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岐阜県羽島市の旧本庁舎解体工事費4.7億円含む補正予算案が市議会で可決、保存活用は困難に

関口威人ジャーナリスト
岐阜県羽島市の旧本庁舎(右)と新庁舎(左)=12月11日、筆者撮影

 岐阜県羽島市議会は12月定例会最終日の22日、市役所旧本庁舎の解体工事費約4.7億円を含む予算関連議案を賛成多数で可決した。地元出身の建築家、坂倉準三(1901-1969)が手掛けた名作として保存活用を求める声が内外に残るが、市は議決を受けて解体の動きを本格化させる見通しだ。

市長に対する不信任決議案や修正議案は否決

 市は第三者委員会での審議を含めた5年余りの議論を受け、2022年12月に旧庁舎の解体方針を正式に決定していた。

 ただし、当初示されていた解体費用は約1.7億円で、今回出された金額はその3倍近くに膨らむものだとして一部の議員が反発。定例会初日に追加議案として提案したことも「議会軽視だ」と批判を招いていた。

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 この日、一部議員が旧本庁舎問題を含めた松井聡市長の市政運営を批判し、市長に対する不信任決議案を提出。しかし、市長を支持する自民党系議員を中心に反対多数で否決となった。

新庁舎の議場前のガラス越しに望める旧庁舎=12月11日、筆者撮影
新庁舎の議場前のガラス越しに望める旧庁舎=12月11日、筆者撮影

 解体工事費を債務負担行為として盛り込む一般会計補正予算案に対しては、工事費を除くよう修正を求める動議が提出されたが、出席議員数18人に対して賛成は6人にとどまり、反対10人で否決された。

 討論では「文化財や観光資源として本当の価値が埋もれている」として保存活用を探るべきだとする主張もあったが、「近くに中学校もあり、安全性を軽んじられない」として早期解体を求める意見も示された。

 市側は早ければ来年4月にも解体工事に着手するとしている。

ジャーナリスト

1973年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学)修了。中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で社会問題をはじめ環境や防災、科学技術などの諸問題を追い掛ける。2022年まで環境専門紙の編集長を10年間務めた。現在は一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」代表理事、サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」編集委員、NPO法人「震災リゲイン」理事など。

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