カジノ合法化論と「ギャンブルに対するリスク教育」の義務化

以下、朝日新聞による報道から。

「お台場にカジノ構え、年2千万人集客を」 下村文科相

http://www.asahi.com/articles/ASG227295G22UTFK00F.html

下村博文・文部科学相  国民の理解が必要だが、東京・お台場の一角に国際観光産業としてのカジノを構えたい。ラスベガスやマカオ、シンガポールと同じものをつくっても意味がないお台場に行ったら歌舞伎も浄瑠璃も、(アイドルグループの)AKB48も見られる。そこに行かなければ見られないような国際観光産業で、家族みんながそこに行く。[...]

現役の文部科学大臣である下村博文氏が、「国民の理解が必要を前提」としながらも東京お台場へのカジノ導入を訴えたというニュース。現役大臣が、特定の地域のカジノ導入構想に肩入れするような発言を行なう事の是非が問われる部分もあるのですが、まぁ下村大臣は東京選出の議員でもあるので「地元選出議員として地域政策を語っているのだ」という理解をすればギリギリOKなのでしょうかね? 私としても非常にコメントしにくいところです。

一方、下村大臣の語っている「歌舞伎も浄瑠璃もAKBも...」という表現は、昨年12月に青天の霹靂で了承がなされた「カジノからの獲得財源を文化振興予算に使用する」というIR議連の基本方針の同一線上にあるもの。その背景には昨年5月に開催された下村大臣の私的懇話会および、文化庁の猛烈なプッシュがあったというお話は、以前のエントリにてご紹介しました。その辺りは下記リンク先をご参照下さい。

という事で、文化振興予算の獲得の面も含めて文科省は(というか少なくとも文科大臣は)日本のカジノ合法化をプッシュする立場にあるワケですが、その大前提として文部科学省の責任範囲の元で進めてもらわなければならない案件があります。それは、我が国の義務教育における「ギャンブルに対するリスク教育」の拡充です。

我が国の学校教育における指導内容の基本方針を示すものとして、学習指導要領というものがあります。これは学校教育法の規定に基づいて文科省によって定められるものなのですが、平成23年から導入がなされた新学習指導要領には以下のような規程があります。

第二章各教科 第七節 保健体育

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/hotai.htm(4) 健康な生活と疾病の予防について理解を深めることができるようにする。

[...]喫煙,飲酒,薬物乱用などの行為は,心身に様々な影響を与え,健康を損なう原因となること。また,これらの行為には,個人の心理状態や人間関係,社会環境が影響することから,それぞれの要因に適切に対処する必要があること。

実は我が国の義務教育では、小学校、もしくは中学校における体育/保健体育の時間において、喫煙、飲酒、薬物乱用に対するリスク教育と、その依存に対する対処教育がなされる事となっています。皆さんも、子供の頃に学校の授業で「タバコを吸い続けて真っ黒になった肺」の写真とか「酒を飲みすぎてパンパンに膨れ上がった肝臓」とか見せられた記憶があると思いますが、アレのことです。そして、ここで問題になるのが「賭博」の扱いなのですが、実は日本の義務教育では喫煙、飲酒、薬物乱用のリスク教育はなされているのですが、賭博のリスク教育がなされていないのです。

賭博は、我が国において飲酒や喫煙と同様に、そのリスク判断が可能であるとされる法定年齢を超えてから、個人の判断の元で楽しむべき(もしくは楽しまざるべき)嗜好物です。また飲酒や喫煙と同様に、その乱用の先には依存症という大きな健康上の被害を招く可能性があるものであり、適切な対処法が教育されていなければならない。ところが我が国の青少年は、それら教育を一切受けることなくして社会に放り出されてしまうのが現状なのです。

一方で我が国には、これからのカジノ合法化論議の如何に関わらず、すでに沢山の賭博、もしくはそれに類するサービスが沢山存在しています。公営競技、宝くじ、toto、遊技、FX、先物…こういった客の射幸心を煽るもの、もしくは煽る可能性のあるものが沢山存在している世の中に、適正なリスク教育を受けていない子供達が毎年送り込まれている。その先に起こりうることは想像に難くないでしょう。現在の状況は、我が国のギャンブル依存対策において最大の課題であるのと同時に、カジノ合法化云々の前に…というかそれとは別物として、日本の教育制度の中でで確実に対処しておく必要がある事項であると考えます。

そして実は奇しくも、下村博文科大臣は2016年度からの学習指導要領の改訂を目指して、大臣諮問機関である中央教育審議会での論議を開始することをすでに示唆しているところ。この点は、是非、文科大臣および文科省としてリーダーシップを発揮しながら、早期の実現をお願いしたいところであります。