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大阪エヴェッサに欠かせない戦力として、完全復活への第一歩を歩み出した橋本拓哉

青木崇Basketball Writer
信州との初戦で今季ベストとなる11点を記録した橋本 (C)B.LEAGUE

「まだ自分自身に納得はいってない」

 10月15日の信州ブレイブウォリアーズ戦で3Pショット1本を含む11点、2アシストを記録し、大阪エヴェッサの勝利に貢献した橋本拓哉。しかし、完全復活への道のりを歩み出したばかりということもあり、決して満足することはなかった。

 大阪のユースチームで育った27歳のガードは、2012年に17歳でbjリーグの試合に出場。Bリーグになってからは非凡な得点力を武器に19−20シーズンに10.5点、20−21シーズンには13.4点を記録していた。ところが、これから全盛期というタイミングで、右アキレス腱断裂という大ケガに2度も直面してしまう。1回目は2021年3月3日の信州戦、2回目は復帰に向けて本格的にチーム練習に参加することにOKが出た直後。長くて厳しいリハビリの日々を過ごした後に迎えた10月1日の千葉ジェッツ戦で、橋本は1年半ぶりにB1の舞台へ帰ってきたのである。

 久々の実戦ということもあり、持ち味を発揮することやゲーム感を取り戻すには時間が必要だ。しかし、ベンチから出てきて11点を記録した信州との1戦目は、橋本が大阪に欠かせない重要な戦力だと再認識させるに十分なパフォーマンスだった。今季からチームを指揮するマティアス・フィッシャーコーチは、橋本を次のように称賛している。

「拓哉のパフォーマンスについてはとてもハッピーだ。深刻なケガをしてしまって1年半プレーできなかったけど、すごく前向きだったし、カムバックして試合でプレーしたいという強い思いを持っていた彼を私はとても気に入っている。練習中に何ができるかを観察しているのだけど、シュートやドライブやパスのスキルに関しては毎回驚かせてくれるし、素晴らしい可能性を秘めている選手だ。彼の力はこれからもチームにとって必要になってくると思う」

 3シーズンぶりに大阪に戻ってきたショーン・オマラも、橋本の復活がチームにとって大きな意味があると認識している。

「数年前に大阪で一緒にプレーしたけど、拓哉はチームにとって欠かせない選手だ。大ケガから戻ってきてくれたことがうれしいし、この試合でリズムを取り戻してくれたと思う。我々が信じていることを拓哉はわかっているはずだし、我々が知っている以前の拓哉が戻ってくることを楽しみにしている」

 大阪の勝利に貢献した翌日の橋本は18分44秒間のプレーで4点、チームも63対79で信州に敗戦という結果に終わった。世界的に見ても、週末の同一カード2連戦というのはBリーグしかない。そのような日程の中で橋本が質の高いパフォーマンスを発揮し続けるようになるためには、もう少し時間が必要。フィッシャーコーチはそのことを十分に認識している。

「拓哉は自身の身体に対して自信を取り戻さなければならない。ディフェンスでは多くのことをやらなければならないから、まずは自分のことを信じ、身体のことを考えすぎないことだ。とにかく反応し、本能に従ってディフェンスすることだ。オフェンスでも最初の4試合、拓哉はシュートを打ちたがらなかったし、少し躊躇していたところもあった。久々の試合だからそうなるのは理解できるし、ディフェンスはオフェンス以上に時間がかかると思っている」

 2021年2月13日の富山グラウジーズ戦で34点を奪うなど、故障する前の橋本はB1で数少ない2ケタ得点を計算できる日本人選手だった。ドライブやジャンプショットなど多彩な得点パターンを持っており、心身両面で試合感覚を取り戻すことができれば、対戦相手にとっては厄介な選手になることは明らかだ。

 また、大黒柱であるディージェイ・ニュービルをサポートするスコアラーとして橋本の貢献度が増すことは、大阪にとって大歓迎の要素。「コンディションを取り戻してチームの勝利に貢献したいし、仲間を活かしたプレーをもっとしていきたい」と語る橋本は、昨季逃したチャンピオンシップの舞台に戻るという成果をチームが出すうえで、カギを握る存在と言っていいだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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