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年金給付は2022年度も減額。この先も、年金給付は減り続けるか?

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
2022年度の年金額は、2021年度より0.4%減となることが発表された(写真:イメージマート)

1月21日に、厚生労働省は、2022年度の年金額改定率を発表した。2022年度の年金額は、法律の規定に基づき、2021年度から0.4%引き下げることとなった。2021年度の年金額が2020年度と比べて0.1%引き下げられたのに続き、2年連続での減額である。

コロナ禍で現役世代の手取り賃金が平均的に下がっており、来年度の年金給付はそれを反映して減らすこととなった。これは、年金保険料を払う現役世代の負担を考慮している。

現役世代が払う年金保険料は、手取り賃金にほぼ比例して納められるが、その手取り賃金が減れば、それと連動して年金保険料収入も減る。年金財政から見て、年金保険料収入が減るのに、年金給付額をそのままにすると、収支が悪化する。

こうして時々の状況に合わせて受け取る年金額は毎年改定されており、前年度に比べていくらにするか見直して金額を決めている。その改定のことを、年金額改定と呼ぶ。

この年金額をいくらにするかという年金額改定率は、年金保険料を払う現役世代の平均的な手取り賃金の変化率(名目手取り賃金変動率)とマクロ経済スライド調整率の和で決めることを基本としている。

マクロ経済スライド調整率

名目手取り賃金変動率は、前述のように年金保険料収入の状況を反映させるためのものだが、これに加えてもうひとつ別な指標を反映して決まることとなっています。それが、マクロ経済スライド調整率である。

少子化によって将来の現役世代の人口が減るにつれて年金保険料収入が減るが、それに合わせて将来の年金の給付を減らすと、今年金保険料を支払う世代と、今年金を受け取る高齢世代との間で、年金給付水準の世代間格差が拡大する。

マクロ経済スライドは、それを防ぐためにも、今の高齢世代の給付水準を抑制することを意図している。つまり、世代間の格差を拡大させないように今の高齢世代の年金給付を抑える、という仕組みである。

マクロ経済スライド調整率は、大まかにいえば、年金保険料を払う現役世代の人口と年金給付を受ける高齢世代の人口の動きで決まる。若い人が減ったり、高齢者が長生きしたりすると、この調整率で年金額はより大きく減らされることになっている。

ただし、マクロ経済スライドが発動されるには、一定の条件を満たさないと発動されないことになっています。特に、名目手取り賃金変動率自体がマイナスの場合は、マクロ経済スライド調整自体を行わないというルールになっています。

では、2022年度の年金額改定において、マクロ経済スライドはどうなったか。それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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