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富永啓生が挑むマーチマッドネスは、B1でプレーする多くの外国籍選手が経験している大舞台

青木崇Basketball Writer
茨城のメイ(32番)は2016年にノースカロライナ大でNCAA制覇を経験(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 富永啓生の素晴らしい活躍もあり、ネブラスカ大は2014年以来となるNCAAトーナメント出場を決めた。渡邊雄太がジョージ・ワシントン大で4年間奮闘しても実現できなかったことが、富永はビッグテンという全米屈指のカンファレンスで成し遂げた。これは偉業に値するものであると同時に、NCAAトーナメントで活躍することになれば、選手としての価値と注目度が大きく上がる。

 アメリカの大学バスケットボールは、3月になるとカンファレンス・トーナメント、全米の頂点を決めるNCAAトーナメントで大いに盛り上がるこの時期をマーチマッドネス(3月の狂乱)と呼んでいる。一発勝負だからこそ起きる波乱、劇的なエンディングなど、アメリカのバスケットボール好きが熱くなるこの季節。現在Bリーグでプレーしている外国籍選手の多くはNCAAトーナメントでプレーし、中にはファイナルフォーや全米の頂点に立った選手もいる。

 現在B1でプレーしている外国籍選手で、NCAAトーナメントを経験している選手は以下の通り(3月17日現在)。20日から再開されるレギュラーシーズンを観戦するうえで、少しでも役立つ情報になればという思いから、簡単な経歴を入れながらリストアップしてみた。

★ダラル・ウィリス・ジュニア(北海道:ウィチタ・ステイト大)

2017年と2018年の2回出場。ラストゲームとなったマーシャル大戦で20分間で13点、8リバウンドと奮闘。

★トーマス・ウェルシュ(北海道:UCLA)

4年間で3度経験し、スウィートシックスティーン進出が2回。ラストゲームはファーストフォーでのセントボナベンチャー大戦で、32分間プレーして2点、15リバウンドだった。

★デモン・ブルックス(北海道:デイビッドソン大)

2度出場したが、いずれも初戦で敗退。2013年のマーケット大戦では36分間で11点、8リバウンドを記録。対戦相手にはダバンテ・ガードナー(三河)が控えのビッグマンとして登場し、17分間で9点を記録。

★ドワイト・ラモス(北海道:カリフォルニア・ステイト大フラートン校)

フィリピンに移る前の2年間在籍し、2018年の1回戦でパデュー大と対戦した際に2分間出場し、2リバウンドを記録。

★アンジェロ・チョル(秋田:アリゾナ大→サンディエゴ・ステイト大)

転校する前に在籍したアリゾナ大で2013年にスウィートシックスティーン、翌年にサンディエゴ・ステイト大で2回戦と2度NCAAトーナメントを経験。

★ブライアン・コンクリン(茨城:セントルイス大)

4年生時の2012年に2回戦進出。メンフィス大に61対54で勝った初戦では16点を記録した。

★ルーク・メイ(茨城:ノースカロライナ大)

4年間でファイナルフォーを2度経験し、2年生時の2017年に八村塁が1年生として在籍していたゴンザガ大を破って優勝している。ラストゲームは2019年3月29日、スウィートシックスティーンでのオーバーン大戦だった(28分間で13点、7リバウンド)。

★グラント・ジェレット(宇都宮:アリゾナ大)

1年でNBAにアーリーエントリーする前の2012年に出場し、オハイオ・ステイト大にスウィートシックスティーンで敗戦(70対73)。この試合では24分間で7点、5リバウンドだった。

★ギャビン・エドワーズ(宇都宮:コネチカット大)

NCAAトーナメントは2回経験。2009年のファイナルフォーのミシガン・ステイト大戦では、控えビッグマンとして10分間のプレーで2点、4リバウンドだった。

★トレイ・ジョーンズ(群馬:マイアミ大フロリダ)

2012年3月28日にスウィートシックスティーンが大学でのラストゲームで、マーケット大に61対71で敗戦。32分間で9点、3リバウンド、3アシストで対戦相手にはダバンテ・ガードナーがベンチから登場し、25分で14点と勝利に貢献。

★ケイレブ・ターズースキー(群馬:アリゾナ大出身)

4年連続でNCAAトーナメントに出場。2014年と2015年にファイナルフォーまであと1勝に迫ったが、いずれもウィスコンシン大に1点差と7点差で惜敗した。2015年のスウィートシックスティーンのゼイビア大戦では12点、12リバウンドのダブルダブルを記録して勝利に貢献。

★ゼイビア・クックス(千葉:ウィスロップ大)

2017年のトーナメントに出場し、チームは初戦でバトラー大に敗れたが、36分間プレーして23点、6リバウンドと奮闘した。

★ディー・ジェイ・ステフェンズ(千葉:メンフィス大)

トーナメントには3度出場し、4年生時の2013年にスウィートシックスティーンに進出。大学でのラストゲームとなったミシガン・ステイト大戦のスタッツは、32分間で3点、6リバウンドだった。

★ジョン・ムーニー(千葉:ノートルダム大)

1年生時の2017年にチームがトーナメント進出を果たしたが、ラウンド32までの2試合はいずれも出場機会がなかった。

★ライアン・ロシター(東京:シエナ大)

4年間で3度トーナメントを経験し、2回戦が最高成績。2009年3月20日にダブルオーバータイムでオハイオ・ステイト大を倒した時には、47分間プレーして15点、16リバウンドの大活躍だった。

★アンソニー・クレモンズ(渋谷:アイオワ大)

4年間で3度トーナメントに出場。2016年に優勝したビラノバ大に敗れた2回戦がラストゲームで、9点、4アシストだった。

★ライアン・ケリー(渋谷:デューク大)

1年生の時に控え選手としてNCAAの頂点に立っている。3年生時はケガで試合に出られず、4年生時はエリートエイトで優勝したルイビル大(24分間で7点)に敗れて大学のキャリアを終えた。

★ジェームズ・マイケル・マカドゥ(渋谷:ノースカロライナ大)

2012年がエリートエイト(19分間で15点)、2013年が2回戦でいずれもカンザス大に敗戦。大学でのラストシーズンとなった2014年も2回戦でアイオワ・ステイト大に敗れた(31分間で14点、7リバウンド)。

★エリック・マーフィー(川崎:フロリダ大)

4年間で3度ファイナルフォーを目前にしたエリートエイトでの敗戦を経験している。特にラストゲームとなった2013年のミシガン大戦は、FGが11分の0本の無得点という厳しいゲームになった。

★ニック・ファジーカス(川崎:ネバダ大)

4年連続で出場し、1年生時の2004年にスウィートシックスティーン進出。8試合中7試合で2ケタ得点、2006年3月16日のモンタナ大戦で24点、12リバウンドのダブルダブルを記録。ラストゲームとなった2007年2回戦のメンフィス大戦では20点、7リバウンド。対戦相手には後に三遠ネオフェニックスに在籍するロバート・ドジャーがいた。

★ジェロード・ユトフ(横浜:アイオワ大)

NCAAトーナメントを3度経験し、最高成績は2回戦。2016年の1回戦でテンプル大に勝利した際には、チーム最多となる23点の大活躍だった。

★デビン・オリバー(横浜:デイトン大)

4年生時の2014年にエリート8に進出。4試合中3試合で2桁得点、ファイナル4を目前にして敗れたフロリダ大では12点、6リバウンドを記録した。

★ジョシュ・スコット(横浜:コロラド大)

3回NCAAトーナメントを経験するも、いずれも1回戦敗退。ラストゲームとなった2016年3月17日のコネチカット大戦では、23点、11リバウンドのダブルダブルと奮闘した。

★ディオン・トンプソン(信州:ノースカロライナ大)

1年生時がエリートエイト、2年生時にファイナルフォー、3年生時に全米制覇を経験。ミシガン・ステイトに89対72で快勝した2009年のファイナルでは、スターターとして23分間で9点を記録した。

★ジャスティン・マッツ(信州:バージニア・テック大)

2度経験したNCAAトーナメントはいずれも1回戦敗退。2022年3月18日のテキサス大戦では9点、5リバウンド、5アシストを記録している。

★クインシー・ミラー(富山:ベイラー大)

在籍は1年だったが、2012年にベイラー大のエリートエイト進出に貢献。ファイナルフォー進出をかけた一戦で、アンソニー・デイビスを擁したケンタッキー大に82対70で敗れた。1回戦のサウスダコタ・ステイト大戦での10点が最多得点。

★ヤンテ・メイテン(三遠:ジョージア大)

1年生時に出場したが、1回戦でミシガン・ステイト大に敗戦。控えとして13分間出場し、スタッツは2点、3リバウンドだった。

★ザック・オーガスト(三河:ノートルダム大)

2015年と2016年と2年連続でエリートエイトに進出するも、ノースカロライナ大とケンタッキー大に敗れてファイナルフォーの舞台に立つことはできなかった。出場した9試合中6試合で2桁得点を記録し、2015年3月28日のケンタッキー大戦では20点、9リバウンドと活躍した。

★ジェイク・レイマン(三河:メリーランド大)

3、4年生時の2回トーナメントを経験し、2016年のスウィートシックスティーンが最高成績。2016年3月18日のサウスダコタ・ステイト大戦では、5本の3Pショットを決めるなど、大学でのキャリア最多タイとなる27点を記録した。

★ダバンテ・ガードナー(三河:マーケット大)

3回のNCAAトーナメントではいずれもスウィートシックスティーンまで勝ち上がり、2013年はエリートエイトでシラキュース大に39対55のスコアで敗れてファイナルフォー進出を逃した。このロースコアでベンチスタートながらも、チーム最多となる14点、7リバウンドを記録。

★ジョシュア・スミス(名古屋:UCLA→ジョージタウン大)

UCLAとジョージタウン大で1回ずつ、いずれも結果は2回戦敗退。UCLA時代の2011年にはミシガン・ステイト大戦で14点、フロリダ大戦で16点、6リバウンドと活躍した。

★スコット・エサトン(名古屋:ノースイースタン大)

4年生時にNCAAトーナメント進出を果たし、1回戦でノートルダム大と対戦して65対69の惜敗が、チーム最多の18点、8リバウンドと奮闘した。対戦相手のノートルダム大にはザック・オーガストがいた。

★アーロン・ヘンリー(FE名古屋:ミシガン・ステイト大)

2019年にファイナルフォーまで勝ち上がった経歴を持つ。セミファイナルでテキサステック大に51対61で敗れたが、26分間で11点と奮闘。スウィートシックスティーンのルイジアナ・ステイト大戦では20点、8リバウンド、6アシストで勝利の原動力になった。

★ジェレミー・ジョーンズ(FE名古屋:ゴンザガ大)

八村塁のチームメイトであり、出場時間の少ない控えのフォワードだったが、ゴンザガ大の3年間で準優勝、スウィートシックスティーン、エリートエイトを経験。2019年3月28日のフロリダ・ステイト大戦での13分が最長の出場時間で、スタッツは2点、3リバウンドだった。

★ショーン・オマラ(FE名古屋:ゼイビア大)

4年連続でマーチマッドネスを経験し、2017年にはエリートエイト進出を果たしたが、八村塁が1年生だったゴンザガ大に59対83で敗れた。NCAAトーナメントには10試合出場し、2017年3月16日のメリーランド大戦では18点、7リバウンドを記録した。

★マシュー・ライト(京都:セントボナベンチャー大)

2012年に出場し、1回戦のフロリダ・ステイト大戦で13分間プレーするも無得点(3アシスト)に終わった。

★ケビン・ジョーンズ(京都:ウエスト・バージニア大)

4年連続で出場し、2年生時の2010年にファイナルフォーを経験。デューク大に敗れた一戦が6点に終わるまでの4試合は、すべて13点、8リバウンド以上のスタッツを残す活躍をしていた。2012年の1回戦でゴンザガ大に54対77で大敗したのがラストゲームになったが、40分間のフル出場で13点と奮闘した。

★シェック・ディアロ(京都:カンザス大)

1年だけ在籍したカンザス大では、2016年の1回戦で対戦したオースティン・ピー大相手に7分間で9点、4リバウンドを記録。しかし、その後の試合では出番がなく、チームはエリートエイトで優勝したビラノバ大に59対64で敗れた。

★ショーン・ロング(大阪:ルイジアナ大ラファイエット校)

2014年にカンファレンス・トーナメントに優勝して出場権を獲得し、1回戦でクレイトン大に66対76で敗戦。23分間で15点、7リバウンドと持ち味は発揮していた。

★イアン・ハマー(大阪:プリンストン大)

アイビーリーグの王者として2011年のトーナメントに出場。1回戦でジョシュ・ハレルソンがいたケンタッキー大に57対59のスコアで惜敗。31分間で11点、8リバウンドを記録した。

★ペリン・ビュフォード(島根:ミドルテネシー・ステイト大)

2016年にチームをNCAAトーナメントに進出させる原動力となり、1回戦では39分間のプレーで15点、7リバウンド、6アシストというオールラウンドな活躍でミシガン・ステイト大を撃破。チームは2回戦でシラキュース大に敗れた。

★ハッサン・マーティン(島根:ロードアイランド大)

渡邊雄太が在籍したジョージ・ワシントン大と同じアトランティック10でプレーし、2016年にカンファレンス・トーナメント優勝でマーチマッドネスを経験。2回戦でオレゴン大に敗れたが、1回戦でクレイトン大を破った際には12点、8リバウンドと活躍した。

★ケリー・ブラックシアー・ジュニア(広島:バージニア・テック大→フロリダ大)

バージニア・テック大時代に2度マーチマッドネスを経験し、2019年にはスウィートシックスティーンまで勝ち上がり、3試合とも15点以上を記録。2点差で惜敗したデューク大戦では18点、16リバウンド、5アシストという大活躍だった。

★ドウェイン・エバンス(広島:セントルイス大)

3度のマーチマッドネスはいずれもスウィートシックスティーン進出。大学でのラストゲームとなったルイビル大戦では16点、10リバウンドのダブルダブルを記録した。NCAAトーナメントでの最多得点は2013年の1回戦、ニューメキシコ・ステイト大戦での24点。

★ジョシュ・ハレルソン(佐賀:ケンタッキー大)

2010年と2011年の2度出場。2011年にチームがファイナルフォー進出を果たすまでの4試合は、2回のダブルダブルを含む平均14.8点、9リバウンドを記録し、リージョナル(地区)のベスト5にも選ばれた。2010年はエリートエイトでケビン・ジョーンズがいたウエスト・バージニア大に敗戦。この試合での出場機会はなかった。

★チェイス・フィーラー(佐賀:フロリダ・ガルフコースト大)

3年生時の2013年に第15シードながら第2シードのジョージタウン大を倒す大波乱で一役を買った。速攻から豪快なダンクを叩き込むなど全米を魅了し、サンディエゴ・ステイト大でも11点を記録して勝利に貢献。スウィートシックスティーンでフロリダ大に敗れたが、チームはダンクシティと呼ばれるなど話題になった。

★ジャレル・ブラントリー(長崎:カレッジ・オブ・チャールストン)

2018年にコースタル・アスレティック・アソシエーションのカンファレンス・トーナメント優勝によってマーチマッドネスを経験。1回戦でオーバーン大と対戦し、38分間で24点、7リバウンドと活躍したが、チームは58対62のスコアで惜敗した。

★ニック・パーキンズ(長崎:バファロー大)

ミッドアメリカン・カンファレンス・トーナメントを優勝したことで3度のNCAAトーナメントを経験(スウィートシックスティーン進出2回)。2017年に第4シードのアリゾナ大を倒した際に13点、翌年のアリゾナ・ステイト大との1回戦で21点、10リバウンドと活躍した。

★ヴィック・ロー(琉球:ノースウエスタン大)

強豪の多いビッグテン・カンファレンスに所属するチームで、2017年にAt large(選考委員会による選出)でマーチマッドネスの舞台に立っている。最終的に準優勝となったゴンザガ大に敗れての2回戦敗退という結果に終わったが、この試合で18点、8リバウンドと活躍した。

★ジャック・クーリー(琉球:ノートルダム大)

4年連続でNCAAトーナメント出場を果たすも、最高成績は2回戦で3度が初戦敗退。2012年のゼイビア大戦で18点、7リバウンド、ラストゲームとなった2013年のアイオワ・ステイト大戦で14点を記録した。

★アレックス・カーク(琉球:ニューメキシコ大)

マーチマッドネスの舞台に2度立ったが、第3シードで臨んだ2013年は、22点、12リバウンドのダブルダブルを記録するなどチームを牽引したものの、アイビーリーグのハーバード大相手にまさかの初戦敗退。翌年も初戦でスタンフォード大に5点差で惜敗した。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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