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【FIBAバスケットWC】アメリカが27点差の大勝。ベンチから出てきたリーブスとバンケロが大活躍

青木崇Basketball Writer
3Pを決めてレイカーズでお馴染みのポーズを見せるリーブス (C)FIBA

 ワールドカップに向けたエキシビションゲームでアメリカは、スロベニア、スペイン、ドイツを破るなど、5戦全勝でマニラに乗り込んだ。スティーブ・カーヘッドコーチは、練習と試合を重ねるごとにチームのケミストリーが上がっていることに手応えを感じていた。

 ところが、8月26日の夜にニュージーランドと対戦したアメリカは、ワールドカップの初戦ということもあって、1Q最初の5分間でリズムに乗ることができなかった。ニュージーランドはルーベン・テ・ランギの3Pとシェーン・イリのドライブなどで9−0のランを見せた後、5分48秒にフィン・ディレイニーが3Pを決めたことで、14対4とリードを2ケタに乗せたのである。

 そんな嫌な流れを変えたのは、ベンチから出てきたパオロ・バンケロとオースティン・リーブスだった。3分9秒にリーブスがドライブでチャンスを作ると、パスをもらったバンケロが豪快なダンクでフィニッシュ。さらに、残り27秒でタイラー・ブリットのショットをブロックすると、タイリース・ハリバートンのアシストからリーブスが3Pを決めたことで、アメリカは1Q終了間際で19対16と逆転に成功する。

「自分たちが求めていたスタートを切れなかったのは明らかだ。映像を見直し、学ばなければいけない。ただし、最初の5分が経過した後は、自分たちのインテンシティとフィジカルへの対応がよくなった」とは、試合後のリーブス。2Q途中まで一進一退の攻防が続くも、リーブスがアリーナに駆けつけた1万978人の観客を沸かせるビハインド・ザ・バック・ドリブルから3Pショットを決めたことがきっかけとなり、アメリカは2Q終盤の9連続得点でリードを2ケタに乗せた。

 ニュージーランドは3Q中盤まで1ケタ得点差と粘りを見せたが、ファウルトラブルとなったジャレン・ジャクソン・ジュニアに代わりにセンターを任されたバンケロが爆発。ミドルレンジのジャンプショットと2本の3Pを決めるなど、2分弱で8点を稼ぎ、ニュージーランドを一気に引き離した。

攻防両面でチームに活力をもたらし、21点、4ブロックを記録したバンケロ (C)FIBA
攻防両面でチームに活力をもたらし、21点、4ブロックを記録したバンケロ (C)FIBA

 ファイナルスコアは99対72。バンケロがチーム最多の21点、リーブスも12点、6アシストを記録するなど、この日のアメリカはベンチ陣が54点、12アシストと試合の行方で大きな違いをもたらした。カーコーチは試合をこう振り返る。

「キャンプの初日からのメッセージは、“これはNBAじゃない、FIBAだ。我々には12人全員が必要だ”ということ。試合によって違った選手が活躍することになる。今夜はパオロがベンチから出てきて、3Pを2本を決めたのがすごかったし、フィジカルの部分やショットブロックも素晴らしかった。セカンドユニット全体があのスロースタートの後、チームにいい流れをもたらしてくれた。我々はそれでもいいと感じている。これまでの全試合、パオロがオースティン、タイリースと一緒のときはボールがよく動くし、ペースを変えられることからも、見るのが本当に楽しいグループだ」

 モール・オブ・アジア・アリーナに駆けつけたファンは、アメリカのどの選手よりもリーブスに大声援を送っていた。オールラウンドのスキルから生み出される一つ一つのプレーに対しての反応がすごいことからも、このワールドカップでリーブスの人気と知名度はますます上がるかもしれない。フィリピンでの人気について、リーブスは次のように語った。

「そうなることはなんとなく感じていた。それが特別なのはわかっている。みんなが知っているように、非常に小さな町で育った私が国を代表し、ここ(ワールドカップ)に来ることを期待していた人なんてほとんどいなかった。だから、彼らが私を受け入れてくれることはとても意味のあることなんだ」

 ロサンジェルス・レイカーズの若きスター選手となったリーブスは、より大きな責任と役割を受け入れる覚悟がある。もちろん、アメリカ代表としてプレーするワールドカップでも、自身の飛躍とチームの金メダルを獲得という目標に向けて前進し続けるに違いない。

「今の状況を気に入っている。だからプレーしたいんだ。すべての子どもたちがこの舞台に立ちたいと思っているし、私もワールドカップやオリンピックを観戦していた子どもの一人だった。 毎日目が覚めた時の瞬間を大切にしているし、それが当たり前だとは決して思っていない。才能ある選手たちと毎日プレーできるというのは、私にとって難しいことじゃない。その理由は、選手全員が無私無欲であり、チーム内にはエゴがないからだ」

ドライブからリバースレイアップでフィニッシュを試みるリーブス (C)FIBA
ドライブからリバースレイアップでフィニッシュを試みるリーブス (C)FIBA

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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