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河村勇輝だけじゃない。ベンチから出てくる選手たちの貢献度が高いことも横浜の強み

青木崇Basketball Writer
ベンチから出てくる選手の質が高い今季の横浜 (C)B.LEAGUE

 10月15日の群馬クレインサンダーズ戦、横浜ビー・コルセアーズの河村勇輝は40点と大爆発。最後のショットが決まっていれば、172cmの小さなポイントガードが試合を完全に支配しての勝利を手にするところだった。昨季のB1やFIBAワールドカップで見せたように、今の河村は真のスーパースターが持つ勝負強さと試合を支配できる能力を兼ね備えている。

 しかし、横浜は決して河村のワンマンチームではない。先発ではないセカンド・ユニットの選手がベンチから出てきても、横浜はゲームの質を落とさないだけでなく、悪い流れを変えたり、リードを広げたりすることもできるくらい、層の厚いチームになりつつあるのだ。

 開幕からまだ4試合とデータ的に不十分なところはあるかもしれないが、ベンチスコアリングを調べてみると、横浜の平均29.25点はここまでB1で5番目に高く、相手ベンチ陣の得点数と比較したプラスマイナスは+5.25で4位タイという数字も出ている。

 京都ハンナリーズとの開幕戦、1Q序盤から中盤はボールの動きが停滞してしまい、河村が難しいショットを打たされるシーンも多かった。その時の状況を河村は次のように振り返る。

「スタートの入りは良くなかったところがあったんですけど、セカンドチームがディフェンスの強度を上げてきたところで、チームとしてセットをトーンしてくれたかなと思っています」

チームメイトに対してベンチからでも積極的にコミュニケーションを図る河村 (C)B.LEAGUE
チームメイトに対してベンチからでも積極的にコミュニケーションを図る河村 (C)B.LEAGUE

 そのきっかけを作ったのは、河村と交代でコートに入ってきた森井健太。ボール保持者に対してディフェンスで厳しくプレッシャーをかけ続けるだけでなく、ボールのないところでも簡単にパスをもらえない対応をするなど、横浜のタフなディフェンスを象徴するような存在だ。

 ディフェンスのギアが上がったことに加え、デビン・オリバーが得点機会をクリエイトし、キング開、大庭岳輝、松崎裕樹がオープンのショットをしっかり決めたことは、試合の流れを変えた点で大きな意味があった。

「ベンチから出てきてしっかりと違いを出してくれた選手がいっぱいいたので、そこに関してはまた昨季と同じように、しっかりと60試合を全員で戦うというベーシックな部分は見られたと思っています」と、青木勇人コーチは手応えを感じている。

 翌日の2戦目は土壇場までもつれた激戦に勝利という結果になったが、1Qで最大14点のリードを奪った際に得点に絡んでいたのは、キング、オリバー、大庭のベンチから出てきた選手たち。2Qにも松崎が3Pショットとドライブからのレイアップを決めるなど、ベンチ陣がオフェンスで貢献し、試合の違いをもたらすこともできるのだ。キングは2点リードで迎えた4Q残り12秒、ゴール下でオープンになりかけた前田悟のショットをブロックするというビッグプレーを決めている。

攻防両面で貢献度を増しているキング (C)B.LEAGUE
攻防両面で貢献度を増しているキング (C)B.LEAGUE

 先週末に行われた群馬クレインサンダーズ戦は、ディフェンスが緩くなったゲーム1で100点を奪われての敗戦。ゲーム2は河村が40点という大爆発を見せながらも、ラストショットが決まらずに2連敗という結果に終わった。

 ゲーム2の横浜は、河村以外のスターターがなかなか得点を奪えない前半に直面。それでも群馬にリードを広げられることなく接戦に持ち込めたのは、ゲーム1から明らかに強度を上げたディフェンスと、ベンチ陣が20点を記録したことが大きい。キングは今季のベンチ陣について、このような印象を持っている。

「京都の試合もそうですし、練習中からもそうなんですけど、今年は本当にいろんなことができる選手がたくさんいて、いろんなところから(得点機会を)クリエイトができると思っています。それはスターターもベンチ陣もそうなんですけど、やっぱりかみ合わなかったときに他人任せになっているかなと思います。そこは自分自身もちょっとセルフィッシュになってクリエイトするのもいいかなとは思っています。自分たちはパスが回れば回るほどいいオフェンスができているので、苦しい時間帯にどうオフェンスをアジャストし、ディフェンスをこじ開けていくかっていうのは、このシーズンのカギだと思っています」

 開幕から4試合連続のアウェイ戦を2勝2敗で終えた横浜。ホーム開幕戦は昨季のチャンピオンであり、セミファイナルで敗れた琉球ゴールデンキングス。これまでの戦いを振り返ると、新加入のジョシュ・スコット、杉浦佑成、西野曜がまだチームのシステムに順応しようとしている段階。彼らが一貫して持ち味を発揮できるようになるには、もう少し時間がかかるかもしれない。

 また、群馬とのゲーム2のように、横浜は河村に頼りきりの状況をできる限り避けたいところ。ここぞという局面で試合を支配できることは十分証明しているだけに、チーム力を上げていくことが河村の負荷を軽減することにもつながる。キングは河村任せになっている現状を改善するには、自身を含めたチームメイトのステップアップが欠かせないと認識している。

「周りの人たちがステップアップしないと、チャンピオンチームにはなれないと思っています。今後チームのみんなで話しながら、“どうやって勇輝の負担を減らせられるか?”。最後のクラッチタイムで勇輝が100%の状態で試合を決めるという場面に持っていけば、チームとしてもいいと思います」

 週末に対戦する琉球も、多くの選手がしっかり仕事を遂行できる選手層の厚いチームだ。プレーもメンタルもタフな王者相手に、河村を軸に多くの選手が攻防両面で貢献して勝利を手にできるかは、B1の頂点を目指している横浜の現在地を知るいい指標になるだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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