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知っておきたい「香典」の法知識~香典はだれのもの?正しい使い道は?トラブル防止はこうする!

竹内豊行政書士
「香典の正しい法知識」が香典トラブル防止のカギです。(写真:アフロ)

一般に、身内が亡くなって葬儀を執り行うと、列席者などから「香典」をいただきます。香典は現金です。お金の集まるところにトラブルは付き物。香典も例外ではありません。ましてや、相続も関係性があるとなればなおさらです。

たとえ金額的には高くなくても、相続人間の関係性がよくないと使途をめぐってもめごとになることもあります。

香典をめぐるトラブルを防止には、「香典の正しい法知識」の習得が大切です。

香典とは

香典は、一般に死者の霊に供える「香の代わりの金銭」ととらえられています。香典には、故人に供物を捧げる、喪家の金銭的負担を軽くするという意味が込められています。

香典の目的

一般的に、香典の目的は、「気持ちの側面」と「経済的な側面」の二つに分けることができます。

1.気持ちの側面

・亡くなった方(被相続人)への弔意(人の死を悲しみとむらう気持ち)

・遺族へのなぐさめ

2.経済的側面

葬儀費用など「遺族の経済的負担の軽減」のための、祭祀主宰者(喪主など先祖の祭祀を主宰すべき者)や遺族への贈与

香典の行方~香典は相続財産に含まれるか

実は、香典の取り扱いについては、法律で規定されていません。

ただし、上記香典の目的の「経済的側面」で見たように、香典は「遺族の経済的負担の軽減を目的とする祭祀主宰者や遺族への贈与」と考えられています。

この観点に立てば、香典は相続財産には含まれないと解されます。つまり、原則として遺産分割の対象にはならないということです。

香典の使い道

したがって、香典は祭祀主宰者が次のように使用するのが適切と考えられます。

1.まず葬儀費用に充当する。

2.そして、余りがあれば以後の四十九日等の供養・祭祀などに用いる

香典トラブルの回避方法

以上のように相続人全員が考えてくれればよいのですが、なかなかそうはいかない場合もあるようです。その理由は、「香典は現金」だからです。

祭祀主宰者は、香典の目的に照らして真っ当に使っても、相続人の中には次のような「疑惑の目」を向ける者もいないとも限りません。

・香典の総額が低すぎる(祭祀主宰者が着服したのではないか)

・どのような支出をしたかが分からない(使途不明)

このような「疑惑の目」を向けさせないのが香典をめぐるトラブルを防止する最善の策です。

そのために、収入(誰からいくらの香典をもらったのか)と支出(葬儀費用、香典返し等の領収書を添付)を可能な限り明確に記録した「出納帳」を残すべきです。

特に、次のようなケースでは必ず記録を残しておきましょう。

・相続人間の関係が思わしくない

・特定の相続人が事情により葬儀に出席できなかった

そして、「出納帳」を相続人に公開するか、公開しないまでも「香典はどうなったの?」と声が上がれば、いつでも見せられるように調えておきましょう。

亡くなった方への弔意と遺族へのなぐさめとして頂いた香典が相続人間のトラブルになってしまったらきっと亡くなった方も天国で悲しみます。

香典の目的と使い道をしっかり理解して適切に使うようにしましょう。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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