事故率12倍! 新規参入に立ちふさがる「危険な林業」

林業大学校で行われている伐採講習

1月23日に大阪で開かれた「森林の仕事ガイダンス」を覗いた。30日には東京の国際フォーラムで開かれる予定である。

森林の仕事ガイダンスを簡単に説明すると、林業を仕事にしたい人向けの就職説明・相談会だと思えばよいだろう。全国森林組合連合会の主催で、各都道府県の森林組合や林業事業体など森林に関した職場がブースを設けている。またトークショーや林業そのものの説明・展示なども行われる。

もともと国が行っている補助事業である「緑の雇用」事業に合わせて行ってきたものだ。

すでに始まって十数年が経つが、たしかに林業に新規就業する人は徐々に増えている。もっとも、高齢の林業従事者が引退していくから就業者自体は減少傾向が続くのだが、若年層(35歳未満)率は年々上昇している。この傾向に緑の雇用事業と森林の仕事ガイダンスが果たした役割は大きいだろう。

林業を新たに始める人が増えたことで私が気になるのは、新規就業者にどんな教育をしているのか、ということだ。

というのは、林業とは非常に危険な仕事だからである。事故率は、全産業平均の12倍以上という驚くべき高率だ。

平成25年の統計で見ると、千人率(1000人のうち何人か)で、死傷者は全産業平均は2,3なのに対して林業は28,7。ちなみに木材製造業が11,4と、こちらも高い。

死傷者数は、1723人。うち死者は39人いる。多くが伐採や集材中の事故だ。全林業就業者が5万1000人程度なのだから異常に高い。

これは負傷は休業4日以上だった場合である。届け出がされていない負傷事故も少なくないともっぱらの声だから、実態はもっと高いのではないか。しかも労災の適用を嫌がるケースまであるらしい。

問題は安全教育がどれだけ行われているか、現場の安全意識をちゃんと保っているか、だろう。

そんなことを考えたのは、実際の林業現場で危ない作業を目にしてきたからだ。

そもそもヘルメットをかぶらない人も少なくないし、服の裾を出したままチェンソーを操る姿も見ている。近年はチェンソーからガードする器具の装着が義務づけられたはずだが、果たしてどれほど守られているか。

また樹木はいろいろな方向に枝を出しているうえ、生えている場所の傾斜なども影響して、重心がどちらにあるかわかりにくい。伐倒方向の制御が難しく、思いもしないところに倒れたり途中で折れて事故を引き起こす。倒した木が別の木にぶつかるなどすると、想像できない動きも起きる。

私はアメリカ人のフォレスターによる林業技術の講習に顔を出したことがあるが、最初に見せられたのが、数々の事故の写真や動画だった。どんな状況で事故が起きるのか、多くのパターンを目にさせられる。

死体も写るそれらの画像をいやというほど目にして、私はかなり意気消沈してしまった。

日本では、そうしたショック療法的な安全講習は行われていないだろう。最近は1,2週間の研修で林業に参入するケースも増えている。

実は、私のところにメールで「林業に参入します!」という報告が来ることもあるのだが、確認すると1週間の研修を受けただけ……。それで独立して自伐林業に取り組むのだという。私は危ないから止めろ、と返信したが、その気はなさそうだった。果たして彼は、今も続けているのか。生きているのか。

もっとも、事故を起こすのは新人ばかりではなく、むしろ高齢のベテランに多い。死者数の8割が50歳以上という統計にも現れている。

彼らはもともと自己流で林業を行ってきて、ちゃんとした指導を受けることもなかったのだ。そして「習うより慣れろ」を口にする。何十本か伐採したら、そのうちわかってくる、と平気でいう。慣れる前に死んだらどうするのだ?

そんな彼らが新人を指導するのだから……。(彼らだって、いつまで無事故でいられるか。)

森林の仕事ガイダンスで担当者と話をすると、これでも随分マシになった方らしい。少なくても「緑の雇用」では、新人に安全講習を行い、また安全装備の装着を義務としている。

彼らが林業現場に入ってくると、ベテランも多少は安全意識を考えさせるきっかけになるからだそうだ。

なんだか情けない話だが、平均の12倍以上という事故率を下げないと、いつまでたっても日本の林業は近代化しないように思う。