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1年の計は元旦にあり~コロナ禍で活きる「行政書士」という資格

竹内豊行政書士
「1年の計は元旦にあり」行政書士試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

「1年の計は元旦にあり」という諺があるように、今年1年の目標を考えている方もいらっしゃると思います。中には、「資格にチャレンジしてみよう」という方もいるのではないでしょうか。

行政書士は法律系の国家資格を目指す方にとっては、受験候補の上位に挙がる資格のようですが、実際のところその実体が分かりにくい点もあることも事実です。

そこで、行政書士の業務等をご紹介したいと思います。コロナ禍で先行き不透明な状況下で、行政書士の資格を取得しておくと人生設計の一つの選択肢として活かせる場合もあります。

では、本題に入りましょう。

広範囲に及ぶ業務範囲~セカンドキャリアを活かす可能性を秘めている資格

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、次の書類を作成することを業とします(行政書士法1条の2第1項)。

➀官公署に提出する書類

②権利義務に関する書類

③事実証明に関する書類

これらの業務は、他の法律において制限されているものを除いて、行政書士の独占業務とされており、行政書士でない者が業としておこなうことはできないとされています(行政書士法19条第1項)。

その他、独占業務ではありませんが、行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を代理人として官公署に提出できたり、契約書その他に関する書類を代理人として作成することができます。加えて、これらの書類の作成について相談に応ずることができます。

このように、一定の制限はあるものの、行政書士の業務範囲は広範囲におよびます。そのため、自分が培ってきた「実績」を活かして行政書士業務とすることも可能な場合も少なくありません。セカンドキャリアを活かす可能を秘めている資格といえるでしょう。

行政書士の登録状況

では、行政書士の実態を知るために、登録状況をみてみることにしましょう。

行政書士となるには、行政書士試験に合格する等、一定の資格を取得した上で、日本行政書士会連合会に備える行政書士名簿に登録を受けなければなりません(行政書士法6条)。

総務省が日本行政書士会連合会に対して調査を行った結果、平成30年度の行政書士の新規登録、登録抹消者等の状況は次のとおりです。

登録者の全国的状況~18年連続で増加

全国の登録者総数は、平成30年度末現在で47,901名であり、平成30年度当初の登録者数(46,915名)から、986名の増加となりました。

対前年伸率は、2.1%の増加であり、18年連続で増加し、過去最高を更新しました

10年前の登録者数の状況との比較~20%アップ

平成31年4月1日現在の登録者数を10年前の平成21年4月1日と比較すると、登録者数は、8,055名増、率にして20.2%増加しています。

資格別の登録者数の状況~試験合格者が7割を占める

行政書士となる資格別の状況をみると、平成30年度末現在では、行政書士試験合格者が34,164名(71.3%)で最も多く、次いで行政事務経験者が8,489名(17.7%)となっています。

新規登録者数

平成30年度中の新規登録者数は、全国で2,672名であり、前年度(2,385名)より287名の増加となりました。

登録抹消者数

平成30年度の登録抹消者数は、1,686名となっており、前年度(1,675名)より微増しました。抹消理由別にみると、廃業が1,399名(83.0%)、死亡が278名(16.5%)等となっています。

廃業者を登録時の資格別にみると、行政書士試験合格者の廃業が1,016名、行政事務経験者の廃業が457名となっています。

令和元年度行政書士試験の実施結果

令和元年度行政書士試験は、令和元年11月10日に、指定試験機関である一般社団法人行政書士試験研究センターにより、各都道府県において実施されました。

受験申込者数及び受験者数

全国の受験申込者数は、52,386名であり、前年度と比較すると、1,460名増、率にして2.9%の増加となりました。

また、全国の受験者数は、39,821名であり、前年度と比較すると716名増、率にして1.8%の増加となりました。

合格者数及び合格率

全国の合格者は4,571名であり、前年度と比較すると397名減少しました。

なお、令和2年度の試験結果は、今月1月27日(水)、一般財団法人行政書士試験研究センターのホームページで発表されます。

短期決戦型の資格

行政書士試験の受験資格には年齢、学歴等の制限は一切ありません。また、やるべきことを効果的に行えば短期間の受験期間で合格も可能です。とはいえ、10%前後の合格率ということは、90%は不合格ということです。そう簡単に合格できないことも事実です。

70周年を迎える行政書士制度~時代に柔軟に対応して生き抜いてきた歴史

行政書士制度は、昭和26年2月22日に行政書士法が交付されてから、今年2月22日に70周年を迎えます。その間、コロナ禍の終息がなかなか見えない状況下において、新型コロナ感染症対策の無料相談を実施するなど、活動のフィールドをその時代と共に柔軟に対応してきました。今後も、「広範な業務範囲」を活かして時代に寄り添いながら国民の利便性向上に資するために生き抜いていくでしょう。

自分の「実績」を活かせる資格

そして、コロナ禍で人生設計の見通しが見えにくい状況下で、冒頭にご紹介した「広範な業務範囲」を利用して、「自分の実績」や「好きなこと」「興味のあること」等を行政書士業務として仕事ができる可能性も秘めた資格です。

開業には周到な「準備」を

行政書士試験の内容は、その広範囲な業務内容のためか、試験内容と実務内容の関連性がほとんどないのが現実です。そのため、試験合格後から開業までの準備を周到に行うことが大事です。

「資格を取ればなんとかなる」というようには、そうは絶対に問屋は卸しませんので念のため。

「1年の計は元旦にあり」です。もし、行政書士に興味がわいた方は、令和3年度の行政書士試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

参考・引用:『地方行政・872号』(ぎょうせい)~「行政書士に関する実態調査及び令和元年度行政書士試験結果について」

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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