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中川翔子さんが家裁に「名の変更許可」を申請~許可・不許可の分かれ目は?

竹内豊行政書士
中川翔子さんが家裁に「名の変更許可」を申請したことが話題になっています。(写真:アフロスポーツ)

中川翔子さんが、「しようこ」から「翔子」に変更する許可申請を家庭裁判所に届け出たことが話題となっています。私も中川さんの記事を基に名の変更に関する記事をアップしたところ多くの方にお読みいただきました。それだけ、名前について関心が高い方が大勢いらっしゃるということだと思います。

そこで、今回は、名の変更について、許可される条件と、具体的に許可されたケースと、反対に不許可になったケースをご紹介したいと思います。

名の変更は「戸籍法」による

命名された名前を自らの意思で変えたい場合はどうしたらよいのでしょうか。名の変更は戸籍法にしたがってなされます。戸籍法107条の2には名の変更について次のように規定しています。

戸籍法107条の2(氏名の変更)

正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

「正当な事由(理由)」が条件

条文に「正当な事由(理由)によって」と示されているとおり、「正当な事由」があることが名前の変更をするための条件とされています。このことは、「正当な事由」がなければ名前を変更することができないということを示しています。

「正当な理由」とは

判例は、名前の変更ついての「正当な事由」について次のように示しています。

(1)同姓同名の者があって社会生活上多大の差し支えをきたす者

(2)社会生活上著しい支障を生じる程度に珍奇ないしは著しい難解難読の文字を用いた場合等

「通称名」の使用を理由とする「正当な理由」とは

通称名(社会生活上使用している戸籍名とは違う名)への変更を希望している方は多いのではないでしょうか。

通称名の使用を理由として名の変更を許可されるものとして、判例は次のように示しています。

その(通称名の)使用が永年にわたり、そのため本人の交友関係、職務関係その他一般社会生活のあらゆる面において、通名が戸籍名にとって代わり、戸籍名ではかえって本人の同一性の識別に支障をきたすような程度に達した場合に限られる。

では、次に実際に名の変更が許可されたケースと不許可のケースをみてみましょう。

許可されたケース

営業上の目的から許可されたケース(襲名)

僧侶、神道教師、宗教に従事する者が、いわゆる俗名のままでは、布教伝道に上において支障があるとすれば、その名を適当な名に変更することは、社会通念からいって是認すべきである。

過去350年の永きにわたる父祖伝来の家業について、歴代の当主が本件申立(名の変更の申立)にかかる名を襲名しており、得意先に対する営業広告にもその氏名の者が経営を統括することを明記し、それによって会社の信用の維持・拡大を計っており、また、取引先と認められる25の商店、会社等がいずれもその伝統と特色を持ち続けることを望み、その上に取引の信用が成り立っている等の事情のもとにおいては名を変更する正当な事由がある。

「珍名」から許可されたケース

珍名による許可の具体例をご紹介します。これを見ると、「社会生活上著しい支障」があるとさすがに推測できます。

・ウン子→多喜子

・メシ→松枝

・ウカツ→カツ

・たこ→たくよ

許可されなかった(不許可)のケース

社会生活上著しい支障があるとは認められない

戸籍上の氏名と同姓同名があるなどなんら特別の事情の見えないかぎり、ただ永年通名を用いているというだけでは右通名を戸籍名にしなければ、社会生活上著しい支障があるとは到底考えられないから、本条の正当事由に該当しない。

姓名判断・使用期間が短い

姓名判断に基づいて、名を変更することはいわゆる正当な事由に該当しないものと解するのが相当であり、しかも、通称を使用した期間がわずかに6年に過ぎない場合には、正当な事由があるとは認められない。

いかがでしょうか。ご覧いただいた通り、名の変更には「正当な事由」があることが条件となります。ただし、何が正当な条件かと言われれば、個別のケースによって判断されるとしか言いようがないところもあります。もし、ご自身が名の変更について「正当な事由がある」とお考えなら、専門家や家庭裁判所に相談してみるのもよいかもしれませんね。

※「氏」(姓)の変更については、中川翔子さんが家裁に「名の変更許可」を申請~「氏」(姓)の変更は「名」と比べて難しいのか?をご覧ください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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