U16日本代表は、カタールのドーハで開催されたアジア選手権でタフな戦いを勝ち抜き、八村塁がいた2014年以来となるU17ワールドカップの舞台に立てることになった。オーストラリアとの決勝戦は、3Q途中で2点差と食らいついたものの、63対94のスコアで敗戦。選手層の厚さと質の高いチーム力を見せつけられる結果になったが、アンダーカテゴリー代表が世界と戦う機会を得たという点で、大きな成果を手にしたと言っていい。

 昨年のU19ワールドカップを指揮した佐古賢一コーチ(現レバンガ北海道)の後任となったアレハンドロ・マルティネスコーチは、スペインと中国で育成世代を指導してきた経歴の持ち主。短い準備期間の中でも戦えるチームをしっかり作り上げたことは称賛に値する。大会MVPに選出された川島悠翔(福岡大学附属大濠高)を軸に、石口直(東海大学付属諏訪高)がゲームメイク、武藤俊太朗(開志国際高)と小川瑛次郎(羽黒高)が3Pショット、渡辺伶音(福岡大学附属大濠高)がリバウンド、内藤耀悠(レバンガ北海道U18)がフィジカルなプレーで貢献したことが大きい。マルティネスコーチは、オーストラリアとの決勝戦後に次のようなコメントを残している。

「選手たちの将来にとって、とてもいい経験になりました。決勝トーナメントに進出することが可能なチームであることがわかったことは、次の世代にとっても重要なことです」

アレハンドロ・マルティネスコーチ (C)FIBAAsiaCup
アレハンドロ・マルティネスコーチ (C)FIBAAsiaCup

準々決勝の組み合わせで大きな意味があったフィリピン戦の勝利

 新型コロナウィルスの影響で中国とチャイニーズタイペイが出場を辞退したため、日本はグループ戦での戦いがクウェートとフィリピンの2試合だけになった。2勝すればグループ1位で自動的に準々決勝に進めるだけでなく、オーストラリアと決勝まで顔を合わせずに済む。

 6月14日のフィリピン戦は、日本の命運を左右する試合だった。その理由は、河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)や富永啓生(ネブラスカ大)がいた2018年のU18アジア選手権では、グループ戦での敗北が痛手となり、準々決勝でオーストラリアに大敗してワールドカップの出場権を逃すという過去があるからだ。

 そんなビッグゲームでチームを牽引したのが、16歳で昨年のU19ワールドカップを経験した川島。試合開始早々からアグレッシブにゴールへアタックする姿勢を見せながら、オープンの3Pショットやキックアウトのアシストを決めるなど、前半だけで21点という大活躍。後半にショットの精度が落ちたとはいえ、26点、18リバウンド、3アシストで、73対67のスコアでフィリピンを破る原動力になった。

「悠翔はいい仕事をしたと思いますが、我々は彼とともに努力し続けなければなりません。彼の努力とグループへのコミットメントにはとても満足している」とは、フィリピン戦後のマルティネスコーチ。アメリカの高校でプレーするケイラム・ハリスら、能力の高い選手を揃えたチーム相手に競り勝った経験は、準々決勝のインド戦でも生きることになる。

主力のレベルが非常に高いインドを撃破してのワールドカップ出場権獲得

 川島がフィリピン戦に続いて好調を維持したことで、日本はハーフタイムを迎えた時点で15点のリードを奪った。しかし、大会ベスト5に選ばれたクシャル・シン(この試合で31点)を止められないだけでなく、ハーシュ・ダガールとロケンドラ・シンへのディフェンス対応にも苦労する。4Q残り1分34秒で2点差に詰め寄られたものの、1分7秒に小川がドライブでフィニッシュすると、24秒に川島がこの試合32点目となる3Pショットでダメ押し。日本はインドの猛追撃を土壇場のビッグショット連発でなんとか振り切り、ワールドカップの出場権を獲得した。

 インドは日本に敗れたものの、その後の順位決定戦でイランと韓国を破っての5位。チーム史上最高の結果を残したことからも、日本にとって難敵であったことは間違いない。「インドは素晴らしいレベルの選手が4人(いずれも平均15点以上)いる良いチームです。私たちのゲームプランは、背番号6を抑えることでしたが、この作戦はうまくいったと思います」とマルティネスコーチが話したように、前のインドネシア戦で6本の3Pを含む27点と爆発したジャイディープ・ラソーレを5点に抑えたガード陣の奮闘も称賛に値する。11点、7アシストを記録し、ラソーレとのマッチアップで奮闘した石口は、試合をこのように振り返った。

「この試合に勝つことができて、ホッとしています。日本代表としても、自分自身としても大きな勝利です。悠翔は自分の仕事をしてくれました。ペイントへのアタック、インドがプレッシャーをかけようとしたときのボールの受け方。彼の活躍がチームを勝利に導いたことは間違いないです。

 インドはマンツーマン・ディフェンス、2-3ゾーン、1-3-1ゾーン、そしてフルコート・プレスまで試してきました。その柔軟なディフェンスに対して、僕たちはオフェンスをアジャストしきれませんでした。しかし、僕はポイントガードとしてワイドオープンのショットを打たせることに集中し、それを実現できたと思います」

 インド戦での日本は川島が6本、小川が5本成功させるなど、オープンの3Pショットを打てる機会を数多く作り出すことに成功。高確率(30本中13本成功の43.3%)で決めることができたのは、アグレッシブなペイントアタックと活発なボールムーブが遂行されていたことを示すものだった。

K.シンとの激しい点取り合戦を演じながら土壇場で3Pを決めてワールドカップ進出の原動力となった川島は、大会MVPに選出 (C)FIBAAsiCup
K.シンとの激しい点取り合戦を演じながら土壇場で3Pを決めてワールドカップ進出の原動力となった川島は、大会MVPに選出 (C)FIBAAsiCup

ワールドカップに向けていい準備になったニュージーランド戦の勝利とオーストラリア戦の経験

 ニュージーランドとの準決勝は、ワールドカップ進出を決めたことが大きな自信となり、今大会最高のパフォーマンスを見せた日本が99対79で快勝した。川島は1Qだけで17点を稼ぐなど大会ベストの38点をマークし、武藤が14点、内藤が13点、石口が9点、9アシストとエースをしっかりサポート。ニュージーランドのディフェンスに対し、バックドアを効果的に使って何度も得点するなど、日本は最大で24点のリードを奪っていた。マルティネスコーチは試合について次のようなコメントをしている。

「選手、スタッフ一同、本当にうれしく思っています。みんなが一生懸命に取り組んでくれて、質の高いバスケットボールをした結果、決勝に進出できたと思っています。バックドアについてですが、私を知っている人は、私がとても好きな戦略であることを知っています。そして、選手たちはそれを完璧に理解しています」

 オーストラリアとの決勝戦は大敗という結果になってしまったものの、ペイント内での失点を限定させることとリバウンドの重要性を知ることができた点で大きなプラス。世界レベルのサイズとチーム力を体感できたニュージーランド戦とオーストラリア戦の経験が、U17ワールドカップに生かせると武藤は認識している。

「ワールドカップではブロックショットが非常に多いので、簡単にレイアップを決めるわけにはいかないでしょう。だから、得点力、ドライブ力をつけていかなければなりませんし、3Pショットも積極的に打っていきたいと思います」

 7月2日にスペインのマラガで開幕するU17ワールドカップ。日本はグループBでドミニカ共和国、スペイン、リトアニアと対戦する。この3試合の結果を経て決勝トーナメントに臨むだけだが、まずはグループ戦で1勝することがベスト8進出を成し遂げるうえでのカギになるだろう。どの試合も厳しい戦いに直面することになるが、マルティネスコーチは可能性を秘めた選手たちの成長を楽しみにしている。

「ワールドカップでは、非常に強力なチームと対戦することになります。スペインやリトアニアは準決勝に進出することが多いチームですし、ドミニカ共和国はこの種の大会にいつも良いチームを連れてきてくれます。選手たちは、国際試合で経験を積み、学び続けなければなりません。そして、その選手たちは、バスケットボールのあらゆる面で向上し続けなければなりません。より良くなるための努力をやめる必要はないのです」

U17 FIBAワールドカップ スペイン2022 公式サイト:https://www.fiba.basketball/world/u17/2022