「三浦春馬さん」の「遺産相続」が長期化か~遺産分けが長期化する3つのケース、「コロナ禍」も影響か
今年7月にお亡くなりになった三浦春馬さんの遺産相続について、親族の間で調整が長期化する可能性があるという記事が掲載されました。
そこで今回は、遺産分けが長期化するケースをご紹介します。遺産分けが長期化すると心身に悪影響をおよぼす場合もあります。ぜひお読みいただいて「遺産分けの長期化回避」にお役立てください。
人が死亡すると財産はどうなるのか
人が死亡するとあの世まで財産を持っていくことは当然ですができません。そこで、財産の承継が行われます。この財産の承継は、遺言がある場合とない場合で大きく異なります。
遺言がある場合
相続は人の死亡を原因として開始します(民法882条)。被相続人(亡くなった人)が、遺言を残していた場合、遺言は遺言者の死亡のときから効力を生じるので(民法985条1項)、遺言の内容のとおりに遺産が受遺者に移転します。そして、遺言の内容のとおりに財産が受遺者に移転させる手続き(動産の相続登記や預貯金の払戻し手続等)が行われます。この遺言に基づく財産の移転手続きを遺言執行といいます。
被相続人が法的に完備された遺言を残していれば、比較的遺言執行は速やかに行われます。一方、法的に不備がある遺言を残してしまった場合は、遺言の真贋や法的解釈等をめぐり相続人や受遺者等で争うこともあります。
遺言を残す場合は、法的に完備された遺言、すなわち速やかに遺言の内容が実現できるものを残すことが肝要です。
遺言がない場合
一方、被相続人が遺言を残していない場合、被相続人の財産は、死亡の瞬間に法律で定められた相続人(法定相続人)に、法律で定められた割合(法定相続分)で移転して、相続人による遺産の共有が始まります。
共有財産は、たとえば売却する場合に共有している者全員の合意が必要になるなど不便を来します。そのため、通常、相続人全員で、具体的にだれが何をどれだけ取得するかを話し合いで決めます。この話し合いのことを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議が長期化する3つのケース
遺産分割協議は原則として相続人全員が協議して、遺産の取得の内容に合意しないと成立することができません。つまり、多数決で決めることはできません。したがって、協議が困難な状況下では長期化する可能性が高くなります。協議が長期化するおそれがあるケースとして次のような
ケース1 被相続人が「離婚・再婚」をしていた場合
この場合、被相続人が前婚のときに子をもうけていると、前婚の子と、再婚後の配偶者と再婚後に子をもうけていればその子も含めて遺産分割協議を行います。一般的に、前婚のときの子と再婚後の配偶者等は、交流がないので、話し合いが長期化する傾向があります。
ケース2 相続人が「離婚」している場合
被相続人が配偶者も子もなく死亡した場合、相続人は被相続人の親になります。その親同士が離婚している場合、一般的に交流もなく、しかも互いに対して心証がよくないため、話し合いが長期化する傾向にあります。
なお、前掲の記事によると、相続人である実母と実父は離婚されているようです。しかも三浦さんは突然お亡くなりになられました。これらを考慮すると、速やかに協議が成立する環境とは言い難く、そのため協議成立まで時間を要する可能性が高いと考えられます。
ケース3 「代襲相続人」が発生する場合
両親が既に死亡していて、配偶者も子もない場合、兄弟姉妹が相続人になります。その兄弟姉妹の中に被相続人の死亡以前に死亡している者がいる場合、死亡している兄弟姉妹に子がいればその子(つまり、被相続人の甥・姪)が相続人になります。この甥・姪を代襲相続人といいます(民法887条2項・889条2項)。代襲相続人が発生するケースでは、一般的に交流がほとんどない相続人が多数になります。その結果、話し合いが長期化する傾向にあります。
「コロナ禍」が長期化に影響する可能性も
コロナ禍により、濃厚接触が困難な状況下では、対面で相続人同士が協議するのが難しくなっています。遺産分割協議は遺産分けという相当重要でしかも法律も絡む話し合いのため、「リモートでササッと済ませましょう」という訳にはなかなかいかないでしょう。そうなると必然的に長期化するおそれがあります。
遺産分割協議を円満かつ早期に成立させるためには、相続人間の円滑なコミュニケーションがポイントになります。もし、ご自身のいつかは訪れる相続が、相続人間の円滑なコミュニケーションが難しいと思われる方は、遺言を残すことを検討してみてはいかがでしょうか。
「遺言を残してみよう!」と思った方は、「絶対」に残してはいけない遺言~「年末」までに「遺言」を残したい人が知っておくべきことをご参照ください。