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アンジャ渡部建さんに学ぶ 「不倫」がバッシングされる理由とその先に待ち受けていること。

竹内豊行政書士
「不倫」をするとバッシングされる理由とその先に待ち受けていることを解説します。(写真:アフロ)

お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建さんが、「週刊文春」から複数の女性との不倫について取材を申し入れたところ、6月9日、渡部さん本人が所属事務所を通じて、謝罪のコメントを出されました。

「ご指摘の女性と関係をもってしまったことは私の不徳の致すところであり、家族を深く傷つけ、また応援をしてくださる皆様に対し多大なご迷惑をおかけしたと大変反省しております。妻にも説明し、謝罪しました。誠に申し訳ありませんでした」

出典:アンジャッシュ渡部建 複数女性との不倫認める

そもそも不倫は当事者とその家族の問題です。しかし、一般的には、世間から非難を浴びたり場合によっては仕事にも影響をおよぼすこともあります。

今回は、不倫をするとなぜ世間からバッシングされてしまったり、仕事に影響をおよぼすのか考えてみたいと思います。

「不倫」とは

一般に、不倫とは、結婚(婚姻)をして配偶者がある者が、配偶者以外の者と性的な結合をすることをいいます。平たく言えば、夫が妻以外の者と肉体関係を持つ、反対に妻が夫以外の者と肉体関係を持つということです。

「不倫禁止条文」はない

実は、民法には、「婚姻をして、配偶者がいる者は不倫をしてはならない。」といった、不倫を直接禁止する条文はありません。しかし、次の3つの条文から「夫婦は互いに貞操義務(配偶者がいる者が、配偶者以外の者と性的結合をしてはいけないこと)を負う」という不倫禁止が導き出されます。

1.重婚の禁止(民法732条)

配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができません(民法732条)。配偶者とは、婚姻によって結合した男女、すなわち夫と妻をいいます。内縁の夫婦や愛人は配偶者ではありません。

民法732条(重婚の禁止)

配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

本条は、婚姻が一夫一婦制の結合をその本質とすることを定めるものです。なお、これに反して重婚が生じると、後婚はとりけされうるものになります(民法744条)。

2.同居協力扶養義務(民法752条)

民法は、夫婦に、同居し、互いに協力し扶助しなければならないと義務付けています(民法752条)

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

夫婦は精神的・肉体的・経済的な共同体を形成することになるので、一般に法制度としての婚姻制度には、本条のように夫婦に共同体の維持・継続に努める義務があるとの規定が用意されることになります。

3.不貞行為が離婚原因となる(民法770条1項1号)

民法は、不貞行為を離婚原因として規定しています。

民法770条(裁判上の離婚)

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

判例(最高裁昭和48年11月15日)は、不貞行為とは、「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこという」とし、「自由意思にもとづく姦通」に限定しています。

以上3つの条文から、夫婦は互いに貞操を守る義務を負うことが導き出されます。民法はこのことを積極的に規定はしていませんが、このことは婚姻の本質から生まれる当然の義務だからと考えられます。

不倫をするとバッシングされる理由とその先に待ち受けていること

このように、貞操を守る、すなわち「婚姻をすれば、配偶者以外の者と性的関係を持たない」ということは「婚姻の本質」と考えられています。したがって、貞操義務に反して不倫をすることは「婚姻の本質」を破る行為となり、倫理的な問題に関連付けられる傾向があります。

そのため、当事者同士で方(かた)を付けることができても、大切な家庭を失ってしまったり、世間から非難を浴びて仕事にも支障が生ずることもあるのです。

渡部さん所属の事務所は、民放各局にレギュラー番組の出演自粛を申し出たことを認めました。また、渡部さんが妻の佐々木希さんと夫婦共演したロッテ「キシリトール」のCMが公式ウエブサイトから削除されてしまったそうです(渡部出演のロッテ「キシリトール」、公式サイトから削除…佐々木希と初CM共演で話題)このように不倫は多大な代償を伴うことがあります。配偶者がいらっしゃる方は、万一不倫の誘惑にかられたときは、そのことをくれぐれも忘れないでおいてください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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