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2024年度の診療報酬改定。診療所もうけすぎ批判ある中、医療従事者の賃上げ実現必要。改定率は何%に?

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
2024年度診療報酬改定の改定率は、12月中旬には決まる(写真:アフロ)

2024年度診療報酬改定の議論が山場を迎えている。2024年度診療報酬改定の改定率は、12月中旬には決まる。

診療報酬改定は、2年に1度行われる。今年の診療報酬改定に向けた議論では、この四半世紀にはない、物価上昇下での報酬改定となっている。しかも、岸田文雄内閣が、賃上げ促進をうたっており、医療従事者もその例外ではない。

そんな中、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会が11月20日に、鈴木俊一財務大臣に手交した提言書「令和6年度予算の編成等に関する建議」では、診療所の経常利益率がコロナ禍でかなり高くなっていることを指摘した。

この建議を取りまとめる議論の過程で、財務省財務局が行った「機動的調査」で、全国の医療法人が提出している事業報告書等をほぼ悉皆的に分析したところ、診療所の経常利益率が2022年度に平均で8.8%にのぼっていることが明らかとなった。同じ2022年度の中小企業の経常利益率は、全産業平均で3.4%だったことと比べると、診療所は約5.5%も高いと指摘した。

そして、2024年度の診療報酬改定の改定率については、次のように提言した。

診療所の極めて良好な経営状況を踏まえ、診療所の報酬単価を引き下げること等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当である

出典:財政制度等審議会「令和6年度予算の編成等に関する建議」

上記の指摘は、「診療所はもうけすぎ」という印象で報道される場面もあった。

診療所は儲けすぎ? 病院や中小企業を上回る経常利益率8・8%、国民負担軽減へ提言(産経新聞)

これに対して、医療界からは反論が出された。多くは病院に勤務する医療従事者の処遇改善を求めつつ診療所の報酬単価を引き下げる、ということは、診療所と病院の利害が異なるところを突いて医療界を分断するかのような世論誘導と受け止められた面もある。医療界は、賃上げが求められる上に物価が高騰している現状を踏まえて、診療報酬はプラス改定が必須であるとの姿勢である。

では、12月中旬にも決まる予定の2024年度の診療報酬改定の改定率は、どうなるだろうか。それは、ある1つの指標をにらんで、それを上回るか下回るかというところが注目点となろう。その指標とは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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