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好ゲームに沸いたカーリング、軽井沢国際から推知する「男子カーリングは前に進んでいるのか」

竹田聡一郎スポーツライター
男子の上位3チーム。写真右からShuster、Carruthers(著者撮影)

 ワールドツアータイトルのひとつ、軽井沢国際カーリング選手権大会が23日まで軽井沢アイスパークで開催された。

 優勝はカナダ・マニトバ州をホームにし、世界選手権を制したキャリアも持つリード・カルザーズ(Carruthers)、準優勝に今季日本代表のコンサドーレ(Y.Matsumura)、平昌五輪でアメリカ代表として金メダルを獲得したジョン・シュスター(Shuster)が3位に入った。

 プレーオフ(準々決勝)以降は有料(自由席1500円、立見席1000円)にも関わらずほぼ満席の状態で、連日、多くのファンが好ショットには敵味方なく惜しみない声援と拍手を送る、素晴らしいオーディエンスの存在も大会を盛り上げた。

 98年長野五輪の翌年にスタートした同大会は今回で20回目を迎えたが、通年型の同会場が完成して5年、そして地元のSC軽井沢クラブが平昌五輪出場と、いくつもの要素が軽井沢町を国内最大規模のカーリングタウンに押し上げ、この雰囲気を生んだと言っていいだろう。地元出身で、前所属のSC軽井沢クラブ時代から出場しているコンサドーレの清水徹郎は「こんなに多くの観客の前でプレーできるなんて幸せです」と笑顔を見せたように、かつては閑散としていた男子の試合にも多くのファンが集ったのは大きな発展だ。

 競技レベルに関しても徐々に、しかし確実に世界との距離は縮まっている。準優勝のコンサドーレに関して、リード・カルザーズは「将来的にもっと強くなる」とそのポテンシャルを認め、今大会が初対戦となったジョン・シュスターも「なぜ彼らが勝てているか、その理由が分かった」と賞賛の言葉を口にした。

 トップチームだけではない。4位で日本選手権のディフェンディングチャンピオンである札幌国際大学(IWAI)も、今季の韓国王者S.kimに競り勝つなど4勝全勝で予選を抜け、準決勝ではジョン・シュスターにラストロックを投げさせる。粘り強さと安定したショットが印象的だった。

 また、準々決勝で同じくシュスターにラストロックを投げさせた軽井沢WILE(Ogihara)のスキップ・荻原諒のパフォーマンスも出色だった。勝負所でのトリプルテイクやヒットロールを決め、金メダルスキップに難易度の高いショットを強いる。結果、シュスターの力強くも精密なフィニッシュで逆転負けを喫したが、今大会のベストバウトのひとつに挙げられる攻防を見せてくれた。「あそこまでいったら、勝ちたかったですけどね」と悔しそうに、しかし浮かべた笑顔はグッドルーザーのそれで、前述のシュスターの3点ランバックを引き出した彼にもひときわ大きな拍手が送られた。

 上位チームだけではなく、予選9位で惜しくもクオリファイを逃したKiT Curling Club(Usui)のフォース、平田洸介は「準々決勝、どれも面白かったっすね」と上位進出を果たしたチームを讃えた上で「あそこに立ってないのが悔しすぎる」と振り返った。他チームの選手も同様の思いを抱いて今季の国内ツアー最終戦を終えただろう。

 それは、準優勝に終わったコンサドーレの面々も同様だ。決勝のカルザース戦の1E、彼らに大きなミスはなかったが、それでも終わってみると4失点を喫す。

「ストーン半分でもスキを見せると、ああいう結果になるということ」(セカンド・谷田康真)

「世界レベルではもっと細かな(石の)配置、ディティールを突き詰めなければいけない」(リード・阿部晋也)

「本当に悔しいけれど、そこまで世界は遠くないとも思えた」(スキップ・松村雄太)

 多くの国内カーラーが、シビアな世界のレベルを体感できたこと、トップとの距離を測れたこと、その中で悔しさと手応えを得たこと。それは夏に札幌で開催されるどうぎんクラシック、冬に軽井沢で開催される軽井沢国際といった、ワールドツアーでしか収穫できない経験値だ。

 この有意義な国際大会を終え、各チームは2月の日本選手権(札幌)へ次なる目標を据える。平昌五輪はもう過去のものだ。次のJAPANを背負うのはどのチームだろうか。すべてのチームにチャンスは与えられている。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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