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【B1ファイナル】大学時代を思い起こさせるようなビッグパフォーマンスで勝利に貢献したフィーラー

青木崇Basketball Writer
ダブルダブルの活躍で勝利に大きく貢献したフィーラー (C)B.LEAGUE

 2013年のNCAAトーナメント。第15シードだったフロリダ・ガルフ・コースト大は、1回戦で第2シードだった強豪ジョージタウン大を撃破。宇都宮ブレックスのチェイス・フィーラーは当時、豪快なアリウープを含む3本のダンクを成功させるなど、全米中が熱狂するマーチマッドネスの大舞台で強烈な存在感を示した実績がある。琉球ゴールデンキングスとのB1ファイナル・ゲーム1、4Q8分9秒にオフェンシブ・リバウンドを直接叩き込んだダンクは、ダンクシティと呼ばれたフロリダ・ガルフ・コースト大でのプレーを思い起こさせるものだった。

 川崎ブレイブサンダースとのセミファイナルでも、フィーラーはゲーム1で18点、7リバウンド、ゲーム2でも12点、9リバウンドを記録。得点能力の高いニック・ファジーカス相手でもタフなディフェンスで対応するなど、攻防両面における質の高いパフォーマンスは、琉球とのゲーム1でも継続していた。

 ジョシュ・スコットのファウルトラブルで1Q6分53秒に出番が回ってくると、フィーラーは2本の3Pショットと宇都宮が初めてリードを奪うことになったポストアップからのフィニッシュで得点。激しいディフェンスで削り合うロースコアの展開となった前半で10点を稼いだことは、宇都宮が3点のリードでハーフタイムを迎える要因になった。

「今日は本当に我慢の試合でしたけど、選手たちがずっと我慢して最後に勢いを持ってくることができたので、こういうゲームになったと思います」とは、試合後の安齋竜三コーチ。3Q途中の琉球に流れが行きそうな局面でドライブとオフェンシブ・リバウンドから得点するなど、フィーラーはB1ファイナルというビッグゲームで違いをもたらす存在になっていく。そして、4Q序盤に決めた豪快なダンクは、宇都宮が10連続得点で逆転してリードを4点に広げたことに加え、琉球の失速につながるきっかけとなった点でも、大きな意味があった。

 宇都宮は得点源の比江島慎が17点中10点を4Qで稼いだことで一気にリードを広げ、80対61のスコアで2017年以来となるB1制覇に王手をかけた。ジャック・クーリーにオフェンシブ・リバウンドから何度も得点を奪われるなど、4Q序盤まで拮抗した試合展開に直面しながらも、フィーラーのパフォーマンスはチームの苦境を救ったと言ってもいい。

 プロキャリアで初めてのアジア、日本でプレーすることになったフィーラーは、今季中盤まで新天地でのアジャストに苦労していた。オフコートでも異国の地で家族と離れ離れの生活することの大変さに直面していたが、11月になってから妻と息子2人が来日して一緒に暮らせるようになってからは、活躍の機会が少しずつ増えていく。

「いろいろな国でプレーしてきましたが、今季もこれまでと変わりなくアジャストしなければなりませんでした。(宇都宮は)昨季からチャンピオンシップレベルのチームであり、自分がいろいろと変えようというのではなく、いかにフィットして貢献できるかにフォーカスしながらシーズンを過ごしていました。自分が望んでいたよりもアジャストに時間はかかりましたけど、ここに来ていいパフォーマンスができているのは、このチームが素晴らしいから。一人の選手を止めるのは簡単であっても、いろいろなところから攻められる能力の高いチームを止めるのは難しいのです。元々いる選手たちのパフォーマンスが素晴らしいので、自分はその中で活躍する道を見つけることができたのです。今の自分があるのは本当にチームのおかげですし、コーチ陣はそれぞれの選手が活躍できる状況やポジション、役割を与えてくれているからだと思います」

 こう語ったフィーラーはチーム最高となる19点、11リバウンドをマークし、宇都宮の勝利に大きく貢献した。レギュラーシーズンで1回しかなかったダブルダブルをファイナルのゲーム1で達成するあたりは、正にビッグゲームで力を発揮できることの証。筆者がそう感じた理由は、2013年のマーチマッドネスも3試合で10.7点、5.3リバウンド、FG成功数13本中5本がダンクだったという事実から来ている。

「明日は琉球もよりハードにプレーしてくるはずなので、難しい試合になると思いますが、しっかり準備して臨みたいです」

 チャンピオンシップになってから確実に存在感を増しているフィーラーは、ゲーム2でも宇都宮のカギを握る存在になりそうだ。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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