事実婚で「指輪」といっしょに交わしたいもの

事実婚を選択したパートナーに指輪の他に交わしてほしいものがあります。(写真:アフロ)

ブロガー・作家として活躍されているはあちゅうさんが7月15日にツイッターで事実婚をされたことを発表しました。

その直後から、事実婚と婚姻(結婚)の違いについてマスコミ等で話題になっています。

事実婚が増える背景

事実婚が増えている背景はいくつか考えられますが、女性の社会進出と経済的自立が大きく影響していると思います。

ただし、事実婚では、婚姻届を届出ているカップルと比べて様々な法的保護を享受できないことも事実です。

法律上の夫婦関係ではない

民法の規定では、「婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効果を生ずる」(民法739条1項)とされています。

事実婚は、自分たちの主体的な意思で婚姻届を出さない共同生活を選択したため、「法律上の夫婦」ではありません。

近代的な法制度では、家族の基礎となる婚姻を法の規制と保護の対象とし、婚姻外の関係については、法的規制もしない代わりに法的保護もしないという立場をとます。

法律上の夫婦に認められて事実婚のパートナーには認められないもの

法律上の夫婦は保護されるが、事実婚を選択したパートナーには認められないことの一つに相続権があります。

婚姻関係の夫婦は、お互い「配偶者」として2分の1の相続分があります。婚姻関係にあれば、婚姻関係が破綻して「仮面夫婦」であろうが長期間別居をしてようが相続権はあります。実際に、婚姻関係が破綻していても、配偶者の相続が発生すること(つまり、配偶者の死亡)を期待して離婚しない人もいます。

一方、事実婚を選択したパートナーは、いくら仲良く暮らしていても相続権はありません。したがって、パートナーが死亡した場合、遺産を受け取る権利はありません。つまり、相続権はゼロです。

たとえば、死亡したパートナーの親が存命の場合、親が相続人としてパートナーの遺産を引き継ぎます。親が既に死亡していて兄弟姉妹がいる場合は兄弟姉妹が遺産を引き継ぎます。

もし、男性パートナーとの間に子どもをもうけていれば、その子どもが遺産を引き継ぎます(ただし、認知をすることが条件となる)。

改正相続法でも保護の対象外

今月、約40年ぶりに改正された相続法は、残された配偶者(夫が先に死亡した妻を想定)の保護を目的に「配偶者短期居住権」と「配偶者所有権」を設けました。

また、結婚20年以上の夫婦なら、配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた住居は「遺産とみなさない」という意思表示があったとして、遺産分割の計算対象から除外するなど、婚姻20年以上の夫婦に優遇策を設けました。

さらに、相続の不公平感の是正を目的として、相続権のない6親等以内の親族(いとこの孫ら)以内の血族と、3親等(めいやおい)以内の配偶者が介護などに尽力した場合、相続人に金銭を請求できる制度を設けました。 これにより、たとえば、義父を介護してきた「息子の妻」などが請求できるようになります。

ただし、以上の制度は事実婚や内縁など、戸籍上の夫婦でない人は対象外です。

パートナーを守る盾~遺言

このように、事実婚を選択した場合、お互いに相続権は発生しません。事実婚で共同生活を行っていけば、お互いの協力によって財産を築くことも当然あるでしょう。それにも関わらず相続権がまったくないというのも理不尽のように感じます。

ただし、法は相続人以外の人に遺産を引き継ぐ術を用意しています。それが「遺言」です。

婚姻関係にある夫婦と比べて事実婚を選択したパートナーは法的保護がどうしても脆弱です。

大切なパートナーを守る盾として、また愛情の証しとして、たとえば「私の財産をすべて〇〇へ遺贈する」といった遺言をお互いに交わしてみてはいかがでしょうか。

前述の改正相続法では、自筆証書遺言の一部をパソコンで作成できるようにして遺言を作成しやすくしています。

なお、残念ながら別れてしまった場合は、「〇〇へ遺贈するとした遺言はすべて撤回する」としたうえで新たな遺言を作成することができます。念のため。