欧米先進地に派遣して研修をさせている最中だ。ちなみに私は、日本の林業現場を視察したドイツ人フォレスターが、ヨーロッパと比べると30年くらい遅れている、と言ったのを聞いたことがある。

 加えて技能を教えると言っても、熱帯地域のベトナム人に温帯の日本の林業技術というのもおかしな話だ。気候風土の違いに加えて生えている樹種も生態系もまったく違う中で、日本固有種のスギやヒノキの育て方をベトナム人に教えるのだろうか。

 林業機械にしても、ベトナムにない機材だと意味がない。

 そもそも林業は、本当になり手が少ないのだろうか。実は日本の第一次産業の中では若返りが進んでいる職種なのである。平均年齢はまだ高いが、35歳未満の割合を示す若年者率が上昇して、65歳以上の高齢化率が低下してきた。これは冒頭の「緑の雇用事業」などで新たに林業へ就業する若者を増えてきたおかげだろう。実際、自然の中で働くことに憧れる希望者は近年増えている。単に仕事がきつい、汚い、危険だから希望者が少ないわけではない。

 問題は、新規就業者の定着率の悪さだ。せっかく憧れて就いたにもかかわらず、約半分が5年以内に辞める。

 その理由は、何より待遇の悪さだろう。まだ給与は日当払い・出来高払いが多くを占めているうえ、重労働の割には金額も平均以下である。休暇も不定期。若いときはともかく、一生の仕事にできるのか不安になる。さらに事故率は全産業平均の14倍に達する。毎年、多くの人が林業現場で亡くなったり大怪我を負っている。安全教育がなおざりになっている証拠だ。 

 そうした労働条件の改善を進めずに、外国人労働者にも同じことをさせようとしているのではないか。

 外国人労働者を受け入れようと考える前に、日本人の定着率を上げる努力をすべきだろう。いっそのこと、外国人受け入れのための労力と投入する税金を林業従事者の待遇改善に当てられないか。その方が参入者を増やし、離職を防げるように思えるのである。

※写真は、いずれも筆者撮影