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【金丸晃輔】短い出場時間でも役割を果たし、チームの起爆剤となって三遠の連敗脱出に大きく貢献

青木崇Basketball Writer
京都戦で復帰した金丸は2試合連続で2ケタ得点を記録 (C)B.LEAGUE

 12月17日の京都ハンナリーズ戦、三遠ネオフェニックスは2Q序盤の14点差を逆転しての勝利で、連敗を8でストップした。ヤンテ・メイテン、カイル・コリンズワース、金丸晃輔の故障欠場は、なかなか勝ち星に縁のない状況に陥った要因。だが、8連敗を「初めての経験です」と話した大野篤史コーチは、故障者続出による駒不足を決して言い訳にせず、何とか勝利を手にするための術を見出そうとしていた。

 三遠にとって11月20日の秋田ノーザンハピネッツ戦以来となる勝利は、2Q途中から使ったゾーン・ディフェンスで京都のリズムを失わせたことが大きい。16点差を逆転した翌日の2戦目も、京都の3Pショットが34本中6本成功という数字を見れば、ゾーン・ディフェンスの効果があったのは確か。大野コーチは17日の試合後、会見で次のように振り返った。

「本来、ゲームのスタートというのはハイパワーで入るべきで、エナジーレベルがかなり低かったところにプラスして、オフェンスに消極性というのがあった。致し方なく打開するにはゾーンかなというところで、うまくはまってくれたので多用した」

 ゾーン・ディフェンスが機能したことに加え、1か月半以上欠場していた金丸の戦列復帰がチームに自信をもたらしたことも忘れてはならない。復帰戦での金丸は前半だけで11点を稼ぎ(計15点)、三遠が14点差リードされた状況から追撃し、ハーフタイムまでに逆転に成功する原動力になった。翌日の2戦目も前半に最大で16点差をつけられたものの、金丸が9点差を追う3Q序盤で立て続けに3Pショットを決めたことが逆転勝利へのきっかけになり、三遠は敵地で2連勝を手にしたのである。大野コーチは連敗を8で止めた後の会見で、金丸のプレーについて次のように表現した。

「彼が本当に“Play your role”、自分の役割というのを見せてくれたのはすごく大きかったと思います。もっと使いたいんですけど、メディカルのほうから止められているので、今日はあれくらいのプレータイム(13分28秒)になりました」

 金丸自身は「多少流れを変えられたかな」と話す一方で、戦列に復帰する前から試合序盤におけるチームのパフォーマンスを懸念していた。その理由は、オフェンスが消極的になってしまうことで、ディフェンスに悪影響を及ぼしていたという点。金丸はこう説明する。

「今日だけじゃなく、ここ数試合はゲームの入りが悪く、何が悪くてあのようになってしまうのかと言ったら、(ショットを)打てるところで打たなかったり、それをディフェンスで引きずる。本当はディフェンスでしっかり守り切って、オフェンスがダメでもディフェンスで守り切ってという風にやらないといけないのに、ディフェンスでもズルズル引きずってしまい、どちらもいい味を出せていない状況が続いていました」

経験豊富なベテランとして後輩たちの成長の助けになろうとしている金丸 (C)B.LEAGUE
経験豊富なベテランとして後輩たちの成長の助けになろうとしている金丸 (C)B.LEAGUE

 京都戦で最悪に近いスタートを切りながらも、金丸の得点とゾーン・ディフェンスが機能してのカムバックによって勝利を手にした三遠。ゲームの入り方が悪く、そのまま自分たちの流れに持ち込めなかった連敗中との違いは、金丸がコートに入るだけで相手の脅威になれること。京都との2連戦は、「長い時間出るわけじゃないので、短い時間で流れを引き戻す。あとはいいリズムを他のメンバーでも試合を通してやれるような、起爆剤的な感じになれたらと思ってやっています」という言葉通りのパフォーマンスを発揮し、勝利に貢献したことは明らかだ。

 連敗地獄からようやく脱出した三遠は、今後の戦い次第でB1中地区のチャンピオンシップ進出争いに絡む可能性を秘めている。川崎ブレイブサンダースが14勝7敗で首位に立っているものの、ゲーム差なしの状態にある2位のサンロッカーズ渋谷、3位の横浜ビー・コルセアーズ、4位の信州ブレイブウォリアーズとは、わずか1ゲームの差しかない。

 たとえ限られた出場時間であってもコートに立つことができれば、金丸は今後もゲームで大きな違いを作ることができる選手であり続けるだろう。そして、点取り屋としての仕事だけでなく、経験豊富なベテランとしてのリーダーシップを発揮することが、自身の成長とチームにとって大きなプラスになると金丸は認識している。

「ただ点を取るだけではなく、ベテランとしてゲームの流れを読んでポイントガードに指示をしたり、“今の時間帯はこういうことをしなければいけない”というのを60試合、練習も含めて言い続けていかないといけない。今まではただ点を取るだけで喋らなかったんですけど、そういうわけにはいかない。やってきたことや経験してきたことを今度は後輩にも伝えていかなければいけない。そういう役割をまだできていないかもしれないですけど、少しずつやっていけたらと思います」

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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