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だから「夜の街」という表現はヤメロと何度言ったら(以下略

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

Abemaタイムスが以下の様な報道を行っています。

東京都 きょうの感染者39人の約半数が“夜の街” 「市中感染が広がっているとは言えない」

https://blogos.com/article/466089/

都によると、新たに感染が確認された39人のうち、接待を伴う飲食店の従業員や客は18人だった。このうち11人は既に感染者が出ている新宿区の2つのホストクラブの従業員で、特定の店を対象にした集団検査で陽性が確認された。

都内の感染者は3日続けて30人を超えたが、都は「新宿エリアでの感染が多く、市中感染が広がっているとは言えない」としている。

「新たに感染が確認された39人のうち、接待を伴う飲食店の従業員や客は18人だった。このうち11人は既に感染者が出ている新宿区の2つのホストクラブの従業員」であることを理由として、当該記事の表題ではわざわざご丁寧に"ダブルクオーテーションマーク"を使いながら"夜の街"と表現をしています。しかし、対象となる業種が接待飲食であり、その大部分がホストクラブであることが判っているのであれば、その様に表現をすれば良いのであって、なぜわざわざ"夜の街"なんて書く必要が有るのでしょうか。それが「カッコイイ表現」であるとでも思ってるんですかね。

ひとくちに"夜の街"といいますが、夜の街の業種には上記で挙げられている接待飲食の様な業種から一般飲食店、深夜酒類提供飲食店、その他様々なエンタメ系業種など様々な業態が存在しています。それぞれの業種はそれぞれ異なるサービスを提供しているワケですから、当然ながらウィルス感染に関してそれぞれが異なるリスク度を持っているワケで、何でそれをひとくちで"夜の街"なんて纏めますかね? その表現が、接待飲食とは関係ない夜の業種に対して絶大なる風評被害を生んでいることを、こういう表現を好んで使用している人達は認知していないのでしょうか。

ちなみに政府は既に夜の街に関するこの様な曖昧な表現を改める方向で既に動いています。以下記事参照。

やっと政府が訂正:政治による風評被害に苦しんだ夜の繁華街

http://www.takashikiso.com/archives/10241943.html

業種のサービス特性として、不特定多数の客と3密接触しがちという意味でホステスクラブなどを代表とする「接待飲食営業者」が今、もっとも一番コロナリスクが高い業種であるという事は知られ始めていますが、その接待飲食業の労働者(キャバ嬢等)を主な顧客としながら、そこにさらに接待飲食を提供している業であるホストクラブにそのリスクが最も集約されてゆく現象が表面化しつつあります。

海洋汚染において、有害物質が食物連鎖を経て最も上位の捕食者に向かって濃縮されて行く現象を「生物濃縮」などと言いますが、今のコロナリスクも同じような理屈でホストクラブに濃縮されてしまっている状況。ここにリスクが集約されて行くっている状況は、考えてみれば非常に正しい現象が起こってると言えましょう。

私はナイトタイムエコノミーの振興を訴えて来た専門家として、これら業態をモラル的に云々批判をするつもりは毛頭ありませんし、なんとか応援してゆきたい立場ではありますが、一方でそういうナイトタイムエコノミーの振興論とは別としてウィルスの感染リスクがそこに集約されて行っている現状は何とか回避して行かなければなりません。政府は先月、この様な接待飲食業に対する感染防止対策に補助金を出すことを宣言しましたが;

【参照】バーやナイトクラブの感染防止対策に補助金―安倍首相

https://news.yahoo.co.jp/articles/166b672ebad29ba4bc1cef76a3dc64cc67570836

この様な補助金制度等を整備しながら、何とかこの様な業態の3密対策を強化して行かなければなりません。ちなみに、私が最近見たガールズバーの事例では客と従業員の間にあるカウンターを透明シートで区分けしてしまう形で完全に分離して営業を行っている営業者をみかけました。客の隣に座って接待を提供する接待飲食業よりも、この様な業態の方が感染防止の面では効果が高いではないかな、と。上限200万円とされている政府の感染防止対策補助金が、この様な一種の業態転換を促進できるのであれば良いのではないかなあ、などとは思っております。勿論、感染症対策以外の部分の営業上の課題は新たに生まれるワケではありますが。

いずれにせよ、情報発信をする立場の方々におかれましては安易に"夜の街"などという表現を使わぬことと併せて、感染リスクが表面化している接待飲食業の皆様に置かれましては政府による補助等を使いながら知恵を働かせて何とかこのコロナ禍を乗り切って頂きたいと心より祈念するところであります。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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