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防衛費にこども予算。税や社会保険料の案が出される中、財源論議が沸騰する今夏

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
防衛財源とこども財源、この夏にどう決着がつくだろうか

4月23日に、統一地方選挙が終わり、封印されていた財源論議が解禁される。この夏は、防衛財源とこども財源をどのように賄うかを決めなければならないスケジュールとなっている。

そもそも、選挙で、財源論議を正面からしようとしないことは、民主主義のあり方としていかがなものだろうか。しかし、負担増の議論は不人気だから、各政党は選挙の時に避けたがる傾向は、今なお続いている。

さて、防衛費とこども予算の財源について、これから議論が沸騰することになるだろう。

防衛財源論議の行方

防衛財源については、法人税、所得税、たばこ税の増税で賄うことが既に閣議決定されている。しかし、実施時期が確定していない。その実施時期については、拙稿「防衛増税の実施前に衆議院解散。するといつ総選挙?」で詳述したように、最速では2023年夏に議論して秋の臨時国会で法改正を可決成立させるという可能性がある。

これを実現するためには、秋の臨時国会が召集される前、この夏まで与党で議論をして実施時期について確定する法案を準備しなければならない。今秋の臨時国会で法改正を可決成立できれば、2024年1月からの所得税やたばこ税の増税や、2024年4月からの法人税の増税が可能となるだろう。ただし、所得税は、復興特別所得税の一部を防衛財源に回すだけなので、厳密にいうと増税にはならない。

このように、防衛財源については、どのように増税するかではなく、いつから増税するかが議論の的となる。

こども財源論議の焦点

こども予算については、拙稿「少子化対策のたたき台は、本当のところどこが注目点か? 児童手当ばかりが焦点ではない」で詳述したように、今年6月にも取りまとめられる予定の「骨太方針」で、「将来的なこども予算倍増」に向けた大枠を提示するスケジュールとなっている。

焦点は、そのための財源をどう賄うか、である。今、主となる財源と注目されているのが、社会保険料である。こども予算の財源を社会保険料で賄うという案は、昨年からも水面下で取りざたされていた。拙稿「参議院選挙後に、『子ども保険』導入! 『骨太方針』に明記されていないが実現に向けたこれだけの前兆」で述べたところである。

しかし、財源論議が本格化する矢先、拙稿「『こども予算倍増』に必要な財源は、こども未来戦略会議でどう決まる」で詳述している通り、経済界や労働界からは、社会保険料よりも税で財源を賄う考えが出され始めており、社会保険料の負担増への拒否感が漂い始めている。

消費税の増税は行わないとした上に、社会保険料の負担増が受け入れられないとすると、こども予算の財源は不十分にしか賄えない。それでは、「将来的なこども予算倍増」すらおぼつかない。

では、こども予算の財源はきちんと工面できるのだろうか。ここにきて、急浮上してきたのが、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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