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負けなし快進撃の日本代表を支える「ソウルフード」と、コロナを乗り越え4年ぶり復活の“おいしい関係”

竹田聡一郎スポーツライター
左から山口剛史、全農の山口文経広報・調査部次長、藤澤五月 (筆者撮影)

 カナダ・ケロウナで開催中のパンコンチネンタル選手権(以下PCCC)で男女日本代表が快進撃を見せている。

 女子代表のロコ・ソラーレは大会初日の29日(現地時間/以下同)、初戦のニュージーランドを9-4で破ると同日夜には開催国で優勝候補のカナダにも10-7と競り勝ち、連勝スタートを切る。30日のメキシコ戦は9-1、31日のチャイニーズ・タイペイ戦も10-1で快勝し、開幕からの連勝を4に伸ばした。

 男子代表のSC軽井沢クラブも29日の初戦、チャイニーズ・タイペイ戦を12-2で勝利。30日はガイアナを9-2、オーストラリアを11-6で下し3連勝。男女共に全勝で暫定ながら揃って予選1位に立っている。

 今大会は、新設された第一回の昨年大会(カナダ・カルガリー)のようなアリーナでの開催ではなく、「クラブリンク」と呼ばれる、日本代表2チームのホームリンクであるアドヴィックス常呂カーリングホールや軽井沢アイスパークのような会場で運営されている。これは前身大会に当たるパシフィックアジア選手権(以下PACC)から数えても7年ぶりだ。

 それでも藤澤五月が「こういうアイスだと事前に話していた予想内ではありました」、栁澤李空が「アイスの情報を多く集めながら自分たちのやりたいカーリングができている」とそれぞれ語ったように、アイスリーディングに手応えを感じながら試合を重ねているのが勝因のひとつだろう。

男子日本代表のSC軽井沢クラブ栁澤李空は「去年(のPCCC)は4連敗スタートだったから今年は大会の入りに気を使っていた」と話していた (筆者撮影)
男子日本代表のSC軽井沢クラブ栁澤李空は「去年(のPCCC)は4連敗スタートだったから今年は大会の入りに気を使っていた」と話していた (筆者撮影)

女子代表のロコ・ソラーレ藤澤はカナダ戦後「エイナーソン(カナダ代表)は間違いなく(プレーオフに)上がってくるのでまた対戦した時にいい試合ができるように準備したい」とコメント (筆者撮影)
女子代表のロコ・ソラーレ藤澤はカナダ戦後「エイナーソン(カナダ代表)は間違いなく(プレーオフに)上がってくるのでまた対戦した時にいい試合ができるように準備したい」とコメント (筆者撮影)

 しかし、実は両チームとも今季はこれまで、思ったような結果を得られていなかった。ロコ・ソラーレは8月のアドヴィックスカップ(北海道北見市)こそ5戦全勝で優勝したが、9月にカナダに渡航してから出場した4大会ではベスト8が最高位という戦績だ。

 SC軽井沢クラブも8月のどうぎんクラシック(北海道札幌市)と稚内みどりチャレンジカップ(北海道稚内市)で3位入賞しているが、カナダに渡航後の9月以降は出場した6大会のうちクオリファイ(プレーオフ進出)は2大会にとどまっている。

 それでも両チームは焦らずに強化を続けてきた。

 大会前に吉田知那美は「今季は基礎スキルの見直しをしていて、(投げ方などで)時には窮屈に感じることもあるけれど、今はチームとして勝ちやすい状態へ持っていく訓練の最中です」と話した。

 山口剛史も今季の目標を「世界ランキングトップ10に勝つこと。しっかり戦えるようになるために一歩ずつ進んでいるところです」とした上で「この(シーズン)前半でもトップ10のチームに勝った試合もあったし、負ける試合でも去年までのようにボコボコにされるわけではなく、惜しいゲームができている」と収穫を口にした。 

 両チーム共に、結果はまだ出ていなくとも、成長過程であることを実感している。言い換えればピーキングの感触を得ながら今大会を迎えたと解釈できる状態でもあった。

前列左より石崎琴美、吉田夕、鈴木夕湖、吉田知、藤澤(以上ロコ・ソラーレ)、後列左より臼井槙吾(KiT CURLING CLUB)、小泉聡、山本遵、山口、栁澤(以上SC軽井沢クラブ) (筆者撮影)
前列左より石崎琴美、吉田夕、鈴木夕湖、吉田知、藤澤(以上ロコ・ソラーレ)、後列左より臼井槙吾(KiT CURLING CLUB)、小泉聡、山本遵、山口、栁澤(以上SC軽井沢クラブ) (筆者撮影)

 そんな上向きの日本代表を後押しする援軍の存在もある。2010年から日本代表や日本選手権のオフィシャルスポンサーとしてカーリング競技と長らく伴走してきた、JA全農だ。

「アスリートの活躍を『ニッポンの食』で支える」をスローガンに、海外遠征時の際に和食で選手のサポートを続けているが、これは以前から海外での大会を中心に行われてきた。歴代の日本代表選手から好評を博した支援だったが、新型コロナウイルスの影響で2019年で中断。世界的なパンデミックにおいては精米や加工食品の提供にとどまっていたが、今大会から現地でのサポートが4年ぶりに復活した。

 具体的には開催都市ケロウナの人気アジアレストラン「SOY Asian Fusion Restaurant」と提携し、朝夕2回、岩手県産「銀河のしずく」を使用したおにぎりと副菜を試合会場やホテルにデリバリーしている。他にも「JAタウン」で購入できるフリーズドライの味噌汁や梅干し、グミ、ティーバッグ各種などを、チームからのリクエストに応える形で日本から運び提供した。

「カナダに来て2ヶ月が経って、このタイミングで和食が食べられるのは最高」と山口が喜べば、「海外でプレーしていると日本食のありがたさと共に、調達と準備の大切さと難しさを感じている中でのサポートは本当にパワーになる。特におにぎりは私たちのソウルフードですから、パワーをもらって最高のパフォーマンスができるように頑張っていきたい」と藤澤は感謝の言葉をつむいだ。

 また、鈴木夕湖と吉田夕梨花は「和牛しぐれ煮が好き」、JDリンドコーチは「I like ベニシャケ」具のバリエーションにも満足の笑顔を見せるなど、チームのメンタルにも好影響を与えている。

「日本のお米で作った美味しいおにぎりをたくさん食べてエネルギーをチャージしているおかげで、ゲームを通して集中力とパワーを切らすことなくプレー出来ています。これからもしっかり食べて熱く熱くファイヤーなプレーを続けます!」(山口)

他にもおにぎりの具は本文登場以外にも梅干し、ちりめん、鶏五目ほか10種類に及ぶ。付け合わせの漬物も「海外ではなかなか手に入らない」と選手に好評だ (提供:全農)
他にもおにぎりの具は本文登場以外にも梅干し、ちりめん、鶏五目ほか10種類に及ぶ。付け合わせの漬物も「海外ではなかなか手に入らない」と選手に好評だ (提供:全農)

 7試合が予定されているラウンドロビン(総当たりの予選)も折り返しを迎える。大会3日目には男子は優勝候補最有力のカナダ戦、女子は韓国との全勝対決と、それぞれ山場が控えている。ここでさらに連勝を伸ばすことができれば1位でのクオリファイや世界選手権(女子は24年3月にカナダ・シドニー/男子は同4月スイス・シャフハウゼン)の出場枠獲得がかなり現実的になってくる。

 レストランの通常営業と並行しながら多い日で80個超のおにぎりを握り続ける前述の「SOY Asian Fusion Restaurant」の石坂剛士オーナーシェフは「僕もスポーツは大好きなのでこのような機会をいただき光栄です。日本人の繊細な舌に合うように気をつけながら、真心を込めて握ります。ぜひ最終日まで元気に試合していただき、いい結果を期待しています」と願いを込めた。

 その最終日、決勝は男女共に11月4日だ。前述のPACCから数えても日本のアベック優勝は1999年の常呂大会から24年も遠ざかっている。もちろんPCCCになってからは、アベック優勝を果たせば史上初だ。おにぎり片手に豊穣の秋へ。カーリングニッポンが快挙に挑む。

各種和食をはじめ、春巻きやフォーなど幅広いメニューが人気。ヴィーガンメニューなども揃う。      #101-2900 Pandosy Street, Kelowna, B.C. (提供:全農)
各種和食をはじめ、春巻きやフォーなど幅広いメニューが人気。ヴィーガンメニューなども揃う。      #101-2900 Pandosy Street, Kelowna, B.C. (提供:全農)

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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