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三遠ネオフェニックスの飛躍に大きく貢献中の佐々木隆成。枝折康孝コーチが振り返る高校時代とは?

青木崇Basketball Writer
スコアラーとして三遠にとって重要な存在となった佐々木 (C)B.LEAGUE

 60試合のレギュラーシーズンも折り返しが目前となったB1の中で、三遠ネオフェニックスが24勝4敗で中地区の首位を走っていることは、いい意味で最大の驚きと言っていいだろう。

 大野篤史コーチがチームを率いて2年目の今季、三遠はアップテンポな展開から得点を積み重ねるスタイルが定着しつつあり、平均90.4点と3P成功数11.4本がいずれもB1のトップにランクされている。

 この快進撃を支えている選手の一人が、B2の熊本ヴォルターズで3年間過ごした後、昨季から三遠のポイントガードとしてプレーしている佐々木隆成だ。今季はここまで平均12.8点を記録し、12月6日の川崎ブレイブサンダース戦で25点を奪うなど、B1でもスコアリングガードとして十分に通用することを証明している。

 そんな佐々木にとって最大の武器は一歩目の速さであり、「基本的にいつでも抜けるという感覚は持っています。その中で抜くときと他のところ使った方がいいときの区別というのは、昨シーズンに比べればレベルがちょっと高くなったかなという意識はあります」と語る。豊浦高校時代に佐々木を指導した枝折康孝コーチも、当時から能力が傑出していることを認識していた。

「3歩ダッシュがあれば、僕は石井(悠太:現日本無線)と佐々木は世界一でもなるんじゃないかなと。大学は天理に行ったんですけど、行かなければそんな(プロになる)オファーもなかったですし、三段跳びの選手だったらジャパンに入れるんじゃないかというのは冗談ですけど、それぐらい跳ねるような能力っていうのはすごくあるなと思いました」

 山口県下関市で生まれ育った佐々木は、中学卒業後に地元の豊浦高校に進学。茨城ロボッツの中村功平、石井との同級生トリオを軸としたチームは、3年生時のウインターカップで3回戦進出を果たしている。尽誠学園に敗れた試合で佐々木は、ゲーム最多となる23点を記録していた。高校時代の佐々木について、枝折コーチは次のように振り返る。

「隆成が本当に入ってきた頃は、能力はやっぱりあったんですけど、欲というかですね、こうなりたいという風なのがなかった中で、基礎をしっかりやってきました。元々能力はあったので、ディフェンス、オフェンスでドリブルの突き方、姿勢という基本なことをしか僕は教えてないんですけど、それをやってくれた(から今があります)」

昨年も豊浦高校をウインターカップの舞台へと導いた枝折コーチ (C)JBA
昨年も豊浦高校をウインターカップの舞台へと導いた枝折コーチ (C)JBA

 2014年当時の豊浦高校は、中村の注目度が高いチームだった。しかし、最後のウインターカップ2回戦の京北戦は、枝折コーチからすると佐々木が成長するきっかけになる試合だったという。

「京北戦で中村が退場したときに石井もいたんですけど、“佐々木隆成、お前だぞ!”と言いました。阿吽の呼吸じゃないですけど、“わかりました”みたいな感じで、(試合が)終わった後も疲れたなっていう顔をしていたのが僕の記憶にあります。そういう自分がやらなければということは、プロとなってから芽生えてるんじゃないかというのを感じています」

 枝折コーチの視点からすると、高校時代に欲や自身がなりたいイメージを持っていなかったという佐々木だったが、プロとしてのキャリアを積み重ねる過程で、自分から能動的にやることの重要さを痛感。現在はディフェンスでの貢献度を上げたいという思いが強くなっている。

「ディフェンスで迷惑かけているので、そこをデビッド(ダジンスキー)、ヤン(テ・メイテン)、コティー(クラーク)とか、サーディー(ラベナ)もそうですけど、他の人たちが本当にカバーしてくれてる状態です。そこは本当にもう感謝しつつ、もっともっと僕がやらないといけないと思っています」

 こう語る佐々木の存在が豊浦高校の後輩部員たちにも大きな刺激を与えているのは、枝折コーチの「帰ってきたときに彼も練習に来てくれるんで、そういう時に『あっ隆成さん』とみたいな感じなので、すごく影響力があると思います」と語ったことでも明らか。1週間、最低でも2週間に1回は佐々木からの連絡があるという。

 そんな枝折コーチが期待しているのは、佐々木が日本代表のジャージーを着てプレーする姿を見ること。それを実現するためのカギは、佐々木が今季前半で見せた質の高いパフォーマンスを継続することに尽きる。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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