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カジノ反対派の急先鋒、鳥畑与一さん(@静岡大学)が推進派をメッタ切り

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:ロイター/アフロ)

いやぁ、鳥畑さんって推進派のいない反対派だけの集会だと、こんな主張の仕方をするんですね。以下、真山勇一参議院議員(民進党)による勉強会の収録動画より。

あらゆるカジノ推進派のコメントを引いた上でそれらをメッタ切りにするという独り舞台であり、聞いている反対派の人達にとってはさぞかし痛快であったでしょうね。

(31:47あたりから)小池さんという方は元ゴールドマンサックスに勤めていた方で非常に正直というか、 隠したりしない方だと思うんですが、こんなことを正直に言うんですね。カジノは日本の特に富裕層の個人金融資産の一部を吸い上げる事業です。日本にとっては個人金融資産の蓄積は最大の経済資源であり、その一部を開発(※音声不明瞭)するわけです。本当にストレートに正直に仰っていて、つまりアメリカとカジノ企業のターゲットは完全に日本人の懐なんです。そこに外国観光客が来てくれるか、外国のギャンブラーが来てくれるかどうかはオマケの話…

(32:56あたりから)長崎に行きまして、佐世保に行きましたら、ちょうど昨年参考人質疑でご一緒した美原さんという推進派の中心人物がおられて、ちょうど佐世保の市会議員で推進議連なんかができちゃったらしくて、そこに講演に来たというんですね。その美原さんが言ってたと。「ターゲットは日本人です。外国観光客はあてにしてません」って、ハッキリ仰ってましたというのが、ヒアリングの成果なんです。

(44:25あたりから)大阪商業大学の谷岡先生なんかが持論で言ってるんですけれど、某鳥畑というのはゼロサムといっているけれど、ゼロサムじゃないんだ。お年寄りが溜め込んだお金、金持ちが溜め込んだお金、無駄に使われずに眠っているお金を使わせれば日本経済としては消費が増えて、経済貢献するじゃないかというんですね。でも、お年寄りの貯蓄って老後の生活の為に必要なお金、無駄に溜め込んでる方って殆どいないと思うんですね。

(46:05)「胴元が確実に儲かる仕組み」これは私が言ってるのではなくて、推進派の美原氏がある所でおしゃべりした資料を使わせていただいております。それから中條さんという方、大阪商業大学の方がこんなことを言ってるんですね。ギャンブルに参加する人は勝ってお金を儲けることを目的とするにも関わらず、結果的にはほぼ確実にお金を失ってしまうという矛盾する現実を体験する、と。この矛盾する体験からどう乗り越えるか、悟りを開いてくださいみたいなことを後で文章が続くんです…

(1:16:26)去年、参考人質疑でマネーロンダリングに詳しい渡邊さんという弁護士さんの方がおられたので、ちょっと質問しました。「闇です」といっていました。「闇ルートで外に持ち出すんです」と。そういうノウハウを持っているいわゆるジャンケットという業者が居て、その業者を使わないとマカオのような遊び方は出来ない。じゃぁ日本でそんなジャンケットのそれを認めるんですか?認めたら、その渡邊弁護士さんはマネーロンダリングの規制は出来ませんといっていた。マネロン規制をマジメにやるんだったら、ジャンケットを認めちゃだめですと言ってました。

(1:17:39)これは私が勝手に言ってるのではなくて、最近推進派の方もそういう言い方になって来てて、先日朝日新聞の方に聞くと、この間、木曽崇という推進派の方にインタビューしたら9割は日本人ですよ、東京大阪でも、という話をしてたという事ですから。どんどんなんか、話が違うよという方向に変わってきているわけです。

コメントが引かれているあらゆる推進派の中で、私だけを「呼び捨て」にしているあたりに鳥畑氏の私に対する個人的な感情が読み取れるわけですが(笑)、それはご愛嬌として、どうもハッキリしないのが上記の引用コメントに、1) 何かしらの著述物や不特定多数が聴取している講演会等から引いたもの、2) 鳥畑氏が個人的な会話のなかで直接聞いたもの、3)鳥畑氏が直接聞いたどころか「あの人物がこんなことを言ってた」と誰かから聞いただけのもの、が混在しているようです。

当然ながら論議者としては、己の著述や講演会などで公に発したコメントに関してはそれを引いて批判して頂くのはある程度は当然のこととして受け止めるわけですが、どういう文脈の中でそのコメントが発されたのか、はたまた本当にそういう発言があったのかすら検証のしようがない個人的な会話からフレーズを引いて「アイツはこんなトンデモナイことを言っていた」などとして批判の対象とするのは論議者の作法として完全に間違い。ましてや自分が見聞きしたわけでもなんでもない会話内容を、第三者から又聞きして「アイツ、こんなこと言ってたらしいよ」などという批判の仕方なぞ、もっての他であるわけです。

ちなみに、鳥畑氏が引いている私のコメントはあくまで朝日新聞の記者さんとの会話の中で発されたものであり、私自身がどういう文脈の中でそれを発したのかを鳥畑氏が知る由もないどころか、私自身は鳥畑氏と会話ひとつしたことはありません。(逆に、彼の講演会にいち参加者として勉強しに行くなどは幾度もしているので、私の方は一方的に彼の発した言を知っていたりするが)。また、私自身は早稲田大学アミューズメント総研において行われた国内カジノ市場推計の実施担当者として推計値を出した頃から(対外的な公式発表は2006~2007年だったはず)、ずっと全体入場者に占める国際顧客の割合は10%前後であると公言し続けており、少なくともここ10年くらいは同じ事を言い続けている。鳥畑氏による「話が違うよという方向に変わってきている」なぞという批判は全くの見当違いです。

その場に不在である推進派の、文脈はもとより、その引用が本当に正確なのか、はたまた本当にそのようなものがあったのかすら検証のしようのないコメントを延々と引いて、「推進派はこんなトンデモナイことを言ってるんですよ」と糾弾する。鳥畑氏自身はさぞかし爽快だったでしょうねと思うわけですが、一方で反対論を打つにしても、そんな「論立て」の仕方 があってたまるか!と、こちらの立場としては思ってしまうわけです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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