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内閣府「中長期試算」が様変わり!賃上げや財政健全化目標の達成見込みが注目されるが、何がどう変わったか

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
2025年度の財政健全化目標はどうなる?:内閣府「中長期の経済財政に関する試算」

7月25日に、内閣府が「中長期の経済財政に関する試算」(以下、「中長期試算」)の更新版を公表した。毎年1月頃と7月頃に2度公表されるのが恒例で、今回は今年の7月版(PDFファイル)として公表された。

今年の7月版は、それ以前と比べて様変わりした。

もちろん、試算方法には大きな変化はない。様変わりしたのは、体裁と公表内容である。

これまでは、詳しい解説は多くなく比較的淡々と試算結果を公表していた。ところが、今回の7月版では、解説のための図が増え、BOXというコラムも新設された。今後の経済成長率に影響を与える潜在成長率をどう見込むかについて、要因分解も図示しながら丁寧に説明している。

潜在成長率の内訳(出典:内閣府「中長期の経済財政に関する試算(2023年7月)」)
潜在成長率の内訳(出典:内閣府「中長期の経済財政に関する試算(2023年7月)」)

また、これまで公表されていなかった賃金上昇率も、この度初めて公表された。賃金上昇率の見込みは、わが国における今後の賃上げを占う意味でも重要だ。

「中長期試算」では、これまでにも今後の賃金上昇率が試算されていることは、他省庁が公表する指標から暗示されていた。例えば、5年に1度実施される厚生労働省の「年金の財政検証」は、これまでにも「中長期試算」の賃金上昇率を使用していることを明言していた。しかし、内閣府からは「中長期試算」の中で賃金上昇率が示されることはこれまでなかった。

そして、2025年度における国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス:PB)の黒字化という財政健全化目標が達成できるか否かを見極める上で重要な指標も、新たに公表された。それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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