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中川翔子さんが家裁に「名の変更の許可」を申請~どういった条件で名前は変更できるのか

竹内豊行政書士
中川翔子さんが「名の変更許可」を家庭裁判所に申請しました。(写真:2020 TIFF/アフロ)

タレントの中川翔子さんが家庭裁判所に名前の変更許可を申請したとご自身のYouTubeチャンネルで報告ことが報道されています。この記事の中で、中川さんは「しようこ」という名前で支障があることを次のように語っています。

ローマ字表記で「SHIYOUKO」と記され、そのたびに「SHOKO」と訂正するのが面倒だったことなどを説明しつつ、「よし、休みだ行こうってことで裁判所まで行ってきました」と改名の申請を行ったことを明かした。

引用:中川翔子、改名を発表「裁判所まで行ってきました」 免許証公開時に予想外な本名が話題

中川さんのように名前で社会生活上支障がある方もいらっしゃると思います。そこで、今回は「名の変更」について見てみたいと思います。

命名

まず、「命名」について見てみましょう。名は氏(姓)と結合して個人を識別し、その同一性を示すものです。そして、出生した子の名は命名行為によって決まります。

命名の規定がない

実は、民法には命名行為について規定がありません。戸籍法は、父母その他を出生届出義務者と規定するので(戸籍法52・56条)、事実上、この義務者が命名したものが、その子の名となります。

戸籍法52条(出生)

1嫡出子出生の届出は、父又は母がこれをし、子の出生前に父母が離婚をした場合には、母がこれをしなければならない。

2嫡出でない子の出生の届出は、母がこれをしなければならない。

3前二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、左の者は、その順序に従つて、届出をしなければならない。

第一 同居者

第二 出産に立ち会つた医師、助産師又はその他の者

4第一項又は第二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、その者以外の法定代理人も、届出をすることができる。

戸籍法56条(出生)

病院、刑事施設その他の公設所で出生があつた場合に、父母が共に届出をすることができないときは、公設所の長又は管理人が、届出をしなければならない。

命名権の濫用

以上ご紹介したとおり、事実上、命名の自由が認められています。しかし、いくら命名の自由が認められるからといっても、命名権の濫用(民法1条3項)にあたるような場合、たとえば、社会通念上明らかに名として不適切と見られたり、一般常識から著しく逸脱している場合、または名の持つ本来の機能を著しく損なうような場合には、市町村長は審査権を発動し、名前の受理を拒否することも許されます(東京家八王子支審平6.1.31~父親が子に「悪魔」と命名した事例)。

民法1条(基本事項)

1私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3権利の濫用は、これを許さない。

名の変更

では、命名された名前を自らの意思で変えたい場合はどうしたらよいのでしょうか。戸籍法によれば、名の変更については、「正当な事由」があれば、家庭裁判所の許可を得て変更することができます(戸籍法107条の2)。

戸籍法107条の2(氏名の変更)

正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

「正当な事由」とは

正当な事由とは、名が珍名・卑猥・難解などの理由で、名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合通称名として定着している場合などが挙げられます。そして、単なる個人的趣味、感情、信仰上の希望等のみでは足りないとされています。

中川さんは冒頭でご紹介したとおり、「しようこ」という名前で社会生活上支障を来すことがあり、なおかつ「翔子」という通称名が定着しているので家庭裁判所は受理したと思われます。

名の変更許可の方法

このように、正当な事由によって、戸籍の名を変更するには、家庭裁判所の許可が必要です。そして、許可を申請するには次のように行ないます。

申立人

名の変更をしようとする者(15歳未満のときは、その法定代理人が代理します)

申立先

申立人の住所地の家庭裁判所

申立てに必要な費用

収入印紙800円分と連絡用の郵便切手

その他、申立てに必要な書類等は、裁判所ホームページをご参照ください。

名前は原則として一生付き合っていくことになります。名付ける者(そのほとんどが親)は、子の将来まで見据えて選定することが必要ではないでしょうか。

そして、付けられた名前が生きていくうえで支障になるようであれば、今回ご紹介したとおり、法は変更できる道を用意しています。名前についてお悩みの方は、名前の変更を検討するのもよいと思います。

※「氏」(姓)の変更については、中川翔子さんが家裁に「名の変更許可」を申請~「氏」(姓)の変更は「名」と比べて難しいのか?をご覧ください。

※名の変更についてさらに知りたい方は、「中川翔子さんが家裁に名の変更許可を申請~許可・不許可の分かれ目は?」をご覧ください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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