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2020年「家族法」5大ニュース~「改正相続法」「お一人様相続」「18歳成人」「不倫」「遺言書保管」

竹内豊行政書士
「家族法」をテーマに2020年を振り返ります。(写真:アフロ)

2020年も「家族法で人生を乗り切る」をテーマに書いてきました。多くの方に読んでいただきこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

そこで、この1年間をアクセス数上位の記事の中から、私の独断と偏見で5つピックアップしてみました。いずれも人生の“落し穴”を回避するために知っておきたい内容です。ぜひご覧ください。

第1位 「改正相続」が全面スタート

相続の形をガラッと変える改正相続法(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律)が2018年(平成30年)7月6日に成立し、同年7月13日公布されました。

相続法は、1980年(昭和55年)に改正されて以降、大きな改正は行われていませんでしたが、高齢化の進展など社会環境の変化に対応するため、約40年ぶりに大きな見直しが行われました。

改正相続法は、2019年(平成31年)1月13日の自筆証書遺言の方式緩和を皮切りにスタートし、今年4月1日に配偶者の居住の権利(配偶者居住権・配偶者短期居住権)が施行され、全面スタートとなりました。

相続はこの世に生まれたからには、好む好まざるを関係なく、逃れることはできません。「知りません」では済まされないこともあります。基本的なことは押さえておきましょう。

改正相続法については、4月1日に「相続」がガラッと変わる!~「知りません」では済まされない、改正相続法「3つ」の特徴をご覧ください。

第2位 「お一人様」の相続

相続は「金」と「血」に加えて「法律」が絡む厄介なものです。それに拍車をかけるのが、両親が既に死亡していて配偶者も子もいない「お一人様」の相続です。

お一人様の相続は、兄弟姉妹やおい・めいなど、被相続人(死亡者)と生前関係が薄い人が相続人となることが多く、そのため遺産分けの協議が難航するケースが少なくありません。

今後、お一人様の相続は増加することが予測されます。お一人様の方で、ご自身の相続を厄介にしたくない方は、遺言を残すことを検討してみてはいかがでしょうか。

お一人様の相続については、「お一人様」の相続が厄介になる「2つ」の理由~その「防止策」と「注意点」をご覧ください。

第3位 「18歳成人」問題

今年の1月13日は令和で初めての成人の日でした。総務省統計局によると、約122万人の新成人が誕生しました。

ところで、2018年(平成30年)6月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立しました。これにより、2022年4月1日から「18歳」になれば成人となります。このように成人年齢が変わるのは実に140年振りとなります。当然、法律関係のみならず、ビジネス等への社会的影響も大きなものになること間違いありません。

「18歳成人」については、1月13日成人の日~新成人122万人誕生、成人年齢なぜ20歳、皇族は18歳で成人、成人18歳問題をご覧ください。

第4位 不倫

昨年に続き、今年も不倫のニュースは数多くありました。私も何本か不倫に関する記事を書きましたが、その中でも多く読まれたのがこの記事です。

何をすれば「不倫」となるのか~「妻がドアをすぐに開けなった・・・」裁判例で考えてみる

この記事で、どういう行為が不倫、すなわち「不貞行為」に該当するかを判例を交えて解説しましたが、関心が高い方が多くいたようです。しかし、不倫の代償は大きいのは皆さんご存知のとおりです。当然ですが、しないに越したことはありません。

第5位 「遺言書保管法」スタート

今年、7月10日から、遺言書保管法がスタートしました。これにより、今まで自分で書いた遺言書(自筆証書遺言)は、自らの責任の下で管理しなければならなりませんでしたが、申請をすれば遺言書保管所(法務局)で保管することができるようになりました。この制度を利用すれば高い確率で「遺言の内容の実現」が可能になります。

私自身が自ら遺言を残してこの制度を活用したことを記事にしたので、関心がある方はぜひお読みください。

潜入ルポ「遺言書保管法」~7月10日午前9時 日本一早く、法務局に「遺言書」の保管を申請してきた

番外編 「行政書士試験」申込者数 過去5年で最高

令和2年度の行政書士試験の申込者数が、過去5年で最高の5万4847人にのぼりました。行政書士は業務範囲が広い割に、「やることをやれば」短期間で合格可能な「お徳」な法律系国家資格です。興味のある方は来年11月の試験にチャレンジしてみてください。

行政書士に関する記事をご紹介します。興味のある方はぜひご覧ください。

「コロナ禍」も影響か 令和2年度「行政書士試験」申込者 過去5年最高 5万4847人

行政書士試験 締切り迫る!~「コロナ後」「定年後」に自分を活かせる資格

その他にもコロナ禍の中、「コロナ離婚」など家族のつながりに危機感をおよぼす言葉も流行りました。2021年もコロナ禍は続きそうですが、コロナ禍をきっかけに、家族の大切さに気付いて「コロナ結婚」という言葉が流行るといいですね。

では、この1年間、ありがとうございました。2021年も「家族法で人生を乗り切る」をテーマに皆さまに「読んでおいてよかった」という記事をご提供いたします。来年が皆さまにとって素晴らしい年になることを心からお祈りいたします。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『親に気持ちよく遺言書を準備してもらう本』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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