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思い切った世代交代でアンゴラをワールドカップへ導いたコーチ“ペップ”

青木崇Basketball Writer
ワールドカップ後にB3横浜で指揮官となるカナルスコーチ (C)FIBA.com

 8月25日に開幕するFIBAワールドカップの準備を進める日本代表と対戦したアンゴラ代表の指揮官は、Bリーグでもお馴染みのジョゼップ・クラロス・カナルス。“ペップ”というニックネームで知られるスペイン人コーチは、2021年からアンゴラの指揮官を務めている。

 1989年に初めて頂点に立って以降、アンゴラは20年以上に渡ってアフリカを代表する強豪国として、世界の舞台で戦ってきた。2006年に日本で開催された世界選手権(現ワールドカップ)では、グループを突破して9位という成績を残してきたが、2013年を最後にFIBAアフリカのタイトルを獲得できていない。チュニジアやコートジボワールといった国の台頭もあり、アフリカで勝つことが難しくなったことに加え、経験豊富なベテランに頼ってしまう状態が続いていた。

 そんな状況を打破するため、コーチ“ペップ”は思い切った世代交代を敢行。長年フロントラインを支えてきたヤニック・モレイラ(32歳、211cm)をメンバーから外すなど、前回のワールドカップを経験しているのは、ともに27歳のジェルソン・ドミンゴスとジェルソン・ゴンサルベスの2人しかいない。10代後半から20代前半の選手に対して何度もチャンスを与え、ワールドカップ予選では26人が少なくとも3試合に出場していた。

 コーチ“ペップ”が秋田ノーザンハピネッツでも使っていたフルコートで激しくプレッシャーをかけるディフェンスは、アンゴラが予選を突破できた最大の要因。有明アリーナでの日本戦でも、高い運動能力と腕の長さを武器にしたディフェンスからターンオーバーを誘発させ、得点に結びつけたシーンが何度か見られた。コーチ“ペップ”は現在のアンゴラについて、次のように語っている。

「このチームはワールドカップ予選で8連勝している。オーストラリアに次いで、我々は世界で2番目にディフェンスのいいチームだった。オーストラリアが59点で、私たちが60点だ。65点以下の試合では我々に勝機が生まれる。それ以上になってしまうと、まだ若いチームだから勝つのが難しくなる。今の我々は19歳、20歳、21歳の選手がプレーしており、ほとんどの選手は25歳以下だ。国際大会に出場したことのある選手は2人しかいない。たぶんいい方向に進んでいると思うが、まだまだ時間が必要だ」

 来日する前にベネズエラ、メキシコ、ポルトガル、ヨルダンと試合を行ってきたが、結果が1勝3敗とチームのケミストリーは構築できていない。その理由は、NBA選手であるブルーノ・フェルナンドと、NCAAの強豪カンザス大出身のシルヴィオ・ソウザの合流が遅かったからだ。

「2人の新戦力は20日遅れで到着した。練習も試合もほとんどやらずにプレーし始めた。だから、彼らは我々のプレーもシステムもまだわかっていない。そのため、私たちの進歩は少し停滞してしまった。ブルーノ・フェルナンドとシルビオ・ソウザが、他の選手たちよりもコンディションを上げ、他の選手と同じレベルに達しているかを確認しようとしているところだ」と説明したように、8月25日に行われるイタリアとの初戦で練習を積み重ねた成果が出ることを指揮官は期待している。さらなる飛躍を遂げるという意味でも、ワールドカップはアンゴラにとって成長する絶好の機会なのだ。

「我々がプレーしているレベルは、アフリカでベストになれると信じて疑わないし、そうなるかもしれない。しかし、それがわかるのは2〜3年後、あるいは4年後かもしれない。でも、若い選手たちが高いレベルでプレーできるようになるには、まだまだ時間がかかると思う。彼らのほとんどはアンゴラ国内だけでなく、国際大会に出場することでFIBAのバスケットボールをより深く理解することになるだろう。そして将来、アンゴラが15年前、いや、20年前のような強いチームになって戻ってくると確信している」

NBA選手のフェルナンドを含め、若い選手たちでワールドカップに臨むアンゴラ 写真提供:日本バスケットボール協会
NBA選手のフェルナンドを含め、若い選手たちでワールドカップに臨むアンゴラ 写真提供:日本バスケットボール協会

 11日と15日に試合をした日本についてコーチ“ペップ”は、ワールドカップで厳しい戦いを強いられるという認識を持つ。しかし、福岡と秋田でヘッドコーチを務め、日本のバスケットボール界が進化してきたのを自身の目で見てきたからこそ、現在に至る道のりに対しては、称賛の言葉を残してくれた。

「日本はラトビアやフィンランドと並んで、他のどの国よりも発展している。男子だけでなく、女子も、男子のアンダーカテゴリーもそうだ。JBAは東野(智弥技術委員長)を昔からよくサポートしているし、いいコーチを連れてきて、熱心に指導している。また、Bリーグではすべてのクラブが重要な役割を担っている。非常に優れた組織を持ち、うまく機能している。そして、選手たちはだれもが向上したいと思っているし、日本の文化はとても謙虚だ。

 例えば、今日は試合開始2時間前に一人の選手がシュートを打ちに来た。 最初にコートへ出てきたのは渡邊(雄太)だ。彼のようなすごい選手でも謙虚な姿勢があるという文化だから、日本にはまだまだ伸び代があると思う。ワールドカップは非常にタフなグループに入ったから、結果がどうなるか正直わからない。しかし、彼らがハードに戦い続けると思っている。ポイントガード陣が小さいから厳しいチャレンジに直面するけど、ビッグマンがどのようにヘルプするかにかかってくるだろう。日本はとても頑張っている。だから、私は彼らがベストを尽してほしいと心から願っている」

 ワールドカップ終了後、コーチ“ペップ”は再来日し、B3の横浜エクセレンスでヘッドコーチを務めることが決まっている。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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