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カーリング日本代表決定戦。急成長のチームIWAIを退け、SC軽井沢クラブが来季のPACCで再び世界へ

竹田聡一郎スポーツライター
男子カーリングの面白さを理解するファンも少しづつ増えてきた。(著者撮影)

 北見市のアドヴィックス常呂カーリングホールで行われた「全農2018パシフィックアジアカーリング選手権(以下PACC)大会日本代表決定戦」で今季の最終戦が終わった。

 男子は平昌五輪代表のSC軽井沢クラブと、2月の日本選手権を制したチームIWAIとの対戦だ。

 結果から書いてしまうと、3勝1敗でSC軽井沢クラブが順当に代表の座に就いたが、チームIWAIの健闘も光った。

 3月に米ラスベガスで開催された世界選手権では3勝9敗で、13カ国中11位という決して満足できる結果ではなかったが、主将の岩井真幸は「ボロ負けしたカナダ戦などは本当に何もできなかったけれど、学ぶものは多かったです。世界の曲がるアイスに立てた経験、そしてどうしたらそこで勝てるか考えることで練習から意識が変わったと思う」と手応えを口にした。

 チームメイトも同調する。

 リードとして2試合に出場した似里浩志は「ラスベガスの曲がるアイスを経験してなかったら、ここ(常呂)でもおそるおそる探りながら幅をとっていたと思う。あれを経験していたからなんとか戦えた」と語った。

 特に勝利した2試合目などはリードからチャンスを作り、オリンピアンチームにプレッシャーを与え、大会を通して難易度の高いショットを決め続けたフォースの青木豪に繋ぐ展開を生んだ。

 まだ18歳のフィニッシャーは得意とする早いウェイトでのランバックを始め、プレッシャーのかかる場面でのドローも沈める活躍で会場を大いに沸かせた。セカンドの宿谷涼太郎しかり、男子カーリング界の新星として今後の成長が楽しみなカーラーだ。

 それでも、SC軽井沢クラブの壁は厚かった。

 例えば、1勝1敗のタイで迎えた第3試合の6エンド、チームIWAIは1点をリードしてさらにラストロックを持っていた。しかし、SC軽井沢クラブは焦らずに山口剛史や清水徹郎が相手の石を排除しつつ、自軍の石をハウスに残す。青木がラストロックを投げる際にはSC軽井沢クラブの黄石がナンバー123を独占していた。

 それでも青木は、トップに近いウェイトで3つの黄色を蹴散らし、1点をもぎ獲る。テイク系のショットでは大会ハイライトと言ってもいいタフな仕事を遂行した。

 ただ、結果だけ見れば後攻で1点。SC軽井沢クラブはフォース(1点取らせること)に成功している。両角友は「素晴らしいショットでしたね」と前置きした上で「向こうのショットの難易度を上げて、1点獲ってもらう。いいエンドでした」と冷静に振り返る。イメージ通りのエンドコントロールで、続く7エンドに一挙に3点を取る。逆転に成功した。

 このあたりのゲームを通してのプラン、あるいは大会を通しての星の取り方はやはりSC軽井沢に圧倒的に分があった。両角友は第二戦を落とした後も、「まあ、カーリングですから、こんなこともありますよ。想定内。切り替えて次のゲームをしっかり戦うだけです」と焦らずに笑っていた。

 結果、残りのゲームをしっかり勝ち切って「日本で一番、強いと証明できて安心してます」と、SC軽井沢クラブ来季も代表権を獲得。長い今季を「濃すぎる一年」と表現した両角友は感慨深げに締めくくった。

「でっかい大会が2月にあったけれど、とにかくカーリング漬けの生活をさせてもらって幸せでした」

 カーリング界はつかの間のオフを経て、7月のアドヴィックスカップ(常呂)、どうぎんクラシック(札幌)といったカップ戦を起点に来季が始まる。

 男子はSC軽井沢クラブの一強時代だが、チームIWAIや日本選手権準優勝の4REALが、どこまで陣容を整えてくるかが、まずは来季序盤の見どころになりそうだ。

 チームIWAIの岩井は「動きはあると思うけれど、基本的にはチームは残す方向でこれから話し合う」と、選手の入れ替えを認めた。JCAの規定では強化指定の権利や来季の全日本出場枠(前年度優勝)は5人の選手中、3人が残れば認められる。どういう選択をするのか夏のカップ戦までに答えが出るだろう。

 4REALは今季、ホームを札幌から常呂に移したが、来季は首都圏の企業との契約や、スポーツチームとの提携を視野に入れている。多岐にわたってのカーリングの可能性を見据え、特に男子選手の協議継続の環境を整えるべく尽力している。

 ロコ・ソラーレ北見の本橋麻里が今季最後のテレビ生中継で、スポーツ誌『Number』の松井一晃編集長に「男子の特集もしてください」と訴えたが、男子も女子並みに環境が向上すれば必ず人気の出る優良コンテンツになるはずだ。来季はぜひ、男子も注目し北京五輪までのレースを見守ってあげてほしい。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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