琉球の野望を打ち砕いた比江島の強気なドライブ

 試合開始早々の9連続得点でゲーム2の主導権を握った宇都宮ブレックス。しかし、団結の力をスローガンに戦い続ける琉球ゴールデンキングスは、リーグ最高勝率を残したチームとしてのプライドを見せる。4Q中盤に10点差をつけられたところから追撃し、残り59秒に今村佳太が左コーナーから3Pショットを決めると、宇都宮のリードは2点まで縮まった。

 そんな琉球の粘り強さに終止符を打ったのは、Bリーグになってから頂点になかなか届かず、悔しい思いをし続けていた比江島慎。残り46.5秒、得意のドライブからゴールへアタックすると、ヘルプからディフェンスしてきたジャック・クーリーにファウルされながらもレイアップでフィニッシュ。ショットを決めた直後、試合中あまり感情を表に出さない比江島は、ジャージーの胸元を突き出しながら、宇都宮のファンが埋まるスタンドに向けて雄叫びをあげていた。その瞬間をこう振り返る。

「感情のままに喜びを表現しました。苦しい状況の中で決め切ったところがうれしかったです」

 残り2.5秒にもスティールからレイアップを決め、悲願だったB1チャンピオンシップを獲得した比江島は、試合終了と同時にいろいろな思いが頭をよぎったのか、目から自然と涙がこぼれていた。82対75のスコアで勝利した直後の場内インタビューでは、言葉を出すのに苦労しながらも「(昨年)同じ舞台で不甲斐ないプレーをして、個人としてもチームとしてもすごく成長を感じられたシーズンだったので、すごくうれしいです」とコメント。ゲーム1で17点、ゲーム2でも24点とオフェンスでチームを牽引したことからすれば、比江島のファイナルMVP選出に異論はないだろう。

試合終了後に喜びを爆発させた比江島 (C)B.LEAGUE
試合終了後に喜びを爆発させた比江島 (C)B.LEAGUE

悔しい思いの繰り返しだったB1制覇への道のり

 洛南高でウインターカップ3連覇、青山学院大でインカレ2連覇、アイシン(現シーホース三河)でNBL(2014-15シーズン)と天皇杯(2016年)の優勝を経験するなど、これまで何度も頂点に立つ喜びを味わってきた比江島。しかし、Bリーグが創設されてからは悔しい思いを何度も味わってきた。

 2017年はブレックスアリーナ宇都宮で行われたセミファイナル。5分ハーフという特殊な形で行われたゲーム3の残り30秒で2点をリードしていたが、オフェンスで2度の判断ミスを犯してしまい、残り2秒で栃木に逆転されての敗北を経験する。母の急逝後に挑んだ翌年のクォーターファイナルは、母の日のゲーム2でビッグショットを決めて栃木に雪辱したものの、セミファイナルでアルバルク東京相手にホームでの連敗を喫して頂点に立てなかった。

 2019年1月に宇都宮へ移籍からの比江島は、ディフェンス面で著しく成長を遂げていたものの、スコアラーとしての持ち味をなかなか発揮できない時期が続く。それでも辛抱強くプレーしながらチームに貢献し、昨季は自身初となるB1ファイナルの舞台に立った。しかし、千葉ジェッツと対戦したファイナルでは、3点を追うゲーム3の残り1分44秒にオフェンシブ・ファウルをコールされてファウルアウトとなり、チームメイトたちと最後まで戦うことができずに終わっていた。

開幕戦がプロローグだったチャンピオンシップでの大活躍

 長年チームを牽引してきたライアン・ロシターとジェフ・ギブスが抜けた今季、宇都宮は開幕戦で群馬クレインサンダーズに連敗というスタートを切った。2試合とも延長にもつれる激戦での敗戦だったが、決まれば勝ちという4Qのラストショットを打ったのは比江島。ミスショットになってしまったが、“自分がチームを勝たせるんだ”という意識を持っていると感じさせるものであり、ファイナルだけではなく、チャンピオンシップを通じてのビッグプレー連発は、群馬戦がプロローグだったという気がしている。安齋コーチは比江島について次のような言葉を残した。

「マコは昨シーズンめちゃめちゃ頑張ったけど(頂点に)届かなかった。今シーズン届いたというのは、いろいろな要素があると思います。その中でマコは悔しさをしっかり出そう、チームをひっぱろうという気持ちにどっかからなってくれたことが、チャンピオンシップの連勝につながっている部分だと思います」

 ポストシーズンでの6試合、比江島は20点以上を3回記録していた。そのうちの2回は川崎ブレイブサンダースとのセミファイナル、琉球とのファイナルで決着をつけたゲーム2。高校や大学時代に何度も見せたようなビッグプレーの連発でB1の頂点に立っただけでなく、ファイナルMVP選出という最高のフィナーレを迎えられたのは、比江島が何度も味わった悔しさを糧に努力し続けたことに対する最高のご褒美だった。

「ここまで長かったです。ブレックスに移籍してからも難しい状況の中というか、本当にいろいろな戦術を理解するのに時間がかかったりとか、いろいろなことがありました。それを乗り越えたから成長をこの1年間で一番感じられたし、チームメイトだったり、(安齋)竜三さんを含めたスタッフ陣が自分を信じてくれたおかげでもあります。結果で証明できたことが一番です」(比江島慎)