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【Bリーグアジア特別枠選手に直撃】「チームメイトにチャンスを作ることが僕の役割」サーディ・ラベナ

青木崇Basketball Writer
マッチアップしていた親友のラモスを抜いて切れ込むラベナ (C)B.LEAGUE

 2020年の夏、サーディ・ラベナが三遠ネオフェニックスと契約したことは、フィリピンの選手がBリーグでプレーするという選択肢の扉を開くことになった。入団後に新型コロナウィルス感染や故障に直面しただけではなく、チームも苦戦を強いられて下位に低迷。しかし、ラベナは自身の可能性を信じてハードワークの日々を過ごし続け、この夏にはフィリピン代表として国際試合を戦うチャンスを手にした。

 三遠で3年目となる今季は、開幕戦からオールラウンドなプレーでチームへの貢献度が増している。10月2日の川崎ブレイブサンダース戦では18点、9リバウンド、6アシスト、9日のレバンガ北海道戦でも10点、9リバウンド、6アシストを記録。今季から三遠を率いる大野篤史コーチは、「持っているポテンシャルを顕在化できていないのが実際のところ。いいパフォーマンスをしていますけど、まだまだやれると思っていますし、その可能性を楽しみにしています」と評価している。三遠が北海道相手に2連勝を成し遂げた後、ラベナが1対1でインタビューに応じてくれた。

(取材協力:三遠ネオフェニックス)

Q 週末のホームゲームで2連勝というのは、ラベナ選手が出場した試合だと初のことですけど、北海道との2試合はどうでしたか?

「僕たちの戦いぶりにはとても満足しています。完ぺきな試合ではなかったけど、それでも僕たちは激しく、自分たちができることをやり続けました。いつもうまくいくわけではありませんが、ミスはあってもインテンシティとディフェンスで補っていくことが大事なのです。最終的にはディフェンスが勝利につながりますから…」

Q 前週の川崎戦と違い、勝利を手にできた理由とは?

「僕たちにとっては、先週もいいゲームだったと思います。川崎は決して弱いチームではないし、リーグ全体の中でも強いチームの一つです。本当に僕らよりも経験が豊富で、あの試合ではよりタフだったのです。でも、シーズン序盤にそういう経験をするのはいいことですし、川崎がやっているようなゲームの勝ち方を学ぶことにもなります」

Q ドワイト・ラモス選手とのマッチアップで楽しみにしていたことや難しいと思えることとは?

「ドワイトはとてつもない選手。3Pも打てるし、アタックもできるし、(身体も)強靭です。だから、ドワイトをディフェンスするときには何が起こるかわからないから、まったく気が抜けません。だから、彼をディフェンスすることが難しいのです」

Q フィリピン代表としてFIBAアジアカップとワールドカップ予選に出場しましたが、この夏の経験を今季どう活かしたいと思っていますか?

「代表で得た経験をそのまま活かしています。多くの試合に勝てたわけではありませんが、僕たちにとってはいい教訓です。特にジョーダン・クラークソン(ユタ・ジャズ)がチームに加わったとき、彼のゲームを見て“NBAで活躍するためには何が必要なのか”、“NBAで高いレベルの選手になるためには何が必要なのか”を学びました。それが僕にとってのモチベーションであり、自分が本当に遠く離れたところにいることを実感させてくれました。自分がなりたい選手となるにはまだ程遠いから、もっと頑張ろうという気持ちにさせてくれるんです。今は、次のレベルの選手になるために本当に必要なことに集中できています」

Q 今の三遠は再建を進めています。今季における最大のチャレンジ、期待する部分とは?

「最大のチャレンジはチームとしてまとまること。今いるメンバーたちはみんないい選手なので、お互いのプレーを学び、慣れていくことです。それは、試合を重ねるごとに実感できますし、一番大事なことはお互いの強みをすべて引き出し、その強みの中で常にプレーすること。だから、試合中は何を見つけるべきか、それぞれの選手がどこにいるのかを把握することによって、チームは強くなっていくと思っています」

Q 大野コーチからはどんなことを求められていますか?

「よりクリエイティブになること。チームにはたくさんのスコアラーがいます。(金丸)晃輔もいますし、いつでも得点できるヤン(ヤンテ・メイテン)とZ(アイゼイア・ヒックス)もいます。オフェンス面で大きな脅威となる(佐々木)隆成、今日5本の3Pを決めた(細川)一輝もいます。僕はチームが必要としている部分を埋めることを意識しています。ペネトレーションやチームメイトのためにセットアップを行い、そうすることでディフェンスがオープンになり、僕はアタックできるようになるのです。僕がチームメイトに(オフェンスが始まってから)早い段階でショットを打たせ、彼らがそれを決めてくれたら、ディフェンスはより広い範囲で対応することになります。そうなれば相手は彼らに集中することになりますし、そのタイミングで僕もアタックできます。だから、どの試合でもチームメイトのためにチャンスを作ることが、自分の役割だと思っています」

Q 金丸選手の名前が出ましたが、彼と一緒にプレーしてみてどんな印象をお持ちですか?

「今までとは違う経験をしています。彼はとても静かな人ですけど、自分の役割やできることを間違いなくわかっていて、とても自信を持っています。だから、彼が自信を持っていることは、僕も自分に対してより大きな自信を持つことができることにつながっています。彼がボールを持てるときのチャンスに備え、できる限りパスできるように心掛けています。彼がボールを持ってからショットを放つと、体育館にいる全員がそのボールが(バスケットに)入ることを知っていますからね。だから、彼のような選手がチームにいることは、本当に素晴らしいことです」

Q あなたはフィリピン人選手が日本でプレーするということで、扉を開けることになりました。そのような思いに至る原動力はどこから来たのでしょうか?

「以前からずっと言っていることですけど、僕の最大の目標はとにかく最高の選手になること。日本に来れば、その目標を達成できるような気がしたから、そうしたのです。そうすることで、他の選手たちも自分や家族、自分の夢のために良い機会を作ることができます。僕は素晴らしいボーナスのようなものだったと感じています。こんなに大きなことになると思っていませんでしたが、Bリーグは僕たちを受け入れてくれましたし、フィリピンと日本の関係も後押ししてくれていることにとてもハッピーです。私たち選手のためだけではありません。2つの国のためになりますから、僕たちはその関係の橋渡し役として行動しているのです」

Q 三遠というチームに何をもたらしたいですか?

「エナジーと激しさ。特に試合のスタートではそれが必要だと感じています。僕は最高のスキルを持った選手ではないけど、ハードワーカーとしての資質を持っています。コートにいるときは、いつでもチームにエナジーをもたらす必要があります。僕が疲れたら、ベンチにはいつでも代わりを務められる選手がたくさんいますし、彼らを全面的に信頼しています。だからこそ、僕はすべてを出し切れるし、ベンチにいたとしても僕たちは大丈夫と思えるのです」

Q 次の茨城ロボッツ戦に向けての意気込みを話してもらえますか?

「とても気合が入っています。初めてのアウェイゲームなので、大変なチャレンジになるでしょうし、茨城はタフなチームです。今週末の試合で築いた勢いをそのまま継続することが大事ですし、僕たちは本当にそれを強く望んでいました。単に1勝するためだけではありません。その勢いに乗って(茨城で)2連勝できたらいいなと思っています」

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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