Yahoo!ニュース

東京を圧倒した千葉ジェッツが誇る3Pショットの破壊力は、ファイナルでも発揮されるのか?

青木崇Basketball Writer
A東京戦で3Pを立て続けに決めた原に雄叫びを上げる富樫 (C)B.LEAGUE

 広島ドラゴンフライズとのゲーム1を2点差で落としたものの、千葉ジェッツはB1の最高勝率を更新したレギュラーシーズンと同様の強さを発揮し、2年ぶりの頂点奪回と三冠達成まであと2勝に迫っている。今季はジョン・パトリックが新ヘッドコーチに就任したものの、選手たちは攻防両面で戦い方の変化に見事対応。その中でも目を見張るのが、3Pショットで相手を圧倒できる点だ。パトリックコーチが重視しているのはオフボールの動きであり、その理由を次のように説明する。

「ボールが動かないでドリブルしすぎると、相手チームにとっては(ディフェンスが)やりやすい。ボールが動いていて、オフボールのムーブメントとかうちのカッティングがよいときは、オープンショットになって確率も上がる」

タフなディフェンスとハイパワーオフェンスで千葉をレギュラーシーズンの最高成績へと導いたパトリックコーチ (C)B.LEAGUE
タフなディフェンスとハイパワーオフェンスで千葉をレギュラーシーズンの最高成績へと導いたパトリックコーチ (C)B.LEAGUE

 今季の千葉は、レギュラーシーズンにおける3Pショット成功数の平均がリーグ1位の11.3本で、15本以上決めた試合が7つもある。チャンピオンシップ(CS)では広島とのゲーム2で記録した17本を最高に、勝った4試合はいずれも15本以上。成功率も40%以上ということでも、抜群の破壊力を持ったオフェンスと言えるだろう。

 この4試合に放たれた144本の3Pショットをチェックしたところ、ショットクロックが5秒以下でも成功率が50%。10秒以上(14秒で再開した場合も含む)残った状態だと、広島とのゲーム3を除くといずれも20本以上の試投数があり、東京戦の2試合は47.6%、55%という高確率で決めている。

CSの過去4試合における千葉が放った3Pショット一覧(筆者作成)
CSの過去4試合における千葉が放った3Pショット一覧(筆者作成)

 選手別の成功数ではクリストファー・スミスが14本、富樫勇樹とヴィック・ローが9本ずつ、原修太とジョン・ムーニーが8本ずつ。彼らはオープンになれば着実に決めるし、個の力でフィニッシュできる点も強み。富樫は次のように語る。

「バランスかな、ジェッツというチームは…。もちろんチームとして動いてるんですけど、半分ぐらい個に頼って、それが強みとしてチームにあると思っている。うまくボールを回す時間帯で、僕だったり、クリスや原も含めて自分のリズムで打ちたいときは、(ショットを)打ちにいくのも大事だと思う。なかなか入らないときこそボールを回すべきですし、勢いのあるときはもう自分が思うまま、自信を持って打ってほしいです」

ビッグマンにコンテストされても3Pショットを決める術を持っている富樫 (C)B.LEAGUE
ビッグマンにコンテストされても3Pショットを決める術を持っている富樫 (C)B.LEAGUE

 セミファイナルで千葉に敗れた東京は、レギュラーシーズンの平均71失点がB1で最少だった。レギュラーシーズンとCSを合わせて1勝5敗に終わった千葉相手だと、負け試合の最少が82失点で、89失点以上の敗戦が4回を数える。決められた3Pショット数も唯一勝利した試合は9本だったが、負け試合はいずれも11本以上。故障者続出による戦力不足があったとはいえ、セミファイナルの2試合では31本も決められていた。東京の得点源として奮闘した安藤周人は、「プライドを持ち、シーズンを通してリーグ最少失点というのがうちの強みですけど、この2試合とも80点以上取られているというのは、シーズン通してやってきたことができなかったと思う」と振り返る。東京のデイニアス・アドマイティスコーチは、千葉の強さをこう説明した。

「千葉さん本当にオフェンスの能力が高く、爆発力のあるチーム。ディフェンス面では4回、いろいろカバレージを変えて何とか止めようとしましたが、すべてを抑えることはやはり厳しかったです」

チャンピオンシップでの3P成功率が48.5%と好調なスミス (C)B.LEAGUE
チャンピオンシップでの3P成功率が48.5%と好調なスミス (C)B.LEAGUE

 ファイナルの相手は、天皇杯決勝で競り勝ち、レギュラーシーズンの対戦が1勝1敗という琉球ゴールデンキングス。マンツーマンでタフにディフェンスするチームに対し、天皇杯では15本、4月1〜2日の連戦でも13本ずつ3Pを決めている。しかし、懸念材料もある。CSでは全試合でペイント内の得点が20点台で推移しており、琉球に敗れた試合はシーズン最少の14点に終わっている。

 千葉の強みは活発な選手とボールムーブメントによって、ショットクロックが十分残っている状況でオープンの3Pショットに持ち込めること。しかし、ペイント内の得点が限定され、高い能力を持っていても個で打開する局面が増えてしまうと、琉球のペースに巻き込まれる可能性は高まる。

東京とのゲーム2で5本決めるなど、3&Dのガードとして存在感を増している原 (C)B.LEAGUE
東京とのゲーム2で5本決めるなど、3&Dのガードとして存在感を増している原 (C)B.LEAGUE

 千葉がファイナルで最高の結果を出すうえで重要なポイントは、間違いなくディフェンスと琉球の強みであるリバウンド争いで互角に戦えるか? ということになるだろう。オフェンスに目を向けてみると、ショットクロックが10秒以上残った状態で3Pショットの試投数が20本以上、45%以上の成功率、ペイント内で30点以上はほしいところ。仮にペイント内の得点が過去5試合同様20点台の場合は、フリースロー試投数が20本に到達するかに注目している。85点以上奪える展開に持ち込めるか否かも、勝敗を左右しそうな数字としてあげておきたい。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

青木崇の最近の記事