獣害対策に猟友会は不向き?狩猟と有害駆除の違いを考える

こんな“猟”はしたくない……猟友会の役割はなんだ?(写真:ロイター/アフロ)

このところ獣害関係で取り上げられることの増えた猟友会。有害駆除の最前線に立つ組織として期待を集めているのだが、よろしくない事件も次々と報道され始めた。

奈良県の猟友会では、総額約2900万円の使途不明金が出たことが発覚した。5月に心不全で亡くなった73歳の前会長が流用していた疑いが持たれている。

鹿児島県霧島市では、ハンターがイノシシなど有害鳥獣の捕獲数を水増しして、報償金をだまし取った疑いが出ている。2013年度からの3年間で、不正受給は少なくとも300件以上とみられ、その額は数百万円に達すると思われる。

報償金の受給には、写真付きの報告書のほか個体の尾と耳の現物を提出するのが普通だが、同じ個体を別の角度で撮影して複数の個体に見せかけるほか、尾と耳は、駆除ではなく猟期に捕獲したものを保存しておき提出するという手口らしい。

ほかにも猟友会の会員が報償金申請に、虚偽報告していたケースは全国で発覚しており、問題は広がりそうだ。

さらに駆除個体を山林内や河川敷で解体して埋めずに放置するケースも報告されている。腐乱して周辺環境に悪影響を与えるだけでなく、クマなどの餌になり誘引してしまうと言われる。

なぜ、こんな事件が発生するのか。改めて整理したい。

そもそも猟友会とは何か。

基本的には、狩猟愛好者の団体だ。市町村レベルの地域の猟友会があり、それをまとめた都道府県猟友会、そして全国組織の公益団体である大日本猟友会というような構造になっている。

狩猟愛好者と記したとおり、本来は趣味の団体なのだ。ハンターの加入は任意であり、専門的な教育や訓練を受けるわけでもない。そのうえ地域の猟友会はたいてい任意団体で、会計も不明朗になりがちだ。

大日本猟友会は、組織の役割として狩猟の適正化や共催事業、野生鳥獣の保護などを掲げている。しかし今注目されているのは、有害駆除の担い手としてだろう。

増えすぎた野生鳥獣を駆除するには、狩猟のできる人が必要であり、その適格者のほとんどが猟友会の会員なのだ。それに有害駆除は、役場からの依頼がなければならない。現状は、依頼先のほとんどが猟友会になっている。

狩猟と有害駆除は別物という声は強い。

狩猟は、たとえば巻狩などは複数のハンターが獲物を追いかけて仕留めることを楽しむわけだが、1日中山を駆けずり回って仕留めるのは1頭か、せいぜい2頭。しかし有害駆除は、もっと効率よく獲物を仕留めなければならない。また出没情報に合わせて平日でも急遽動員がかかることもよくある。

猟友会にとって、有害駆除は仕事を休んで出動するボランティアなのだ。趣味のハンティングとは別の社会貢献に近い。また狩猟ではなくワナにかかった獲物の処理を頼まれることも多い。これは楽しくもない作業だ。それでいて命あるものを殺すことへの世間の白い目もある。それでも地域のためにと思って出動しているのだ。加えて銃の所持や資格維持の手続き、犬の飼育……など経費も手間もかかる。

風向きが変わったのは、獣害がひどくなる中で報償金の額が膨れ上がったことだろう。最近まで鹿1頭で5000円にもならなかった報償金がどんどん値上げされ、自治体によっては2万円、3万円近いところもある。国からも補助が出るようになったからだ。これなら利益が出ると駆除に積極的になる人も少なくない。

ただし駆除の数を増やすため容易に捕れる場所を選びがちだ。それは必ずしも被害の多い地域とイコールではない。

それに駆除個体の処理に手間がかかる。報償金申請のための写真撮影などに加えて、仕留めた個体を処理施設に運ぶか、埋没する義務がある。また最近とみに期待されているジビエ(野生鳥獣肉)も、野外で解体したものを売買するのは食品衛生法に触れるから止めねばならない。

一方で駆除を依頼する自治体の立場から見ると、あまり厳しく不正がないかチェックすると猟友会との関係が悪くなり、肝心の有害駆除に出動してくれなくなることを心配する。

そんな背景が不正を産むのだろう。

猟友会は、あくまで狩猟愛好者の会であり、有害駆除はボランティアであるという原点に還ると、有害駆除の主戦力には向いていないのかもしれない。

2015年の改正鳥獣保護法では、環境省が認定事業者制度を設け捕獲の専門事業者を認定する制度も創設された。獣害対策を進めるためには、猟友会とは一線を画した明確な義務と責任を負って役割を定めたビジネスとして駆除事業を担う専門家を養成し、プロの組織を設立することも考えるべきだろう。猟友会と上手く棲み分けた方がお互い禍根を残さないのではないか。