産地や樹種は信じられるか? 「擬装」は木材にもあり

木材市場に山積みの原木。この丸太の産地は、どこだろうか。

このところ連日のように食材擬装が話題になっている。全国のホテル、百貨店などの高級なレストランで食材の産地や種類、加工法などが擬装(誤表示?)されていたというのだ。

この問題が発覚して気づいたのは、これらの擬装は食べてもわからなかったことだ。黒毛和牛をメニューにあった肉が牛脂注入した成形肉でも、冷凍魚を鮮魚と書かれていても、ほぼ誰も違いに気づかなかった。おそらく美味しいと思って食べたのだろう。

にもかかわらず、多くの人が怒っている。騙されたからだ。味や安全性ではなく、騙されたことに怒っている。(安全性に関しては、アレルギー物質を含んでいた問題も指摘されているが。)

たしかに由々しき事態だが、実は同じことが、木材の世界ではごく普通に行われている。

木材商品には、必ずしも産地が開示されていないが、有名産地を記していても嘘が多い。吉野杉、秋田杉、尾鷲檜、北山杉……など名付けられていても、必ずしも産地名の地方で生産された木材とは言えないことは、多少とも木材に詳しい人なら常識だ。

もちろん表立っては関係者も否定する。しかし実際に吉野の木材市場には秋田の業者が購入に訪れているし、秋田には吉野の業者が行く。有名でない産地では、よい材が出たら吉野に送るという。すると地元の市場より高く値がつくからだ。

もっとも近年は、そんな銘木信仰も衰えて、無理して名産地に送っても、たいして値が上がらないと嘆く声も聞くが。ともあれ産地という言葉がないがしろにされているのが現実だ。

実は樹種だっていい加減。とくに外材では、ベイツガ、ベイマツ、ベイスギ、さらにホワイトウッドやSPF材などと表示されている材が多いが、そんな名称の樹木はない。

たとえばベイマツは、アメリカのマツを示すかのようだが、日本のマツとまったく種が違うダクラスファーである。マツ科ではあるが、トガサワラ属なのだ。ヨーロッパ産のホワイトウッドは、ヨーロッパトウヒが多いが、ほかにも淡色の材質の木の総称である。SPF材に至ってはスプルース(トウヒ属)、パイン(マツ属)、ファー(モミ属)の木材の総称。そこに属する樹種は100種近い。

そして業界関係者はえてして「それの何が悪い」と思っている。木材は食べるものじゃないし、銘木産地の名前を使うということは、その木材の品質が銘木としての価値があることだと主張する。名もなき地域のスギを吉野に運んだら何でも吉野杉になるわけではなくて、吉野杉と見紛うような品質の木をよりすぐって送っているのだと。

が、それこそ業界の悪しき慣習、ずれた感覚ではないか。

消費者は、産地銘柄の木材に何を求めているか。住宅の素材を強度とか耐震性、断熱性など機能だけで選ぶなら、鉄骨でもコンクリートでも外材でも合板でもいい。が、産地にこだわる消費者は、木の育った土地の夢を買っているのではないか。そして想像することで心の癒しを得ているのではないか。うちの家は吉野杉を使っているんだ、総ヒノキづくりなんだ、あるいは故郷の山で育った木なんだ、と。

その夢をぶち壊すのが偽証なのである。

知らなければよい? 機能が劣らないのなら、不都合はないのだから。……そんな発想で木材をビジネスにしていると、人々の林業不信を速してしまう気がする。「騙された」気持ちが、もっとも怒りを買うのだから。

同じことは、違法木材にも言えるだろう。世界中で違法な伐採で得られた木材が蔓延している。貴重な天然林を破壊したり、先住民の生活を破壊して取り出した木材が流通しているのだ。しかし、偽の合法証明書が発行されたり産地を書き換えて出荷されることが多い。

だが、違法に伐られた木で自分の家を建てたり、違法伐採で森林を破壊した家具を欲しくはないだろう。仮に違法でなくても、美しい天然林を破壊して出荷されたような木材は使いたくない。むしろ豊かな環境で育まれた木であることを聞いて、使うと気持ちよくなる木製品であってほしい。現状では、それらの伐採事情まで情報開示を求めても、なかなか得られない。

しかし、もし自分の家をつくった木材が、豊かな森を破壊し、そこに暮らしていた先住民を苦しめていると知ったら、やはり「騙された」と思うのではなかろうか。

食材擬装に怒る消費者が、次に木材に怒りを向けないよう、業界上げて取り組むべき課題である。