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2022年度の国の決算で、使わずじまいの支出が11兆円余。これってどういうこと?

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
2022年度における国の決算び概要が発表。そこでわかったこととは。(写真:イメージマート)

2022年度における国の決算概要が発表され、使わずじまいの支出が11兆円を超えていたことが判明した。

2022年度における国の決算概要は、7月31日に公表された。2022年度における一般会計の歳入総額(収納済歳入額)は153兆7294億円(単位未満切捨、以下同様)、歳出総額(支出済歳出額)は132兆3855億円だった。

この歳出総額は、2022年度中に執行した支出である。これ以外にも、2022年度予算で支出が認められていたにもかかわらず、2022年度末までには使い切れなかったものがある。

まず、2023年度に繰り越すこととしたものが、17兆9528億円もある。加えて、使い切れずに、予算の効力として失って2022年度までに使わないこととした歳出の不用額が、11兆3084億円も発生した。歳出の不用額とは、冒頭で述べた、「使わずじまいの支出」である。

この歳出の不用額は、2017年度の1兆4358億円から5年連続で増加して、ついに2022年度には初めて10兆円を超えて史上最大となった。

なぜこれほどまでの歳出の不用額が出てしまったのか。結論から言えば、巨額の補正予算を組んだからである。

最終的な予算である第2次補正予算後の歳入歳出総額は139兆2195億円となった。そもそも、2022年度の一般会計当初予算の歳入歳出総額は107兆5964億円だったから、31兆6231億円もの予算の追加を、2次にわたる補正予算で行っていたことになる。

加えて、2022年度には2021年度からの歳出の繰越が22兆4272億円あった。だから、これを加えた歳出規模は、2022年度の補正後予算で161兆6468億円となっていた。

つまり、2022年度は、2021年度からの繰越が22兆円余もありながら、31兆円余の補正予算を組んでいたというわけである。161兆6468億円も使えたのだが、132兆3855億円しか使わなかった。こうして、11兆3084億円も使わずじまいとなった。

確かに、予算を組む段階では必要と思われていたけれども、実際には必要性がなくなってしまい、無駄に使い切ろうとしなかった、ということなら、不用としてよかったということになる。しかし、前年度から巨額の繰越がある上に、それをさらに上回る金額の補正予算を組んで、挙句の果てに年度末までに使いきれず、翌年度にまた巨額の繰越をした末の、10兆円を超える不用額である。

こんなに歳出が不用になるなら、最初から巨額の補正予算を組まなければよかったのだ。本当にそうした予算を計上することが必要なのか、もっと精査が必要である。

史上最多の11兆円もの不用額が出た2022年度決算だったが、実はあわや歳出の不用がもっと出るところでした。それというのも、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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