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群馬の重要な戦力へと成長している八村阿蓮。「日本人の3番ポジションで一番の選手になりたい」

青木崇Basketball Writer
スモールフォワードとして八村 (C)B.LEAGUE

 2021年のインカレが終わった後、特別指定選手として群馬クレインサンダーズに入団した八村阿蓮。大学時代まで馴染んだフロントラインでプレーするポジションから、ウイングでプレーするスモールフォワードへ転向することがプロキャリアのスタートとなった。八村は198cmの身長に加え、非凡な身体能力とフィジカルの強さを兼備していることからすれば、Bリーグであればスモールフォワードのポジションで優位に立てることも多くなる。

 もちろん、B1のレベルでプレーできることを証明する以上に、ポジション変更への順応は決して簡単なことではなかった。八村はスモールフォワードへの転向で苦労したことを次のように振り返る。

「大学のときは4番ポジション(パワーフォワード)をやっていたので、プレーが真反対というか、スクリーンをかける側からもらう側になったので、そういうところでもアジャストはすごい大変でした。最初はすごい苦労したというか、オフェンスでも何をしたらいいかがはっきりと決まってない状態での試合だったので、すごく大変でした」

 頭の中では少し混乱することもあったという。

「大学のときは本当にすることが大体決まっていたのですが、プロになるとさらにそのときのコーチングというか、結構フリーランスで行くみたいな感じだったので、結構戸惑いはありました」

 八村は明成高校(現仙台大学附属明成高校)、東海大学で留学生たちと戦ってきた経験がある。ハードに当たられても負けないフィジカルの強さがプロでも活かされているのは事実。今季の八村は、身長が2メートル台前後、体重が100kgを超えるような外国籍選手に対するマッチアップを担当する機会も増えている。

 10月28日と29日に茨城ロボッツと対戦した際、八村はトーマス・ケネディ、チェハーレス・タプスコットという得点能力の高いフォワード相手にディフェンスで奮闘。ゲーム1で15点、ゲーム2で14点を記録するなど、オフェンスでも群馬の2連勝に貢献した。

 スモールフォワードにポジションを変えたことによって、得点力と身体能力の高さを兼ね備えたトレイ・ジョーンズと普段の練習でマッチアップしてきた経験がプラスになっているのは明らかだ。八村はチームにおける役割を次のように語る。

「オフェンスは3Pショットだと思うんですけど、ディフェンスで今は4番ポジションで外からプレーしてくる選手が結構増えていますし、エースみたいな感じの選手もいます。そういった選手に僕が付くというのはヘッドコーチも考えていて、僕自身もそれができる選手だと思っています」

3&D以上に活躍できる選手を目指している八村 (C)B.LEAGUE
3&D以上に活躍できる選手を目指している八村 (C)B.LEAGUE

 群馬を率いて2年目の水野宏太ヘッドコーチは、今季の八村がディフェンスでレベルアップしていることに手応えを感じている。3Pショットとディフェンスで貢献できる3&Dの選手になることへの期待度は高まるばかりだが、八村自身はもっと貪欲だ。

「3&Dだけじゃなくて、その上の本当にチームに欠かせない中心選手になりたいと思っています。その過程でやっぱり3&Dっていうのは必要だなと思っているんですけど、それがゴールではなく、さらにその上がある。そこを目指してやっていきたいと思っています」

 今の目標についてはこう続ける。

「日本人の3番ポジションで一番の選手になりたいと思っています。僕よりも全然すごい選手が他にもたくさんいるので、その中でトップになるということが僕の目標です」

 その目標に近づくためには、質の高いプレーをして群馬の勝利に貢献し続けることだ。そうなれば日本代表選出の可能性も出てくるが、八村自身は選手としてレベルアップすることを最優先に日々を過ごしている。そして、群馬クレインサンダーズだけではなく、FIBAワールドカップの成功によって盛り上がった日本のバスケットボール界が発展するために、八村は一翼を担うつもりだ。

「小学生が結構見に来てくれるので、そういった子どもたちに夢を与えるということが僕たちの仕事というか、それがプロの仕事だと思います。そういった子たちに夢を与えるというアリーナも(群馬に)あります。Bリーグ自体がもっと伸びるはずなので、それに合わせて僕自身も選手として、人としても成長できるように頑張りたいと思います」

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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