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【FIBAバスケットWC】リトアニア戦の負けを教訓に、攻防両面で質を上げたアメリカがイタリアに快勝

青木崇Basketball Writer
3P4本を含むチーム最多の21点を記録したブリッジズ (C)FIBA

「試合の最初から素晴らしいディフェンスをし、プレッシャーをかけ続けられた。ベンチ陣が出てきても変わらなかった。この時点では今大会で最高のディフェンスができたと思う」

 アメリカのスティーブ・カーコーチがこう話したように、イタリアがこの試合で互角に渡り合えたのは、1Q2分46秒にシモーネ・モンテキオが3Pプレーとなるレイアップで11対14とした時点まで。アメリカはブランドン・イングラムとオースティン・リーブスの3Pショットでリードを広げ、2Q序盤から中盤にかけて13−0の猛攻で一気に23点差とした。

リトアニア戦と違い、イングラムのようにディフェンスで激しくプレッシャーをかけ続けたアメリカ (C)FIBA
リトアニア戦と違い、イングラムのようにディフェンスで激しくプレッシャーをかけ続けたアメリカ (C)FIBA

 今大会のアメリカはアンソニー・エドワーズが得点源となっていたが、この試合でチームを牽引したのがミケル・ブリッジズ。2Qに8点を稼いでリズムをつかむと、3Q序盤にも左右のウイングから1本ずつ3Pショットを決めるなど、フェニックス・サンズからブルックリン・ネッツに移籍してから何度も見せたスコアラーとしての能力を存分に発揮。18分17秒間で11本中8本のFGを成功させるなど、チーム最高となる21点を記録したブリッジズは、試合をこう振り返った。

「試合の方向性を確立させることが必要だと、コーチ陣は強調してきた。スターターがスロースタートで少しチームを落ち込ませてしまったけど、後がなくなる状況まで待つことなく、40分間しっかりプレーすることが大事だ。コーチ陣がしっかり準備してくれたし、我々はハングリーな姿勢でプレーしていたと思う」

 後半になってもアメリカのディフェンスは強度を落とすことなく、フルコートでプレッシャーをかけるなど、イタリアにいい形でオフェンスを展開させなかった。それはイタリアのFG成功率が30.7%、3P成功数も7本に限定させたことでも明らか。また、タイリース・ハリバートンが6本決めるなど、チームとして36本中17本成功という3Pショットの大当たりも、100対63のスコアで大勝する要因となった。

 4年前のワールドカップでアメリカは、準々決勝でフランス、翌日の順位決定戦でセルビアに負けて2連敗を喫した。しかし、今回はリトアニア戦の敗北から中1日あったことで、イタリア戦に向けたゲームプランの構築と選手たちのメンタルアプローチを再確認できたことが大きい。司令塔のジェイレン・ブランソンは「全員が同じアプローチで臨み、それをもう少し良くさせる必要があったと思う。僕らにはいいマインドセットがあった。練習も集中してしっかりできていたし、少し調子が上がったように思える」とコメント。パオロ・バンケロも「あの敗戦で僕たちは目が覚めたと思う。チームとしても個人としても、ディフェンスの激しさが足りなかった。リトアニアに110点を取られたことは受け入れがたいことであり、僕たちはこの試合でしっかりチーム力を示せたと思う」と話したように、アメリカがリトアニア戦の負けを教訓にイタリア戦に臨んでいたのは明らかだ。

イタリア戦でチームとしての一体感が増したアメリカ (C)FIBA
イタリア戦でチームとしての一体感が増したアメリカ (C)FIBA

 準々決勝まで勝ち上がってきたチームであれば、どのチームにも頂点に立つチャンスがある。ここまで5戦全勝だったリトアニアがセルビアに圧倒され、19点差で敗れたことでも、実際に試合をやってみないと結果がどうなるかわからない。しかし、カーコーチはアメリカがリトアニア戦の敗北から学び、準決勝でもイタリア戦同様のメンタリティとハードワークで臨むことに自信を持っている。

「このグループで5週間やってきたけど、馬が納屋に引き返すとき、納屋が近いと感じるとペースを上げ始める。今の我々はそのような感じのことが起こっている。ここが旅の終着点だと感じているし、今夜はエナジーが高まり、ペースが上がり、力がみなぎっていた。この先に何があるのか、ゴールが何なのかをみんながわかっている。次の試合も同じエナジー、同じ力で臨んでくれることは間違いない」

 9月8日に行われる準決勝の対戦相手は、ドイツ対ラトビア戦の勝者となる。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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