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1月11日 新成人122万人誕生~成人で何が変わるのか 来年「18歳成人」誕生

竹内豊行政書士
コロナ禍の中、122万人の新成人が誕生します。(提供:kagehito.mujirushi/イメージマート)

コロナ禍の中、1月11日(月)に成人の日を迎えます。総務省統計局によると、前年比3万人減の122万人(男性63万人、女性59万人)の新成人が誕生します。そこで、今回は、成人になると法的に何が変わるのか、また、「成人の日」とはどのような日なのかを「18歳成人」の紹介を交えて考えてみたいと思います。

成人年齢はなぜ20歳なのか

そもそも、成人年齢はなぜ20歳なのでしょうか。

江戸時代は地域によってばらつきがあったようです。明治9(1876)年の太政官布告によって、日本で初めて成人年齢を20歳と定められました。その太政官布告を引き続いで明治29(1896)年制定の民法(明治29年法律第89号)は、「成人は20歳」としました。

20歳とした理由は定かではありませんが、当時の日本人の平均寿命や精神的な成熟度などを考慮した結果が理由の一つと考えられます。

成人になるとは

民法は、出生の日から起算して満20歳に達した者を成年としています(民法4条)。

民法4条(成年)

年齢20歳をもって、成年とする。

未成年者は、単独で契約ができないという不自由はありましたが、その反面、親の下で守られていたといえます。一方、成年者になると、単独で契約ができるようになりますが、親の保護はなくなります。つまり、「責任が重くなる」ということです。

具体的には次のようなことが単独で行なうことがでるようになます。

・携帯電話、クレジットカード、ローン等の契約

・民事裁判

・雇用契約の締結 など

成人年齢に関わる主な法律

未成年と成人に関わる主な法律をご紹介します。

・未成年者取消権(未成年者が親権者等の法定代理人の同意を得ずに締結した契約は、事業者の行為の不当性の有無にかかわらず、取り消すことができる権利)の対象から外れる(消費者契約法)

・喫煙できる(未成年者喫煙禁止法)

・酒類を飲酒できる(未成年者飲酒禁止法)

・馬券を購入できる(馬券法)

・車券を購入できる(自転車競技法・小型自動車競技法)

・舟券を購入できる(モーターボート競走法)

・水先人を養成する講師になれる(水先法)

・社会福祉主事になれる(社会福祉法)

・海技免許取得のための講師になれる(船舶職員及び小型船舶操縦者法)

・有効期間10年のパスポートを取得できる(旅券法)

・電子通信移行講習の講師になれる(船舶安全法)

・性別の変更を裁判所に申し立てることができる(性同一障害特例法)

・重国籍を持った時点で、20歳未満の者は22歳になるまで、20歳以上の場合は2年以内にいずれかの国籍を選択する(国籍法)

「18歳成人」~140年ぶりに成年年齢が18歳に引下げられる

2018年(平成30年)6月に民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立しました。

これにより、前記の民法4条は次のように改正されます。

民法4条(成年)

年齢18歳をもって、成年とする。

この改正法は来年2022年4月1日から施行されます。

20歳以上から変わらないもの(20歳を維持するもの)

ただし、次の法律に関しては「18歳成人」が施行されても、「20歳」以上に適用することを維持します。

・養子をとることができる(民法)

・飲酒・喫煙(未成年者飲酒禁止法・未成年者喫煙禁止法)

・馬券、車券、船券(公営ギャンブル)の購入(競馬法・自転車競技法・モーターボート競技法)

成年年齢の見直しは、冒頭にご紹介した明治9年の太政官布告以来、実に約140年ぶりです。この改正は、18歳、19歳の若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するものと考えられます。

成人式の中止相次ぐ

新型コロナの感染拡大を受けて成人式の中止を発表する自治体が相次いでいます。成人のスタートからこのような不運に見舞われて落胆している新成人も大勢いると思います。

そんな新成人をサポートするのが私たち大人の役割だと思います。国民の祝日に関する法律(祝日法)は第2条で次のように「成人の日」を定義しています。

「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を国民こぞって祝いはげます日」

成人の日には、この言葉のとおり、静かに心を込めて新成人の門出を祈りたいと思います。その祈りが、「18歳成人」の民法改正の趣旨である、「社会を活力あるものにする」ことにつながるのではないでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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