Yahoo!ニュース

真のオールラウンダーとして名古屋ダイヤモンドドルフィンズに欠かせない存在となった中東泰斗

青木崇Basketball Writer
琉球とのQFでもアグレッシブにプレーし続けた中東 (C)B.LEAGUE

 バスケットボールに限らず、スポーツにおける故障はゲームの一部と言われる。だが、名古屋ダイヤモンドドルフィンズは2年連続でチャンピオンシップ(CS)進出を果たしながらも、最後の最後まで故障者続出に泣いた。琉球ゴールデンキングスとのゲーム1でも張本天傑が右ひざ、スコット・エサトンが股関節を痛めて離脱となり、2連敗でシリーズを終える結果になってしまった。

「この1年を振り返ると、チームをとても誇りに思える。というのも、我々は1年を通してケガに悩まされ、他のどのクラブよりもひどく、健康な選手が足りずに試合に出られなくなったほどだ。そのような中でも、我々が成し遂げたことを実感できたことは、このグループにとって素晴らしい成果であり、とても誇りに思っている」

ショーン・デニスコーチは練習もまともにできない事態に直面しても、最後までタフに戦い続けた選手たちを称える。12人全員が揃った状態が5試合以下と言われた名古屋が今季もCSに進出できたのは、昨季に作り上げたタフなディフェンスとアップテンポなオフェンスという土台に支えられたことに尽きる。そんな厳しい状況下でも、日本代表の活動も含めて全試合に出場したガードの須田侑太郎とともに、中東泰斗の貢献度は平均8.2点、3.4リバウンド、2.4アシストの数字以上に高いものだった。

 明治大学から名古屋入りして以来、高い身体能力を活かしたドライブやディフェンスに定評のあった中東。一昨季にキャリア最少の平均4.8点を記録するなど、ポテンシャルを十分に出しきれないと感じさせる時期もあった。しかし、今季は齋藤拓実と伊藤達哉が同時に離脱した時期にはポイントガードをこなし、張本天傑が欠場している時にパワーフォワードとして外国籍選手相手に奮闘。また、キャッチ&シュートの3Pで得点する機会も増えた。琉球戦に敗れた後、どんなシーズンだったかという問いに対し、中東は次のように振り返る。

「個人的にはすごく1年で成長できたシーズンだと思ってて、本当にポイントガードから4番までいろんなポジションをやる中で、自分の中のスキルだったり、いろんなことがすごい良くなった1年でした。個人的には充実したシーズンを送れたんですけど、その中でチームを勝たせるようなプレーができなかったことがすごく悔やまれます。

(3Pショットについては)本当に今シーズンの自信がついてきて、小林(康法)アシスタントコーチと一緒に課題として取り組んできて、それが結構いい感じでやれています。これをベースに来プレシーズンに(成功率)40%ぐらい行けるよう目指したいです」

メンバーが揃わない中での戦いを強いられた名古屋にとって、オールラウンダーとしての資質があった中東が離脱しなかったことは、今季もCSに進出できた要因と言えよう。それは、デニスコーチが次のように称賛することでも明らかだ。

「多くの試合に出場し、毎日毎日コートに出て、仕事をこなし、高いレベルで安定したパフォーマンスを発揮することは、多くの選手にとって最も困難なことだ。彼のプレーにおける一貫性のレベルは、本当に向上した。そして、シーズンが進むにつれて、特にケガ人が出た時により大きな責任を背負うことになったとき、彼は自らがその役割を受け入れ、やり遂げようとしたことが最大の成果だと思う」

故障者続出の緊急事態の中でPGをこなした中東を名古屋のデニスコーチは称賛 (C)B.LEAGUE
故障者続出の緊急事態の中でPGをこなした中東を名古屋のデニスコーチは称賛 (C)B.LEAGUE

 2014年に入団して以来名古屋一筋のキャリアを過ごしてきた中東が、この2シーズンでデニスコーチからの信頼を勝ち取ったのは間違いない。また、チームがいい意味で変化したことを一番実感している選手というのは、次の言葉からでも明らかだ。

「ショーンさんが来てから勝つ集団のメンタリティになりました。例えば弱いチーム相手にちょっと昔だったら気抜いてポロッと負ける試合とかあったんですけど、やっぱりそういうところもなくなってきました。勝つ試合をしっかり勝つという文化ができてきて、今シーズンは最高勝率、43勝というのは今まで歴代でも最高なので、本当に人数が少ない中でもこれができたので、これを12人全員揃ってできるようになれば、来シーズンはもっと自分たちは上にいけるんじゃないかなと思います。やっぱりケガなくシーズンを戦いたいなというのがあります」

6月18日に31回目の誕生日を迎える中東だが、まだまだレベルアップが期待できる選手。今季の戦いで手にした自信を糧に、チームの中心選手としてより大きなインパクトを来季で残すことができるか否かは、名古屋がさらなる飛躍を遂げるためのカギになるような気がしている…。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

青木崇の最近の記事